レンサ球菌感染症

執筆者:Larry M. Bush, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University;
Maria T. Vazquez-Pertejo, MD, FACP, Wellington Regional Medical Center
レビュー/改訂 2023年 5月
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レンサ球菌(streptococcus)は,咽頭炎,肺炎,創傷および皮膚感染症,敗血症,心内膜炎など,多くの疾患を引き起こすグラム陽性好気性細菌である。症状は感染臓器により異なる。A群β溶血性レンサ球菌による感染症の続発症としてリウマチ熱と糸球体腎炎がある。大半の菌株はペニシリンに感受性を示すが,最近になってマクロライド耐性株が出現している。

肺炎球菌感染症リウマチ熱,および扁桃咽頭炎も参照のこと。)

レンサ球菌の分類

まず,ヒツジ血液寒天培地で培養したときの外観から,以下の3種類のレンサ球菌を鑑別する:

  • β溶血性レンサ球菌は各コロニーの周囲に透明な溶血帯を生じる。

  • α溶血性レンサ球菌(一般に緑色レンサ球菌[viridans streptococci]と呼ばれる)は不完全な溶血により生じる緑色の変色帯に囲まれる。

  • γ溶血性レンサ球菌は溶血性を示さない。

次に細胞壁内の糖に基づく分類法により,レンサ球菌をLancefieldによる20の分類(A群~H群およびK群~V群)に分ける(Lancefield分類*の表を参照)。Lancefield分類では当初,腸球菌はD群レンサ球菌と分類されていたが,現在,腸球菌はランスフィールド分類のD群抗原を発現するものの,別個の属に分類されている。Lancefield分類のK~V群は,病原性の低いレンサ球菌属であり,易感染状態の人に感染症を引き起こすことがある。

緑色レンサ球菌は分類困難な独立したグループを構成する。肺炎球菌などのレンサ球菌はα溶血性,すなわち緑色レンサ球菌の一種であり,Lancefield抗原を発現しない。

表&コラム
表&コラム

病原因子

多くのレンサ球菌は,ストレプトリジン,デオキシリボヌクレアーゼ,ヒアルロニダーゼなど,組織破壊や感染拡大に寄与する病原因子を産生する。いくつかの菌株は,特定のT細胞を活性化する外毒素を放出し,それにより腫瘍壊死因子α(TNF-α),インターロイキン,その他の免疫調節物質などのサイトカインの放出を誘発する。これらのサイトカインは,補体系,凝固系,および線溶系を活性化することで,ショックや臓器不全を引き起こし,死に至ることもある。

レンサ球菌による疾患

レンサ球菌のうち最も重要な病原体は化膿レンサ球菌(S. pyogenes)で,これはβ溶血性でLancefield分類A群に属することから,A群β溶血性レンサ球菌(GABHS)と呼ばれる。

GABHSに起因する急性疾患で最も頻度が高いのは,以下のものである:

さらに,遅発性の非化膿性合併症(リウマチ熱急性糸球体腎炎)が,ときに感染後2週間以上経過してから発生する。

GABHSは侵された組織を通じて,あるいはリンパ管に沿って(リンパ管炎を引き起こす)所属リンパ節へ波及する(リンパ節炎を引き起こす)。GABHSはさらに,扁桃周囲膿瘍中耳炎副鼻腔炎菌血症などの限局性化膿性合併症を引き起こすこともある。化膿の程度は感染の重症度および組織の感受性に依存する。

その他の重篤なGABHS感染症としては,敗血症,産褥敗血症,心内膜炎肺炎,膿胸などがある。

他の菌種のレンサ球菌による疾患は頻度が低く,通常は軟部組織感染症か心内膜炎である(Lancefield分類*の表を参照)。GABHS以外による感染症の中には,専ら特定の集団でみられものがある(例,新生児および分娩後の女性におけるB群レンサ球菌)。

レンサ球菌咽頭炎

GABHSは急性発症の細菌性咽頭炎の最も一般的な原因である。その他の起因菌としては,C群およびG群レンサ球菌やFusobacterium necrophorumなどがある。GABHS咽頭炎患者の大半は,急性発症の咽頭痛,発熱,咽頭の強い発赤(beefy-red pharynx),および膿性の扁桃滲出物で受診する3~14歳の小児である。GABHS咽頭炎は3歳未満の小児ではまれである。

頸部および下顎リンパ節が腫大し,圧痛を呈することがある。レンサ球菌咽頭炎は扁桃周囲膿瘍を引き起こすことがある。咳嗽,喉頭炎,鼻づまりなどの症状は,レンサ球菌による咽頭感染症の特徴ではなく,別の原因(通常はウイルス性またはアレルギー性)を示唆する。

ヒトはA群レンサ球菌の第一の病原体保有生物であり,感染者の唾液または鼻分泌物を介してヒトからヒトに伝播する。無症候性保菌の状態が20%もの人々でみられることがある。

レンサ球菌咽頭炎
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この画像では,咽頭が発赤しており,扁桃に膿性滲出液がみられる。
DR P. MARAZZI/SCIENCE PHOTO LIBRARY

猩紅熱

猩紅熱は主に小児期の疾患であり,通常はレンサ球菌咽頭感染症に続発するが,まれに他の部位(例,皮膚)のレンサ球菌感染症に続発することもある。猩紅熱は発赤毒素を産生するA群レンサ球菌株によって引き起こされ,圧迫により退色するびまん性で淡紅色の皮膚紅潮が生じる。

この発疹は腹部または側胸部に皮膚のひだにおける暗赤色の線として(Pastia線),あるいは口囲蒼白として最もよくみられる。発疹は特徴的な多数の小さな(1~2mm)丘疹状の隆起で構成され,皮膚が紙やすりのような質感になる。解熱後には,発赤があった皮膚の上層がしばしば落屑する。発疹は通常2~5日間持続する。

個人間で濃厚な接触のある環境下(例,学校,託児所)では,猩紅熱の伝染性が高まる。

猩紅熱は以前ほど一般的ではなくなっているが,近年になって米国,欧州,および中国で重大なアウトブレイクが何件か発生している。例えば,英国では2014年以来,前例のない持続的な猩紅熱の増加がみられており,ほぼ50年ぶりの高い発生率を記録している。1世紀以上前には,猩紅熱は死に至る可能性がある疾患として恐れられていた。しかしながら,抗菌薬が利用可能になるかなり前から,死亡率と罹患率が低下していた。抗菌薬療法の登場以来,治療された猩紅熱の死亡率は1%未満となっている(1)。

猩紅熱
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古典的な猩紅熱の発疹は,まず胸部および腹部にごく小さな赤い丘疹として出現する。その後,丘疹が全身に広がることがある。発疹は日焼け(サンバーン)に類似し,粗い紙やすりのような質感を呈し,2~5日程度持続する。
SCIENCE PHOTO LIBRARY

また,苺舌(炎症を起こした舌乳頭が明赤色の被膜から突出した状態)もみられるため,毒素性ショック症候群および川崎病で認められるものとの鑑別が必要になる。

苺舌(小児)
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舌が発赤し,舌乳頭が目立つようになる。
SCIENCE PHOTO LIBRARY

その他の症状はレンサ球菌咽頭炎の症状と類似し,猩紅熱の経過および管理は他のA群感染症と同じである。

猩紅熱に関する参考文献

  1. 1.Lamagni T, Guy R, Chand M, et al: Resurgence of scarlet fever in England, 2014-16: A population-based surveillance study. Lancet Infect Dis 18(2):180–187, 2018.doi: 10.1016/S1473-3099(17)30693-X

レンサ球菌による皮膚感染症

皮膚感染症としては以下のものがある:

膿痂疹は,痂皮または水疱が生じる表在性の皮膚感染症である。

膿痂疹
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膿痂疹では,集簇して形成された水疱膿疱性または水疱性病変が破裂し,蜂蜜色のかさぶたを形成する。
Image courtesy of Thomas Habif, MD.

丹毒は,真皮のリンパ系も侵す表在性の蜂窩織炎である。光沢を伴って赤く隆起した境界明瞭な硬結病変がみられる。GABHSが原因であることが最も多いが,ときに他のレンサ球菌やレンサ球菌以外の微生物が関与することもある。

丹毒(顔面)
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丹毒は,光沢を伴って隆起・硬結した圧痛を伴う境界明瞭な局面状病変を特徴とする。
Image provided by Thomas Habif, MD.

蜂窩織炎は皮膚のより深い層に及び,急速に拡大することがあるが,これは主としてA群レンサ球菌が産生する多くの溶解酵素や毒素のためである。

レンサ球菌による蜂窩織炎の臨床像
レンサ球菌による蜂窩織炎
レンサ球菌による蜂窩織炎

この写真には,蜂窩織炎病巣に特徴的な局所の紅斑および腫脹が写っており,通常は熱感と圧痛を伴う。蜂窩織炎の拡大や消退を容易に確認できるようにするため,医師が病変の境界をペンでマーキングしているのに注目すること。

© Springer Science+Business Media

リンパ管炎を合併したレンサ球菌による蜂窩織炎
リンパ管炎を合併したレンサ球菌による蜂窩織炎

この写真には,下腿に生じた局所の発赤および腫脹が写っており,これは蜂窩織炎病巣に特徴的な変化で,通常は熱感と圧痛を伴う。蜂窩織炎の拡大や消退を容易に確認できるようにするため,医師が病変の境界をペンでマーキングしている。リンパ管炎により生じた大腿部まで伸びる線状の発赤に注目すること。

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組織壊死を伴ったレンサ球菌による蜂窩織炎
組織壊死を伴ったレンサ球菌による蜂窩織炎

© Springer Science+Business Media

壊死性筋膜炎

化膿レンサ球菌(S. pyogenes)による壊死性筋膜炎は,重度の皮膚(およびときに筋肉)の感染症であり,筋膜面に沿って拡大する。起因菌の侵入は皮膚または腸管を介して起こる。

壊死性筋膜炎は注射薬物の使用者で有病率が高い。

かつてのレンサ球菌性壊疽として知られ,現在では俗に「人喰いバクテリア」と呼ばれている同じ症候群は,複数菌の感染症でもあり,好気性および嫌気性(ウェルシュ菌[Clostridium perfringens]を含む)の菌叢が関与する。発生源が腸管の場合は複数菌感染の可能性が高い(例,腸管手術,腸穿孔,憩室炎,または虫垂炎の後)。

壊死性筋膜炎の症状は発熱および身体所見と不釣り合いな激しい限局性疼痛で始まり,疼痛は時間とともに強くなり,しばしば最初の(ときに唯一の)症状となる。びまん性または局所性に紅斑が生じることがある。微小血管の血栓症により虚血性壊死が生じ,病変の急速な拡大につながり,極めて強い重篤感を呈する。約20~40%の患者で近接する筋への浸潤がみられる。ショックおよび腎機能障害がよくみられる。死亡率が高く,治療を行った場合も同様である。

A群レンサ球菌(壊死性軟部組織感染症)
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レンサ球菌(A群)による皮下脂肪および筋肉の生命を脅かす感染症のため,腰部の広範な壊死が生じている。
© Springer Science+Business Media

レンサ球菌による毒素性ショック症候群

レンサ球菌による毒素性ショック症候群(TSS)は,黄色ブドウ球菌(S. aureus)によるものと類似するが,GABHSの毒素産生株や,ときに他のレンサ球菌により生じる。

通常は,基礎疾患がなく健康状態の良好な皮膚・軟部組織感染症の小児または成人患者に発生する。これらの毒素産生株に感染した患者でTSSの素因となる危険因子として,糖尿病,アルコール使用症,穿通性および非穿通性外傷,外科的手技,水痘の感染などがある。

インフルエンザ様の前駆症状に続いて,高熱,頻脈,頻呼吸,および重度の疼痛が生じる。続いて組織壊死,ショック,播種性凝固,および多臓器不全が起こる。

レンサ球菌感染症の遅発性合併症

特定のGABHS株が遅発性合併症を引き起こす機序は不明であるが,宿主組織に対する抗レンサ球菌抗体の交差反応が関与する可能性がある。

炎症性疾患であるリウマチ熱は,GABHSによる咽頭炎を無治療で放置した場合,3%未満の患者で数週間後に発生する。先進国ではかなり少なくなったが,医療などの資源が限られている国々では依然として発生率が高い。

最初のエピソードの診断は,関節炎,心炎,舞踏運動,特異的な皮膚症状,および臨床検査結果を総合して判断する(Jones診断基準―性リウマチ熱(ARF)初発時の改変Jones診断基準の表を参照)。

GABHSによる咽頭炎(レンサ球菌咽頭炎)を治療する最も重要な理由の1つはリウマチ熱の予防である。

溶連菌感染後急性糸球体腎炎は,腎炎を惹起するGABHSの限られた菌株(例,Mタンパク質の血清型が12型および49型のもの)による咽頭炎または皮膚感染症に続発する急性腎炎症候群である。これらの菌株のいずれかが咽喉または皮膚に感染すると,約10~15%の患者が急性糸球体腎炎を発症する。小児で最も多くみられ,感染から1~3週間後に発生する。小児ではほぼ全ての患者が,また成人でも大半の患者が,永続的な腎障害を残すことなく回復する。GABHS感染症に対する抗菌薬治療は,糸球体腎炎の発生に対する有効性は低い。

PANDAS症候群(pediatric autoimmune neuropsychiatric disorder associated with streptococcal infections)は,GABHSの感染によって悪化すると考えられている,小児の強迫症ないし小児のチック症の一種である。

特定の形態の乾癬(例,滴状乾癬)もβ溶血性レンサ球菌感染症と関係している可能性がある。

レンサ球菌感染症の診断

  • 培養

  • ときに迅速抗原検査または抗体価測定

レンサ球菌は羊血液寒天平板を用いた培養で迅速に同定できる。

咽頭拭い液から直接GABHSを検出できる迅速抗原検出検査(すなわち,ポイントオブケア検査)が利用可能である。多くの検査では酵素免疫測定法が用いられるが,より最近になり,光学的免疫測定法を用いる検査が利用可能となった。これらの迅速検査法は特異度が高いが(> 95%),感度にはかなりの幅がある(55%から新しい光学的免疫測定法の80~90%まで)(1)。このため,結果が陽性であれば診断が確定するが,結果が陰性であれば,少なくとも小児では,培養にて確定する必要がある。成人ではレンサ球菌咽頭炎の頻度が低く,成人はレンサ球菌後合併症を発症する可能性が低いので,迅速検査によるスクリーニングで陰性であれば,大抵の医師はマクロライド系薬剤の使用を検討しているのでない限り,培養によって診断を確定することはない;マクロライド系薬剤を使用する場合は,薬剤への耐性を同定するため培養と感受性試験が必要になる。

Centor基準は,GABHSの検査または咽頭炎患者に対する経験的抗菌薬治療の選択に関する意思決定の指針として用いることができる。基準は年齢,扁桃滲出物,前頸部リンパ節腫脹,40℃を超える発熱,および咳嗽がないことである。

回復期に血清中の抗レンサ球菌抗体を証明することが,感染症を間接的に示す唯一の方法である。抗体はGABHS感染の開始から数週間後に初めて産生され,高い抗体価が単回示されてもそれに先行する長期間の感染を反映している可能性がより高いため,抗レンサ球菌抗体検査は急性GABHS感染症の診断に有用ではない。溶連菌感染症後の続発症(リウマチ熱や糸球体腎炎など)の診断には抗体が最も有用である。

抗ストレプトリジンO(ASO)抗体および抗デオキシリボヌクレアーゼB(抗DNase B)抗体の抗体価は,GABHSの感染から約1週間後に上昇し始め,感染から約1~2カ月後にピークに達する。どちらの抗体価も,合併症のない感染の後でさえ,数カ月間は高いままである。ASO抗体価は感染例の75~80%でしか上昇しない。診断困難な症例では,正確を期するため,他の検査(抗ヒアルロニダーゼ,抗ニコチンアミドアデニンジヌクレオチダーゼ,抗ストレプトキナーゼ抗体)のうちいずれか1つも施行してよい。

急性期とその2~4週間後の回復期に抗体価を測定する;陽性結果は抗体価が2倍以上上昇した場合と定義される。正常上限を超える抗体価が単回示された場合は,先行するレンサ球菌感染症または地域におけるレンサ球菌の高い流行性が示唆される。

症候性のレンサ球菌咽頭炎に対して最初の5日以内に投与されたペニシリンは,ASO反応の出現を遅延させたり,程度を低下させたりすることがある。

通常,レンサ球菌による膿皮症の患者では有意なASO反応はみられないが,他の抗原には反応することがある(すなわち,抗デオキシリボヌクレアーゼ,抗ヒアルロニダーゼ)。

診断に関する参考文献

  1. 1.Plainvert C, Duquesne I, Touak G, et al: In vitro evaluation and comparison of 5 rapid antigen detection tests for the diagnosis of beta-hemolytic group A streptococcal pharyngitis. Diagn Microbiol Infect Dis 83(2):105–111, 2015.doi: 10.1016/j.diagmicrobio.2015.06.012

レンサ球菌感染症の治療

  • 通常はペニシリン

咽頭炎

(Infectious Diseases Society of Americaの2012 Practice Guidelines for the Diagnosis and Management of Group A Streptococcal PharyngitisとAmerican Heart Associationの声明2020 Contemporary Diagnosis and Management of Rheumatic Heart Diseaseも参照のこと。)

通常,猩紅熱を含むGABHS咽頭感染症は自然に軽快する。抗菌薬は幼児(特に猩紅熱の場合)における経過を短縮するが,青年や成人の症状に対する効果は中程度に過ぎない。しかしながら,抗菌薬は限局性の化膿性合併症(例,扁桃周囲膿瘍),中耳炎,およびリウマチ熱の予防に役立つ。

ペニシリンがGABHS咽頭感染症に対する第1選択薬である。GABHSの分離株で臨床上ペニシリンに耐性を示したものはない。しかし,一部のレンサ球菌株はin vitroでペニシリンに耐性を示すようである(すなわち,ペニシリンの殺菌作用が有意に低下する)が,そのような菌株の臨床的な意義は不明である。

ベンジルペニシリンベンザチンの単回筋肉内注射(体重27kg未満の小柄な小児には60万単位,27kg以上の小児,青年,および成人には120万単位)で通常は十分である。

必須である10日間のレジメンを遵守するという点で患者を信頼できる場合は,経口薬を使用してもよい。選択肢としては以下のものがある:

  • ペニシリンV 500mg(27kg未満の小児では250mg),経口,12時間毎

  • アモキシシリン50mg/kg(最大1g),1日1回,10日間(ペニシリンVに代わる効果的な薬剤)

狭域スペクトルの経口セファロスポリン系薬剤(例,セファレキシンセファドロキシル)も効果的であり,ペニシリンに対するアナフィラキシー反応がなければ使用できる。マクロライド系薬剤は青年および成人における咽頭炎の一般的な原因である壊死桿菌(Fusobacterium necrophorum)に対して無効であるが,アジスロマイシンを5日間の治療コースで使用できる。臨床検査による確定まで治療が1~2日間遅延しても,罹病期間の延長や合併症発生率の上昇につながることはない。

ペニシリンおよびβ-ラクタム系の禁忌がある場合は以下の選択肢がある:

  • クリンダマイシン600mg(小児には7mg/kg),経口,8時間毎,10日間

  • クラリスロマイシン250mg(小児には7.5mg/kg),経口,12時間毎,10日間

  • アジスロマイシン500mg(小児には15mg/kg),経口,1日1回,5日間

  • セファレキシン500mg(小児には20mg/kg;最高用量は1回500mg),経口,12時間毎,10日間

  • セファドロキシル1000mg(小児には30mg/kg;最高用量は1回1000mg),経口,1日1回または500mg(小児には15mg/kg;最高用量は1回500mg),12時間毎,10日間

マクロライド系薬剤に対するGABHSの耐性が検出されたため,一部の専門家は,マクロライドを使用する予定で地域にマクロライド耐性菌が認められる場合にはin vitroで感受性を確認するよう推奨している。慢性扁桃炎が再発した小児患者にはクリンダマイシン7mg/kg,経口,8時間毎が望ましく,その理由として以下が考えられる:

  • クリンダマイシンは,扁桃陰窩に同時感染してベンジルペニシリンを不活化するペニシリナーゼ産生ブドウ球菌や嫌気性菌に対して高い活性を示す。

  • 他の薬剤よりも迅速に外毒素の産生を止められると考えられる。

アモキシシリン/クラブラン酸も効果的である。

トリメトプリム/スルファメトキサゾール(TMP/SMX),一部のフルオロキノロン系薬剤,およびテトラサイクリン系薬剤は,GABHS感染症の治療では信頼できない。

咽頭痛,頭痛,および発熱は,鎮痛薬または解熱薬で治療できる。小児へのアスピリンの使用は避けるべきである。床上安静や隔離は必要である。症候性のレンサ球菌感染症または溶連菌感染後合併症の既往を有する濃厚接触者は,レンサ球菌検査を受けるべきである。

皮膚感染症

蜂窩織炎は,細菌の分離が困難であることから,しばしば培養なしで治療される。したがって,レンサ球菌とブドウ球菌の両方に効果的なレジメンを使用する;例えば以下のいずれかを用いる:

  • メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)の可能性がほとんどない場合はジクロキサシリンまたはセファレキシン

  • MRSAが疑われる場合はTMP/SMX,リネゾリド,ミノサイクリン,またはクリンダマイシン(蜂窩織炎の治療を参照)

壊死性筋膜炎の患者は集中治療室で治療すべきである。広範な(ときに反復的な)外科的デブリドマンが必要である。推奨される初期の抗菌薬レジメンは,広域スペクトルのβ-ラクタム系薬剤(例,ピペラシリン/タゾバクタム)またはカルバペネム系薬剤(例,メロペネム,イミペネム)(培養で起因菌が確定するまで)にクリンダマイシンを加えたものである。MRSA感染が疑われる場合は,バンコマイシンを追加すべきである。レンサ球菌は依然としてβ-ラクタム系抗菌薬に感性であるが,レンサ球菌の増殖が迅速ではないこと,およびペニシリンの作用標的であるペニシリン結合タンパク質を欠いている場合があることから,感染菌量が多い場合にはペニシリンは必ずしも効果的ではないことが動物試験により示されている。

その他のレンサ球菌感染症

B,C,およびG群による感染症の治療で選択すべき薬剤は以下のものである:

  • ペニシリン

  • アンピシリン

  • バンコマイシン

セファロスポリン系またはマクロライド系薬剤は通常効果的であるが,特に重症例,易感染性患者,または衰弱した患者,および感染部位に異物がある患者においては,感受性試験の結果に基づいて治療すべきである。抗菌薬療法の補助として創傷の外科的ドレナージおよびデブリドマンを行うことが救命につながる場合がある。

S. gallolyticus(かつてのS. bovis)は抗菌薬に比較的感性である。バンコマイシン耐性のS. gallolyticus分離株が報告されているが,ペニシリンおよびアミノグリコシド系薬剤に対する感受性は維持されている。

大半の緑色レンサ球菌は,ベンジルペニシリンとその他のβ-ラクタム系薬剤に感性である。耐性が広がりつつあり,それらの菌株に対する治療はin vitroの感受性試験結果に基づいて決定すべきである。

要点

  • レンサ球菌のうち最も重要な病原体は化膿レンサ球菌(S. pyogenes)であり,A群β溶血性レンサ球菌(GABHS)と呼ばれている。

  • GABHSに起因する急性疾患で最も頻度が高いものは,咽頭炎と皮膚感染症の2つである。

  • リウマチ熱や溶連菌感染後糸球体腎炎など,遅発性の非化膿性合併症が生じることがある。

  • 迅速抗原検査(すなわち,ポイントオブケア検査)は,非常に特異度が高いが,感度はそれほど高くないため,陰性であれば(少なくとも小児では)培養により確認する。

  • 咽頭炎にはペニシリンまたはセファロスポリン系薬剤が望ましく,マクロライド耐性が増加しているため,このクラスの抗菌薬を使用する場合は感受性試験が推奨される。

  • 皮膚感染症に対しては,MRSAの可能性が低ければジクロキサシリンまたはセファレキシンを投与するが,MRSAが疑われる場合はTMP/SMX,リネゾリド,ミノサイクリン,またはクリンダマイシンを投与する。

  • B群,C群,およびG群レンサ球菌感染症は,GABHSの治療に使用されるものと同じ抗菌薬で治療する。

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Infectious Diseases Society of America: Practice Guidelines for the Diagnosis and Management of Group A Streptococcal Pharyngitis (2012)

  2. American Heart Association: Contemporary Diagnosis and Management of Rheumatic Heart Disease: Implications for Closing the Gap: A Scientific Statement From the American Heart Association (2020)

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