リーシュマニア症

執筆者:Chelsea Marie, PhD, University of Virginia;
William A. Petri, Jr, MD, PhD, University of Virginia School of Medicine
レビュー/改訂 2022年 12月
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リーシュマニア症は,各種のリーシュマニア(Leishmania)により引き起こされる。症候は皮膚,粘膜,および内臓の症候群である。皮膚リーシュマニア症は,無痛性の慢性皮膚病変を生じ,病変は結節から大きな潰瘍まで幅があり,数カ月から数年間持続するが最終的には治癒する。粘膜リーシュマニア症は上咽頭組織を侵し,鼻と口蓋の肉眼的崩壊を引き起こす。内臓リーシュマニア症は,不規則な発熱,肝脾腫,汎血球減少,および多クローン性高ガンマグロブリン血症を引き起こし,未治療患者での死亡率は高い。診断は塗抹または培養での原虫の証明によるほか,基準となる検査施設でのPCR検査による診断も増えてきている。血清学的検査は,内臓リーシュマニア症の診断には役立つ場合があるが,皮膚リーシュマニア症の診断には役立たない。内臓リーシュマニア症の治療は,感染しているLeishmania属原虫の種類と感染した地域に依存して,リポソーム化アムホテリシンBまたはミルテホシン(miltefosine)による。代替薬としては,アムホテリシンBデオキシコール酸製剤のほか,Leishmania属原虫が感受性をもつ可能性が高い地域で感染した場合の五価アンチモン化合物(スチボグルコン酸ナトリウム[sodium stibogluconate]またはアンチモン酸メグルミン[meglumine antimoniate])などがある。皮膚リーシュマニア症には,原因種および臨床像に応じて,様々な局所および全身治療を選択することができる。

リーシュマニア症は全世界の地域に散在する。ヒトの感染症は,20種のLeishmania属原虫により引き起こされ,それぞれ形態学的には鑑別できないが,臨床検査により鑑別可能である。

リーシュマニア症の病因

Leishmania属原虫のプロマスティゴートは,サシチョウバエ(PhlebotomusLutzomyia)から脊椎動物宿主に伝播される。媒介生物であるサシチョウバエは,感染したヒトまたは動物を刺咬することによって感染する。病原体保有生物はLeishmania属原虫および地理的分布により異なるが,イヌ,イヌ科の他の動物,齧歯類,および他の動物などである。インド亜大陸では,ヒトがL. donovaniの病原体保有生物となっている。

まれに,輸血,注射針の共用,先天性感染,または性行為によって感染が伝播することもある。

リーシュマニア症の病態生理

サシチョウバエにより接種された後,細胞外プロマスティゴートは宿主のマクロファージに貪食される;この細胞の内部で,プロマスティゴートはアマスティゴートに変態する。

寄生虫は皮膚に限局してとどまるか,上咽頭粘膜に広がるか,骨髄,脾臓,肝臓のほか,ときにその他の臓器に播種され,その結果として,リーシュマニア症では以下に示す3つの主な臨床像を呈する:

  • 皮膚リーシュマニア症

  • 粘膜リーシュマニア症

  • 内臓リーシュマニア症

皮膚リーシュマニア症は,東洋瘤腫(oriental sore),熱帯潰瘍(tropical sore),Delhi boil,Aleppo boil,uta ulcer,チクレロ潰瘍(chiclero ulcer),forest yawsなどの名称でも知られている。原因となる主な種を以下に示す:

  • L. majorおよびL. tropica(南欧,アジア,およびアフリカ)

  • L. mexicanaおよびその近縁種(メキシコおよび中南米)

  • L. braziliensisおよびその近縁種(中南米)

イラクおよびアフガニスタンに従軍した米国軍人と中南米,イスラエル,その他の流行地域への渡航者で症例が発生している。まれに,L. braziliensisは皮膚に広範に広がり,播種性皮膚リーシュマニア症を引き起こす。

粘膜リーシュマニア症(エスプンディア[espundia])は,L. braziliensisが主な原因であるが,ときに他のLeishmania属原虫により引き起こされることもある。原虫はリンパ管および血液を介して最初の皮膚病変から上咽頭に広がると考えられる。粘膜リーシュマニア症の症状および徴候は,典型的には皮膚病変の出現後,数カ月から数年が経過してから生じる。

内臓リーシュマニア症(カラアザール,ダムダム熱)は,典型的にはL. donovaniまたはL. infantum(ラテンアメリカではかつてL. chagasiと呼ばれていた)によって引き起こされ,インド,アフリカ(特にスーダン),中央アジア,地中海沿岸地方,中南米のほか,まれに中国で発生する。大半の症例はインド北東部でみられる。原虫は皮膚のサシチョウバエの刺咬部位から所属リンパ節,脾臓,肝臓,および骨髄に広がり,全身症状を引き起こす。不顕性感染が一般的である;進行性の内臓疾患が発生するのは感染患者のごく一部のみである。L. infantumによる症候性の感染症は,成人よりも小児に多くみられる。内臓リーシュマニア症は,AIDS患者または他の易感染状態にある患者における日和見感染症である。

リーシュマニア症の症状と徴候

皮膚リーシュマニア症では,サシチョウバエによる刺咬部位に通常数週間から数カ月以内に,境界明瞭な皮膚病変が生じる。感染性のある媒介生物による複数回の刺咬,または転移性の拡散により複数病変を生じることがある。その外観は様々である。初期病変は多くの場合丘疹で,徐々に拡大して中心が潰瘍化し,細胞内原虫が集中する部分に盛り上がった紅斑性の境界を形成する。潰瘍は典型的には疼痛を伴わず,二次感染が生じない限り全身症状を引き起こさない。病変は数カ月後に自然治癒するが,数年持続することもある。陥凹した熱傷様瘢痕が残る。経過は感染したLeishmania属原虫および宿主の免疫状態に左右される。

まれな症候群であるびまん性皮膚リーシュマニア症では,らい腫型ハンセン病のそれに類似した広範囲に及ぶ結節性皮膚病変が生じる。リーシュマニア原虫に対する細胞性のアネルギーに起因する。

L. braziliensisおよびその近縁微生物による粘膜リーシュマニア症は,典型的には1つまたは複数の原発性皮膚潰瘍から始まる。リンパ系および血流を介した粘膜への拡大がおそらく感染の初期に起こる。皮膚病変は自然に治癒するが,進行性の粘膜病変は数カ月から数年経たないと明らかにならないことがある。典型的には,鼻詰まり,鼻漏,および鼻痛がみられる。感染は経時的に進行し,鼻,口蓋,中咽頭,および顔面の肉眼的崩壊を来す。

内臓リーシュマニア症では,通常は原虫接種後に数週間から数カ月をかけて臨床症状が徐々に出現してくるが,急性に経過する場合もある。不規則な発熱,肝脾腫,汎血球減少,およびアルブミン:グロブリン比の逆転を伴う多クローン性高ガンマグロブリン血症が生じる。一部の患者では1日2回のスパイク熱が生じる。皮膚病変がまれに起こる。進行性の感染症を有する患者では,数カ月から数年以内にるいそうを来し死亡する。無症候性で自然治癒する感染症を有する患者および(治療成功後の)生存者は,細胞性免疫が損なわれない限り(例,AIDS),将来の感染に対して抵抗性である。最初の感染から数年後に再発する場合がある。

スーダンおよびインドの患者では,内臓リーシュマニア症の治療後にカラアザール後皮膚リーシュマニア症(post kala-azar dermal leishmaniasis:PKDL)が発生することがある。PKDLは,多数の原虫を含有する扁平または結節性の皮膚病変を特徴とする。スーダンの患者では,こういった病変が治療終了時または治療開始後6カ月以内に生じ,数カ月から1年後に自然に治癒する。インドおよび近隣諸国の患者では,皮膚病変が一般に治療終了から1~2年後に生じ,何年も残ることがある。PKDLの病変は,これらの地域における感染拡大の病原巣になっていると考えられる。

リーシュマニア症の診断

  • ライト-ギムザまたはギムザ染色した組織検体,捺印標本,または吸引物の光学顕微鏡検査

  • 内臓リーシュマニア症には抗体価(皮膚または粘膜リーシュマニア症には利用できない)

  • 培養(特殊な培地が必要)

  • PCR検査

通常,粘膜病変の生検検体を培養して原虫を検出または分離することは困難である。

感染地域,特異的DNAプローブ,または培養した原虫の分析に基づき,単純な皮膚リーシュマニア症を引き起こす原虫と粘膜リーシュマニア症の原因となりうる原虫を鑑別できる。

内臓リーシュマニア症の診断には血清学的検査が役立つ可能性があり,免疫能正常な内臓リーシュマニア症患者の大半では組換えリーシュマニア抗原(rk39)に対する抗体価が高値となる。しかし,AIDSなどの易感染状態にある患者では,抗体がみられない場合がある。抗リーシュマニア抗体に対する血清学的検査は皮膚リーシュマニア症の診断に役立たない。

内臓リーシュマニア症患者の骨髄,脾臓,またはリンパ節から採取した吸引液か,皮膚病変から採取した生検検体,吸引物,または捺印標本のPCR法による分析は,リーシュマニア症の診断に有用である。

リーシュマニア抗原に対する遅延型過敏反応を検出するリーシュマニア皮膚テストは,米国では利用できない。この検査は,皮膚および粘膜のリーシュマニア症患者では典型的には陽性となるが,活動期の内臓リーシュマニア症患者では陰性となる。

リーシュマニア症の治療

  • 薬物療法は臨床症状やその他の因子に依存する。

  • 皮膚感染症には,局所療法としてスチボグルコン酸ナトリウム(sodium stibogluconate)の注射もしくはパロモマイシンの外用(米国外)または温熱療法もしくは凍結療法

  • 皮膚,粘膜,または内臓リーシュマニア症に対する全身療法としては,リポソーム化アムホテリシンの静注またはミルテホシン(miltefosine)の経口投与

  • あるいは,アムホテリシンBデオキシコール酸製剤の静注,またはLeishmania属原虫が感受性を示す可能性が高い場合には五価アンチモン化合物(スチボグルコン酸ナトリウム[sodium stibogluconate]またはアンチモン酸メグルミン[meglumine antimoniate])の静注もしくは筋注

リーシュマニア症の治療は複雑である。治療アプローチは以下によって異なる:

  • 臨床症状

  • 感染しているLeishmania属原虫の種

  • 感染した地域

  • 原虫が抗リーシュマニア薬に反応する可能性

  • 宿主の免疫状態

治療に関する詳細な推奨が参照可能になっている(1, 2)。

スチボグルコン酸ナトリウム(sodium stibogluconate)は,現在では米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)から入手できなくなっている(Centers for Disease Control and Prevention: Infectious Diseases Laboratoriesを参照)。

皮膚リーシュマニア症

皮膚リーシュマニア症の治療は,病変および病原体に応じて局所的または全身的に行う。

病変が小さく,自然に治癒に向かい,かつ粘膜リーシュマニア症と関連のあるLeishmania属原虫が原因でない場合は,治療ではなく,綿密なフォローアップを行う。

局所治療は,合併症のない小さな病変に対する選択肢である。欧州およびアジアでは,単純皮膚リーシュマニア症にはスチボグルコン酸ナトリウム(sodium stibogluconate)の病変内注射が長年使用されているが,米国では現在,病変内投与での本剤の使用はできなくなっている。その他の局所治療の選択肢としては,温熱療法(特殊なシステムを必要とする)や凍結療法などがあるが,どちらの治療法も痛みを伴うことがあり,小さな病変の治療に使用する場合に限り有用である。また,米国外ではパロモマイシンの外用薬が使用されており,これは白色軟パラフィン中に15%パロモマイシンと12%塩化メチルベンゼトニウムを含有する軟膏である。

以下を有する患者では全身療法を用いる:

  • L. braziliensisまたは粘膜リーシュマニア症と関連のある近縁種による感染症

  • 複数の病変,大きな病変,広範囲に及ぶ病変,または外観を損なう病変がみられる複合型皮膚リーシュマニア症(complex cutaneous leishmaniasis)

  • 細胞性免疫不全

米国では,全身治療の選択肢としてリポソーム化アムホテリシンB,ミルテホシン(miltefosine),アムホテリシンBデオキシコール酸製剤などがある。スチボグルコン酸ナトリウム(sodium stibogluconate)またはアンチモン酸メグルミン(meglumine antimoniate)は,アンチモン耐性が蔓延していない地域での感染に使用される。リポソーム化アムホテリシンBアムホテリシンBデオキシコール酸製剤は,一般的に内臓リーシュマニア症のレジメンで使用される。

ミルテホシン(miltefosine)は,経口投与という長所があり,皮膚リーシュマニア症,特にLeishmania braziliensisLeishmania guyanensis,またはLeishmania panamensisが原因の場合に効果的となりうる。ミルテホシン(miltefosine)の用量は体重に依存する:30~44kgの患者には50mg,経口,1日2回,28日間;45kg以上の患者には50mg,経口,1日3回,28日間。有害作用としては,悪心,嘔吐,一過性のアミノトランスフェラーゼ値上昇,めまいなどがある。ミルテホシン(miltefosine)は妊娠中は禁忌であり,この薬剤を使用している妊娠可能年齢の女性は,有効な避妊法を用いなければならない。

五価アンチモン化合物(スチボグルコン酸ナトリウム[sodium stibogluconate]またはアンチモン酸メグルミン[meglumine antimoniate])は,感染しているLeishmania属原虫が感受性を示す可能性が高い場合にのみ使用すべきである。ラテンアメリカではアンチモン酸メグルミン(meglumine antimoniate)(五価アンチモン化合物)が使用されている。どちらも用量は五価アンチモン化合物の含量に基づいて20mg/kg,静注(緩徐な点滴が必要)または筋注,1日1回,20日間である。有害作用としては,悪心,嘔吐,倦怠感,アミラーゼ値および/または肝酵素値の上昇,心毒性(不整脈,心筋抑制,心不全,心電図変化,心停止)などがある。有害作用の発生率は年齢とともに上昇する。患者に心毒性が生じた場合には薬剤を中止する。

代替薬として,アゾール系薬剤(例,フルコナゾール)などがある。フルコナゾール200mg,経口,1日1回,6週間の投与は一般的に無効であるが,一部の地域ではより高い1日用量での成功例が報告されている。

びまん性皮膚リーシュマニア症は,相対的に治療抵抗性である。

粘膜リーシュマニア症

至適な治療法は不明である。

最近の研究では,リポソーム化アムホテリシンB(累積投与量20~60mg/kg)または体重に応じた用量のミルテホシン(miltefosine)(30~44kgの患者には50mg,経口,1日2回,28日間;45kg以上の患者には50mg,経口,1日3回,28日間)が効果的であることが示唆されているが,データは限られている。ミルテホシン(miltefosine)の有害作用としては悪心,嘔吐,一時的なアミノトランスフェラーゼ値上昇,めまいなどがあり,妊娠中は禁忌であり,この薬剤を使用している妊娠可能年齢の女性は,有効な避妊法を用いなければならない。ラテンアメリカでは歴史的に五価アンチモン化合物が使用されてきた。代替薬は,アムホテリシンBデオキシコール酸製剤0.5~1.0mg/kg,静注,1日1回または隔日,総用量20~45mg/kgである。

粘膜リーシュマニア症により鼻または口蓋が肉眼的に歪曲した場合には再建手術を要することがあるが,再発による移植片の喪失を避けるために手術は化学療法の成功後12カ月間に延期すべきである。

内臓リーシュマニア症

内臓リーシュマニア症の治療法としては,リポソーム化アムホテリシンBとミルテホシン(miltefosine)が米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)の承認を受けているほか,その他のアムホテリシン脂質製剤も効果的である可能性があるが,まだ十分に研究されていない。

リポソーム化アムホテリシンBの用法・用量は以下の通りである:

  • 免疫能正常の患者:3mg/kgを静注で1日1回,5日間に続いて,14日目および21日目に1日1回(総用量21mg/kg)

  • AIDSなどの易感染状態にある患者:1~5,10,17,24,31,38日目に4mg/kgを静注で1日1回(総用量40mg/kg)

インドまたは南アジアの近隣諸国でL. donovaniに感染した12歳以上かつ体重30kg以上で妊娠中でも授乳中でもない免疫能正常な患者の治療には,ミルテホシン(miltefosine)の経口剤を体重に応じた用量(30~44kgの患者には50mg,1日2回,28日間,45kg以上の患者には50mg,1日3回,28日間)で使用することができる。

ラテンアメリカのほか,この種の薬剤に対する耐性がみられないその他の地域では,五価アンチモン化合物を内臓リーシュマニア症の治療に使用することができる。用法・用量は20mg/kg(アンチモン化合物の含量に基づく),1日1回,静注または筋注,28日間である。

代替薬として,アムホテリシンBデオキシコール酸製剤1mg/kgの静注があり,1日1回で15~20日間または隔日で最長8週間にわたり投与する。

AIDSなどの易感染状態にある患者では,再発がよくみられる。AIDS患者では抗レトロウイルス薬が免疫機能の回復に役立ち,再発リスクの低下をもたらす可能性がある。抗リーシュマニア薬による二次予防は,CD4陽性細胞数が200/μL未満のAIDS患者の再発予防に役立つ可能性がある。

内臓リーシュマニア症患者では,支持的な処置(例,十分な栄養補給,輸血,細菌の二次感染に対する抗菌薬投与)が必要になることが多い。

治療に関する参考文献

  1. 1.Aronson N, Herwaldt BL, Libman M, et al: Diagnosis and treatment of leishmaniasis: Clinical Practice Guidelines by the Infectious Diseases Society of America (IDSA) and the American Society of Tropical Medicine and Hygiene (ASTMH).Clin Infect Dis 63 (12):e202-e264, 2016.doi: 10.1093/cid/ciw670

  2. 2.Centers for Disease Control and Prevention (CDC): Resources for Health Professionals: Treatment.

リーシュマニア症の予防

リーシュマニア症の予防には,以下の対策が役立つ可能性がある:

  • ヒトが病原体保有生物となっている地域でのリーシュマニア症患者の治療

  • 家庭内伝播の発生場所での残留性殺虫剤(効果の持続時間が長い殺虫剤)の散布による媒介生物数の低減

  • 露出部の皮膚への防虫剤の適用や防護用の衣服の着用などの個人的な防御対策

  • ヒト以外の病原体保有生物の制御

流行地域への旅行者は,DEET(ジエチルトルアミド)を含有する防虫剤を皮膚の露出部に使用すべきである。小さなサシチョウバエは機械的障壁を通過できるため,網戸,蚊帳,および衣類をペルメトリンで処理すればより効果的である。

現時点で使用可能なワクチンはない。

要点

  • リーシュマニア症は世界中の広範囲に散在し,サシチョウバエの刺咬により伝播する。

  • 原虫は皮膚に限局してとどまるか(皮膚リーシュマニア症),粘膜に広がるか(粘膜リーシュマニア症),肝臓,脾臓,および骨髄に播種する(内臓リーシュマニア症)。

  • 塗抹標本のライト-ギムザもしくはギムザ染色,培養,またはPCR法により診断する;内臓リーシュマニア症の診断には,免疫能正常の患者では血清学的検査が役立つ可能性があるが,AIDS患者や皮膚または粘膜リーシュマニア症の患者では血清学的検査はあまり役立たない。

  • 合併症のない小さな皮膚病変の治療は,局所に対する温熱療法もしくは凍結療法,または米国外ではパロモマイシンの外用もしくはスチボグルコン酸ナトリウム(sodium stibogluconate)の病変内投与により行う。

  • 複合型皮膚リーシュマニア症(complex cutaneous leishmaniasis),粘膜リーシュマニア症,および内臓リーシュマニア症に対する全身療法の選択肢としては,リポソーム化アムホテリシンB,ミルテホシン(miltefosine),アムホテリシンBデオキシコール酸製剤などがあるほか,感染しているLeishmania属原虫が感受性を示す可能性が高い地域で感染した患者には,スチボグルコン酸ナトリウム(sodium stibogluconate)またはアンチモン酸メグルミン(meglumine antimoniate)が使用されることもある。

  • アンチモン化合物に対する薬剤耐性がインドとその近隣諸国でよくみられ,その他の地域でも問題になっている。

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Centers for Disease Control and Prevention (CDC): Resources for health professionals: Leishmaniasis

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