後天性赤芽球癆は,孤立性の正球性貧血が生じる赤芽球系前駆細胞の疾患である。白血球と血小板は影響を受けない。貧血に起因する症状としては,疲労,嗜眠,運動耐容能低下,蒼白などがある。診断には,末梢血塗抹での正球性貧血と骨髄生検での正常な骨髄細胞数に加え,赤芽球系前駆細胞の欠如を認める必要がある。治療としては通常,基礎疾患の治療のほか,一部の症例では胸腺摘出術または免疫抑制療法を行う。
(赤血球産生低下の概要も参照のこと。)
先天性赤芽球癆(ダイアモンド-ブラックファン[Diamond-Blackfan]貧血)については,本マニュアルの別の箇所で考察されている。
赤芽球癆の病因
赤芽球癆の最も一般的な原因は,赤血球の産生を抑制する不適切な免疫応答である。よく知られている原因としては以下のものがある:
赤芽球癆の症状
赤芽球癆の症状は一般に軽度で,貧血の程度または基礎疾患によって異なる。赤芽球癆の貧血は通常潜行性に始まり,しばしば数週間または数カ月間かけて発生する。貧血に関連する症状としては,疲労,嗜眠,運動耐容能低下,蒼白などがある。
赤芽球癆の診断
血算,網状赤血球数
骨髄検査
大顆粒リンパ球性白血病に対する血液塗抹検査
ときに末梢血フローサイトメトリーおよびT細胞遺伝子再構成検査
赤芽球癆は正球性貧血を呈するが,白血球数と血小板数は正常である。網状赤血球は減少する(網状赤血球数10,000/μL未満,網状赤血球の割合1%未満)。
骨髄の細胞密度は正常であり,前赤芽球の段階で成熟が停止している。パルボウイルスB19感染の場合は,巨大な前正赤芽球を認めることがある。広く入手可能ではないが,もし可能であれば,赤芽球癆の自己免疫性の原因を骨髄異形成症候群などの原発性骨髄疾患と鑑別するために,骨髄のBFU-E(burst forming units-erythroid)の検査を行うべきである(1)。
ほかに原因が特定されていない胸腺腫の評価には胸部CTが適応となる。
診断に関する参考文献
1.DeZern AE, Pu J, McDevitt MA, et al: Burst-forming unit–erythroid assays to distinguish cellular bone marrow failure disorders.Exp Hematol 41:808–816, 2013.
赤芽球癆の治療
免疫抑制療法
ときに免疫グロブリン静注療法(IVIG)または胸腺摘出術
一部の患者では,ABO不適合幹細胞移植を受けるか,原因薬剤を中止するか,妊娠が原因である場合には出産を終えることで,自然寛解がみられる。
赤芽球癆では,特に自己免疫機序が疑われる場合に,免疫抑制薬(例,プレドニゾン,シクロスポリン,シクロホスファミド)による治療が奏効している。
パルボウイルス感染に続発する赤芽球癆は,免疫グロブリンの静注により治療する。
胸腺腫関連の赤芽球癆の患者では胸腺摘出術を行う;大半の患者は改善するが,必ずしも治癒するわけではなく,免疫抑制薬が必要になる。
要点
赤芽球癆では,赤芽球系のみの低形成が生じる。
免疫を介した赤芽球系の抑制が最も可能性の高い原因である。
骨髄の細胞密度は正常であり,赤芽球系の成熟停止により正球性貧血が生じる。
胸腺摘出術,免疫グロブリン静注療法(IVIG),または免疫抑制療法によって基礎疾患を直接的に治療する。