急性骨髄性白血病(AML)

(急性骨髄球性白血病;Acute Myelogenous Leukemia)

執筆者:Ashkan Emadi, MD, PhD, West Virginia University School of Medicine, Robert C. Byrd Health Sciences Center;
Jennie York Law, MD, University of Maryland, School of Medicine
レビュー/改訂 2022年 6月
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急性骨髄性白血病(AML)では,異常に分化して長い寿命をもつ骨髄前駆細胞の白血化とその無秩序な増殖により,循環血液中の幼若な血球数が増加し,悪性細胞で正常な骨髄が置換される。症状としては,易疲労感,蒼白,紫斑ができやすい状態,出血しやすい状態,発熱,感染などがある;髄外白血病細胞浸潤による症状は,約5%の患者のみにみられる(皮膚症状として現れることが多い)。末梢血塗抹標本と骨髄の検査で診断に至る。治療としては,寛解に導入する導入化学療法と再発を予防するために寛解導入後の化学療法(造血幹細胞移植併用または非併用)を行う。

白血病の概要も参照のこと。)

American Cancer Societyは,2022年の米国では急性骨髄性白血病(AML)の新規症例数が約20,000例となり,11,500人がAMLで死亡し,そのほぼ全例が成人と推定している。AMLは,女性より男性の方がやや多いが,男女における平均生涯リスクは約0.5%(アメリカ人で200人に1人)である。

AMLは小児白血病の約25%を占めており,幼年期に発症することが多い。ただし,AMLの発生率は年齢とともに上昇していき,AMLは成人に最も多くみられる急性白血病となっており,発症年齢の中央値は68歳である。AMLは,別の悪性腫瘍に対して化学療法または放射線療法を受けた後に二次悪性腫瘍として発生する場合もある。二次性AMLは,化学療法単独では治療困難である。

AMLの病態生理

急性リンパ芽球性白血病と同様に,急性骨髄性白血病は,一連の後天性遺伝子異常により引き起こされる。白血化は,自己複製能が少し制限された造血前駆細胞レベルで生じることもあるが,通常は多能性幹細胞の段階で発生する。異常な増殖,クローン性増殖,異常な分化,およびアポトーシス(プログラム細胞死)の低下により,正常な血液成分が悪性細胞へ置き換えられてしまう。

AMLの分類

急性骨髄性白血病にはいくつかの亜型と前駆病態があり,形態,免疫表現型,細胞化学検査,および遺伝子異常によって互いに区別され(世界保健機関[World Health Organization:WHO]の2016年版骨髄系腫瘍分類も参照),これらの全てが予後と治療方針に重要な意味をもつ。WHO分類では,以下の7種類が規定されている:

  • 頻発性遺伝子異常を伴うAML

  • 骨髄異形成関連変化を伴うAML(AML-MRC)

  • 治療関連AML(t-AML)

  • ほかに特定されない(NOS)AML

  • 骨髄肉腫

  • ダウン症候群と関連する骨髄増殖

  • 芽球性形質細胞様樹状細胞性腫瘍

ほかに特定されない(NOS)亜型に対しては,以前のFrench-American-British(FAB)分類の形態基準が用いられる。

急性前骨髄球性白血病(APL)は,頻発性遺伝子異常を伴うAMLの亜型である。APLは特に重要な亜型であり,全AML症例の10~15%を占め,若年層(年齢の中央値は31歳)と特定の民族(ヒスパニック系)で多くみられる。凝固障害(例,播種性血管内凝固症候群[DIC])を呈することが多い。

治療関連AML(t-AML)は,特定の抗腫瘍薬(例,アルキル化薬,ヒドロキシカルバミド,およびトポイソメラーゼII阻害薬)を用いた前治療により引き起こされるAMLの亜型である。大半のt-AMLは,初回治療の3~10年後に発生し,潜伏期間はアルキル化薬およびヒドロキシカルバミド(平均潜伏期間5~7年)の方がトポイソメラーゼII阻害薬(平均潜伏期間6カ月~3年)より長い。アルキル化薬は,染色体欠失および不均衡型転座を引き起こす。ヒドロキシカルバミドは,del(17)pを引き起こし,TP53の活性化阻害も引き起こす。トポイソメラーゼII阻害薬は,均衡型の染色体転座につながる。

骨髄肉腫は,皮膚(皮膚白血病),歯肉,または他の粘膜面における骨髄芽球の髄外浸潤を特徴とする。

AMLの症状と徴候

急性骨髄性白血病の症状は,診断の数日前から数週間前にならないと現れないことがある。初診時に最も多くみられる症状は,造血障害によるもので,続いて以下の症状が現れる:

  • 貧血

  • 血小板減少症

  • 顆粒球減少症

貧血は,疲労,脱力,蒼白,倦怠感,労作時呼吸困難,頻脈,および労作時胸痛として現れることがある。

血小板減少症は,粘膜出血,紫斑ができやすい状態,点状出血/紫斑,鼻出血,歯肉出血,および過多月経を引き起こすことがある。血尿および消化管出血はまれである。頭蓋内または腹腔内血腫などの自然出血がみられることがある。

顆粒球減少症(好中球減少症)は,細菌,真菌,およびウイルス性のものを含めた,高い感染リスクにつながる可能性がある。発熱と重度または反復性の感染がみられる場合もある。顆粒球減少症から,急速に進行して生命を脅かす可能性のある細菌感染症につながることもあるが,発熱の原因は不明であることが多い。

皮膚白血病では,丘疹または結節および局面などの様々な所見がみられることがあり,紅斑性,褐色,出血性,または紫色/灰青色となる場合もある。

AMLでは他の器官系に白血病浸潤が起こる頻度がALLより低い傾向にあるが,以下がみられる:

  • 浸潤により,肝臓,脾臓,リンパ節が腫大することがある。

  • 骨髄および骨膜への浸潤により,骨痛および関節痛が生じることがある。

  • 髄膜浸潤により,脳神経麻痺,頭痛,視覚または聴覚症状,精神状態の変化,および一過性脳虚血発作/脳卒中が生じることがある。

AMLの診断

  • 血算および末梢血塗抹検査

  • 骨髄検査

  • 組織化学検査,染色体検査,細胞表面マーカー検査,および分子遺伝学的検査

急性骨髄性白血病は,骨髄芽球が骨髄有核細胞の20%以上もしくは赤血球の占める割合が50%を超えるのであれば赤血球以外の細胞の20%以上の場合,または頻発性の細胞遺伝学的異常[t(8;21),t(15;17),inv(16)またはt(16;16)]が存在すれば芽球の割合を問わずに診断される。末梢血を用いる場合も同じ基準により診断できる。

血算および末梢血塗抹検査が最初に行う検査であり,汎血球減少症および末梢血芽球は急性白血病を示唆する。梢血塗抹標本中の芽球が白血球数の90%近くになることがある。

重度の汎血球減少症の鑑別診断においては,再生不良性貧血伝染性単核球症などのウイルス感染症,ならびにビタミンB12欠乏症および葉酸欠乏症を考慮に入れるべきである。感染症に対する類白血病反応(正常な骨髄造血による顆粒球系の著明な白血球増多[白血球数 > 50,000/μL,> 50 × 109/L])が芽球数高値を伴ってみられることは決してない。

骨髄検査(穿刺および針生検)がルーチンで実施される。典型的にはAML患者の骨髄中では芽球が全細胞の25~95%を占める。

組織化学検査,染色体検査,細胞表面マーカー検査,および分子遺伝学的検査は,ALLの芽球とAMLまたはその他の疾患の芽球との識別に有用である。組織化学検査には,ミエロペルオキシダーゼの染色が含まれ,骨髄系起源の細胞で陽性となる。ミエロペルオキシダーゼが豊富な顆粒の結晶化は,アウエル小体(芽球の細胞質におけるアズール顆粒を含む線状の封入体)の形成につながり,これはAMLで特徴的な所見である。急性白血病の分類には,特異的な免疫表現型マーカー(例,CD13,CD33,CD34,CD117)の検出が不可欠である。

AMLでよく観察される細胞遺伝学的異常として,t(15;17),8トリソミー,t(8;21),inv(16)またはt(16;16),11q23.3再構成などがある(急性骨髄性白血病でよくみられる細胞遺伝学的異常の表を参照)。

表&コラム
表&コラム

比較的まれな細胞遺伝学的異常には以下のものがある:

  • t(9;11)(p22.3;q23.3) MLLT3-KMT2A

  • t(1;22)(p13.3;q13.1) RBM15-MKL1

  • t(6;9)(p23;q34.1) DEK-NUP214

  • inv(3)(q21.3q26.2)

その他の臨床検査所見として,高尿酸血症,高リン血症,高カリウム血症,低カルシウム血症,および乳酸脱水素酵素の上昇などを認めることがある。これらの所見から腫瘍崩壊症候群が示唆される。血清肝トランスアミナーゼまたはクレアチニンの上昇や偽低血糖(pseudohypoglycemia)がみられることもある。

中枢神経系症状がみられる患者では,頭部CTを施行する。心毒性のアントラサイクリン系薬剤の投与前にベースラインの心機能を評価するために心エコーまたはマルチゲートスキャン(MUGA)による画像検査を実施する。

AMLの予後

寛解導入率は50~85%である。長期の無病生存率は,全体で約20~40%であるが,強力な化学療法または造血幹細胞移植を受けた若年の患者では40~50%である。

治療プロトコルと治療強度の決定には予後因子が参考になり,予後が極めて不良と想定される患者では,通常より強力な治療を行い,その後に同種造血幹細胞移植を施行する。それらの患者では,強化療法による潜在的なベネフィットが治療毒性の増加を上回ると考えられる。

白血病細胞の核型は,臨床的予後の最も強い予測因子である。特定の染色体再構成に基づいて,予後良好,予後中間,予後不良の3つの臨床グループが特定されている(一部の一般的な細胞遺伝学的異常に基づく急性骨髄性白血病の予後の表を参照)。

表&コラム
表&コラム

AMLの予後および治療を向上させる上で,分子遺伝学的異常も重要である。多くの異なる変異が存在する;これらは予後および治療に対する影響に基づいて,いくつかのグループに分類される。AML患者は平均5つの頻発性遺伝子変異を有している。NPM1またはCEBPA遺伝子に変異を有する患者は比較的予後良好である。一方,FLT3の変異があれば予後不良である(これがなければ予後良好であるNPM1変異を有する患者も含む)。

予後不良を示唆するその他の因子として以下のものがある:

  • 先行する骨髄異形成期

  • 治療関連AML

  • 白血球数高値(> 約50,000/μL[> 50 × 109/L])

患者側の予後不良因子としては,年齢65歳以上,PS(performance status)の不良,併存症などがある。高齢の患者ほど,高リスクの細胞遺伝学的異常(いくつかの一般的な細胞遺伝学的異常に基づく急性骨髄性白血病の予後の表を参照),二次性AML,および複数の薬剤に対して耐性を示すAMLを有する傾向が高い。

微小残存病変は,骨髄中の白血病細胞が0.1~0.01%未満(使用する測定法に基づく)として定義される。AMLにおける微小残存病変は,白血病関連の免疫表現型を検出するマルチパラメータフローサイトメトリー法または変異特異的なPCR法により評価できる。これらのツールは予後判定として正確であるが,診療で直ちにルーチン使用できるわけではない。

AMLの治療

  • 健康状態が良好な患者に対して:化学療法(導入および地固め)単独または同種造血幹細胞移植との併用

  • 医学的に脆弱(フレイル)な患者に対して:強度の低い治療法

  • 全例に対して:支持療法

急性骨髄性白血病の治療は,患者の全般的な医学的状態に応じて異なる。健康状態が良好な患者は,医学的に脆弱(フレイル)な患者よりも年齢が若く,細胞遺伝学的異常によるリスクが低く,機能状態が良好で,併存症が少ない傾向にある。

AMLの治療は複雑であり,現在も発展途上にあるため,特に重要な段階(例,寛解導入)においては利用可能な最も専門性の高い医療施設で実施するのが最善であり,臨床試験に参加できる場合は,それが第一選択肢となる。

健康状態が良好なAML患者

健康状態が良好(medically fit)なAML患者における初期治療は,完全寛解の誘導を試みる導入化学療法である。それにより寛解に達した患者には地固め療法を施行するが,これに同種造血幹細胞移植を含めてもよい。

完全寛解は,骨髄中芽球 < 5%,好中球数 > 1000/μL(1 × 109/L),血小板数 > 100,000/μL(100 × 109/L),かつ輸血を必要としない場合と定義される。

基本的な寛解導入レジメン(7+3療法として知られる)では,7日間にわたりシタラビンを持続静注するとともに,同期間中の3日間にわたりダウノルビシンまたはイダルビシンを静脈内投与する。通常は治療により,感染および出血を伴う重大な骨髄抑制が生じる。骨髄回復までには相当の時間が必要である。この期間は,注意深い予防措置および支持療法が必須である。

7+3療法による完全寛解率は約70~85%(良好な遺伝的特徴),約60~75%(中間の遺伝的特徴),および約25~40%(不良な遺伝的特徴)である;完全奏効率も患者固有の危険因子および他の疾患危険因子(例,二次性 vs 原発性[de novo]AML)に依存する。しかし,大半の患者は,7+3療法(または他の従来型導入レジメン)により完全寛解に達するが,最終的に再発する。

14日目で白血病が残存している患者に対して,通常は再寛解導入療法が推奨されるが,予後の改善を示した質の高いエビデンスはない。白血病残存は,骨髄中の芽球割合が10%を超え,骨髄細胞密度が20%を超える場合として可変的に定義される。推奨される様々な再寛解導入レジメンには,複数の用法・用量でのシタラビンが含まれている。一部にはアントラサイクリン系薬剤が含まれ,第3の薬剤が追加されることもある。

従来の7+3化学療法と併用して,またはその代替として,いくつかの薬剤が使用できる。化学療法へのミドスタウリン(キナーゼ阻害薬)の追加により,特定の患者(例,新たにFLT3変異を伴うAMLと診断された60歳未満の成人―1)で生存期間が延長するとみられる。ゲムツズマブ オゾガマイシン(CD33を標的とする抗体薬物複合体)は,新たに診断されたCD33陽性AML患者に対して化学療法と併用できる。 ゲムツズマブ オゾガマイシンも,ときに寛解導入および地固めに対する単剤療法として使用される。

多くのレジメンで,寛解後に地固め期を設けている。これは,寛解導入期に使用したものと同じ薬剤または異なる薬剤を用いて実施する。大量シタラビンを用いるレジメンは,特に60歳未満の患者における地固め療法として使用した場合に,寛解期間が延長することがある。APL以外の細胞遺伝学的に予後良好なAML患者の第一完全寛解期には,大量シタラビンによる地固め療法を標準の寛解導入後療法とみなす。

アザシチジンの経口製剤による維持療法は,強力な化学療法を受けて第1寛解期にあるが,造血幹細胞移植の適応がない55歳以上の患者において,プラセボと比較して全生存および無再発生存期間を有意に延長した(2)。

ダウノルビシンとシタラビンを配合したリポソーム製剤は,新たに診断された治療関連AML(t-AML)または骨髄異形成関連変化を伴うAML(AML-MRC)の成人患者の治療に使用できる。この組合せは,新たに診断された60~75歳のt-AMLまたはAML-MRC患者において,標準治療のシタラビン + ダウノルビシン(7+3療法)との全生存期間の比較で優位性を示した(3)。

同種造血幹細胞移植を第一完全寛解期に施行することで,細胞遺伝学的に中間または高リスク患者の予後を総じて改善することができる。一般的に,造血幹細胞移植の準備には6~12週間を要する。根治的な造血幹細胞移植を待つ間に,大量シタラビンによる標準の地固め化学療法を先行することが推奨される。同種造血幹細胞移植に不適格となる可能性のある条件には,全般的なPS不良に加え,肺,肝臓,腎臓,または心機能の中等度から重度の障害がある。

APLおよびその他の一部のAML症例では,白血病診断時に播種性血管内凝固症候群(DIC)がみられることがあり,白血病細胞崩壊により血液凝固促進化学物質が放出されるため,悪化することもある。転座t(15;17)を認めるAPLでは,全トランス型レチノイン酸(トレチノイン)により2~5日でDICを是正できる;ダウノルビシンまたはイダルビシンと併用すると,80%~90%の患者で寛解が誘導され,65%~70%で長期生存が得られる。三酸化ヒ素もAPLに非常に有効である。従来の細胞傷害性薬剤による化学療法を併用しないトレチノインおよび三酸化ヒ素による分子標的療法は,忍容性が非常に良好で,APLで極めて高い成功を収めており,その完全寛解率は100%で,治癒率も90%を超えている(4)。

医学的に脆弱(フレイル)なAML患者

高齢および医学的に脆弱(フレイル)な患者では,典型的には初期治療の強度を低くする。

AML診断時の平均年齢は68歳であるため,新規診断例の大半が高齢とみなされる。高齢患者は,治療選択肢を制限する併存症を抱えている可能性が高い。高齢患者は,高リスクの細胞遺伝学的異常(例,複雑な核型,7モノソミー),骨髄異形成症候群もしくは骨髄増殖性腫瘍からの二次性AML,または多剤耐性のAMLを有する可能性もより高い。

強力な化学療法は,典型的には年齢のみを基準に高齢患者への施行が否定されているが,それでも80歳未満の患者では,特に予後良好な核型を有する場合,完全寛解率と全生存率が改善される。 完全寛解の達成により入院,感染,および輸血の必要性が減少することで,生活の質も改善する。

DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬のデシタビン(decitabine)およびアザシチジンは,がん抑制遺伝子のプロモーター領域のメチル化を抑制することによりDNAを調節する,ピリミジンヌクレオシドアナログである。これらはde novo AMLの高齢患者のほか,s-AML(骨髄異形成症候群が先行するAML),t-AML(治療関連AML),およびTP53変異陽性AMLの高齢患者においても臨床アウトカムを改善する。多くの高齢患者,特に,強力な化学療法に対する反応不良を予測する機能状態/PSの低下,臓器機能障害,および腫瘍の生物学的特徴(例,核型,分子遺伝学的異常)を認める患者には,これらの薬剤の1つを一次治療として単剤投与することができる。

ベネトクラクスは,抗アポトーシスタンパク質であるBCL-2の阻害薬であり,75歳以上または強力な導入化学療法を困難にする併存症がある成人の初発AML患者の治療に,アザシチジン,デシタビン(decitabine),または低用量シタラビンとの併用で用いられる。ある第III相試験では,標準的な寛解導入療法に不適格とされた未治療のAML確定例がアザシチジンをベネトクラクスまたはプラセボと併用する群にランダムに割り付けられた。アザシチジンとベネトクラクスの併用投与を受けた患者では,アザシチジンの単独投与を受けた患者と比べて,寛解率が高く,全生存期間が長かった(5)。

グラスデギブは,ヘッジホッグシグナル伝達経路阻害薬であり,75歳以上の患者または強力な導入化学療法を不可能にする併存症がある患者で新たに診断されたAMLの治療に,低用量シタラビンとの併用で用いられることがある。

イソクエン酸デヒドロゲナーゼ-1(IDH1)阻害薬であるイボシデニブも,75歳以上または強力な導入化学療法を困難にする併存症があるIDH1変異陽性AMLの初発患者の治療に使用されている。

導入療法に続いて,PSが適切な水準にあれば,高齢患者にも同種造血幹細胞移植を施行してよい。同種造血幹細胞移植は高齢患者の生存期間を延長する。 規定強度のレジメンに患者が適格でない場合は,強度縮小(骨髄非破壊的)レジメンが使用できる。 移植を受けない高齢およびフレイル患者は,通常は地固め化学療法(例,寛解導入で用いた用量より減量したシタラビンを単剤投与またはアントラサイクリン系薬剤と併用)を受ける。

再発または難治性AML

治療に対して反応がみられない(抵抗性の)患者および再発した患者は一般に予後不良である。第一寛解期後に再発した患者の30%~70%では,第二寛解期に達することができる。このような第二寛解期は,第一寛解期が1年を超え,かつ/または細胞遺伝学的所見が良好な患者でより容易に達成できるが,持続期間は第一寛解期よりも概して短い。

再発または抵抗性のAML患者では,再寛解導入を目的とするサルベージ化学療法に続いて同種造血幹細胞移植を施行する治療が適応となる場合がある。サルベージ化学療法のレジメンは多数あり,様々な用量のシタラビンをイダルビシン,ダウノルビシン,ミトキサントロン,エトポシド,代謝拮抗薬(例,クラドリビン,クロファラビン[clofarabine],フルダラビン),アスパラギナーゼなどの薬剤と併用するものがある。デシタビン(decitabine)とアザシチジンを含むレジメンがときに使用される。

再発または抵抗性AMLでは,最初の同種造血幹細胞移植が失敗した場合,ドナーリンパ球輸注が別の選択肢となる。その他の新規治療戦略としては,イソクエン酸デヒドロゲナーゼ-2(IDH2 )またはイソクエン酸デヒドロゲナーゼ-1(IDH1)遺伝子に変異がある再発または難治性AMLの成人患者に対して有用となることがあるIDH2阻害薬のエナシデニブ(enasidenib)またはIDH1阻害薬のイボシデニブや,再発または難治性AMLに対する単剤療法として使用されることがあるゲムツズマブ オゾガマイシンなどがある。

ギルテリチニブは,FLT3変異を認める再発または難治性AMLの成人患者の治療に用いられるキナーゼ阻害薬である。ランダム化第III相試験では,ギルテリチニブ投与群の患者の生存期間が化学療法を受けた患者と比べて有意に延長していた(6)。

CD123またはCD33を標的とするキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)とCD33を標的とする抗体薬物複合体も臨床試験で使用されている。

支持療法

急性白血病において,支持療法は同様であり,具体的には以下のものがある:

  • 輸血

  • 抗微生物薬

  • 補液および尿アルカリ化

  • 心理的支援

貧血または出血がみられる患者には,必要に応じて,赤血球および血小板輸血を行う。予防的な血小板輸血は,血小板数が10,000/μL(10 × 109/L)未満まで低下した場合に行う。貧血(ヘモグロビンが7または8g/dL[70または80g/L]未満)がある場合は,濃厚赤血球を輸血する。顆粒球輸血はルーチンで使用しない。

患者は免疫抑制状態にあるため,予防および治療のために抗微生物薬が必要になることが多く,そのような患者では,臨床的に前兆となる症状がほとんどみられずに,感染症が急速に進行することがある。適切な検査および培養試験を施行した後で,好中球数が500/μL(0.5 × 109/L)未満で発熱がみられる患者に対しては,グラム陽性菌およびグラム陰性菌に対して効果的な広域殺菌性抗菌薬(例,セフタジジム,ピペラシリンとタゾバクタム,メロペネム)による治療を開始すべきである。真菌感染症,特に肺炎は診断が難しいことから,真菌性肺炎を検出するための胸部CTを早期に(すなわち,疑いの程度に応じて好中球減少性発熱を認めてから72時間内に)施行すべきである。72時間内に抗菌治療の効果がみられない場合は,経験的な抗真菌療法を行うべきである。難治性肺炎の患者では,Pneumocystis jirovecii感染またはウイルス感染を疑い,気管支鏡検査および気管支肺胞洗浄により確認し,適切に治療すべきである。ポサコナゾールは,第2世代のトリアゾール系抗真菌薬であり,免疫抑制のために侵襲性のアスペルギルス感染症およびカンジダ感染症の発生リスクが高くなっている13歳以上の患者に対する一次予防に適応となる。全ての患者に対してアシクロビルまたはバラシクロビルの予防投与が一般的に推奨される。

補液およびアロプリノールまたはラスブリカーゼは,AMLの初期治療中に白血病細胞の急速な崩壊によって引き起こされる高尿酸血症,高リン血症,低カルシウム血症,および高カリウム血症(すなわち腫瘍崩壊症候群)の治療に用いられる。

心理的支援は,患者とその家族が病気になったショックや,生命を脅かす可能性がある疾患に対する過酷な治療を克服する助けとなる。

治療に関する参考文献

  1. 1.Stone RM, Mandrekar SJ, Sanford BL, et al: Midostaurin plus chemotherapy for acute myeloid leukemia with a FLT3 mutation.N Engl J Med 377:454–464, 2017.

  2. 2.Wei AH, Dohner H, Pocock C, et al: Oral azacitidine maintenance therapy for acute myeloid leukemia in first remission.N Engl J Med 383:2526–2537, 2020. doi: 10.1056/NEJMoa2004444

  3. 3.Lancet JE, Uy GL, Cortes JE, et al: CPX-351 (cytarabine and daunorubicin) liposome for injection versus conventional cytarabine plus daunorubicin in older patients with newly diagnosed secondary acute myeloid leukemia.J Clin Oncol 36:2684–2692, 2018.

  4. 4.Lo-Coco F, Avvisati G, Vignetti M, et al: Retinoic acid and arsenic trioxide for acute promyelocytic leukemia.N Engl J Med 369:111–121, 2013.

  5. 5.DiNardo CD, Jonas BA, Pullarkat V, et al: Azacitidine and venetoclax in previously untreated acute myeloid leukemia.N Engl J Med 383:617–629, 2020.doi: 10.1056/NEJMoa2012971

  6. 6. Perl AE, Martinelli G, Cortes JE, et al: Gilteritinib or chemotherapy for relapsed or refractory FLT3-mutated AML.N Engl J Med 381:1728–1740.2019.

要点

  • 急性骨髄性白血病(AML)は成人で最も多くみられる急性白血病である。

  • いくつかの亜型があり,典型的には非常に幼若な骨髄細胞が関与している。

  • 染色体異常と分子遺伝学的異常がよくみられ,予後の判定と治療法の選択における指針となる。

  • 健康状態が良好な患者(中間および不良な遺伝的特徴を有する患者)では,寛解導入および地固め化学療法とその後の同種造血幹細胞移植により治療する。

  • 医学的に脆弱(フレイル)な患者では,DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬などの強度の低いレジメンで治療し,同種造血幹細胞移植を考慮する。

  • 再発および/または抵抗性の患者には,サルベージ化学療法とその後に可能であれば同種造血幹細胞移植を施行する治療を行うか,分子標的療法を用いる。

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Leukemia and Lymphoma Society: Resources for Healthcare Professionals: Provides information on education programs and conferences and resources for referrals to specialty care

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