シゾイドパーソナリティ症(schizoid personality disorder)は,社会的関係からの隔離および全般的な無関心ならびに対人関係における感情の幅の狭さの広汎なパターンを特徴とする。診断は臨床基準による。治療は認知行動療法による。
(パーソナリティ症の概要も参照のこと。)
シゾイドパーソナリティ症では,他者と意味のある関係をもつ能力が制限される。
米国の一般集団の約3.1~4.9%がシゾイドパーソナリティ症を有している。男性の方がやや多い。シゾイドパーソナリティ症は,統合失調症または統合失調型パーソナリティ症の家族歴がある人々でより多くみられる場合がある。
併存症がよくみられる。患者の最大半数は,少なくとも1回のうつ病エピソードを生じている。患者はしばしば他のパーソナリティ症も有しており,最も一般的なものは統合失調型,妄想型,ボーダーライン,または回避性である。
ScPDの病因
小児期に養育者が感情的に冷たい,無視する,そしてよそよそしい人物であったことが,対人関係は満足の得られるものではないという子供の感情を助長し,シゾイドパーソナリティ症の発生に寄与する可能性がある。
ScPDの症状と徴候
シゾイドパーソナリティ症患者は,近親者も含め,他者との親密な関係に対する欲求をもたないようにみえる。患者には,ときに第1度近親者がいる以外,親しい友人または相談相手がいない。デートすることはまれであり,結婚しない場合が多い。患者は1人でいることを好み,他者との交流の必要がない活動および趣味(例,コンピュータゲーム)を選ぶ。他者との性的行動に対する関心は,あるとしてもごくわずかである。また患者は感覚的,身体的体験による楽しさ(例,砂浜での散歩)をあまり感じないように見える。
このような患者は他者が自分のことをどのように考えているかについて,それが良いことであれ,悪いことであれ,悩まないようである。社会的交流における普通の合図に気づかないため,社会的に不器用,無関心,または自分のことに没頭しているように見えることがある。社会的状況に反応したり(例,ほほえんだり,うなずいたりすることにより),感情を示したりすることはまれである。患者は怒りを表すことに困難を抱え,たとえ挑発されても怒りを示さない。重要なライフイベントに適切に反応することがなく,状況の変化に対する反応が受動的に見えることがある。その結果,自分の人生に対する方向性をもたないようにみえることもある。
まれに,このような患者が自分の内面を明らかにするのを心地よく感じる場合,患者は(特に社会的交流において)苦痛を感じていることを認める。
シゾイドパーソナリティ症の症状は長期的に安定した状態を維持する傾向があり,他のパーソナリティ症の症状よりもその傾向が強い。
ScPDの診断
診断基準(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition[DSM-5])
シゾイドパーソナリティ症の診断を下すには,患者には以下の持続的なパターンが認められる必要がある:
社会的関係からの隔離および全般的な無関心
対人関係における感情表現の少なさ
このパターンは,以下のうちの4つ以上が認められることによって示される:
家族とのものを含めて,親密な関係を求める欲求がなく,親密な関係を楽しむこともない
1人での活動を強く好む
他者との性行為に対する興味が,あるとしてもごくわずかである
喜びを感じる活動が,あるとしてもごくわずかである
第1度近親者を除き,親しい友人や相談相手がいない
他者からの賞賛や批判に対して関心がないように見える
感情的に冷たい,超然としている,または平板である
また,症状が成人期早期までに始まっている必要もある。
鑑別診断
医師は,シゾイドパーソナリティ症を以下の疾患と鑑別する必要がある:
統合失調症および関連症群:シゾイドパーソナリティ症患者では,統合失調症患者とは異なり,認知障害または知覚障害(例,パラノイア,幻覚)は認められない。
自閉スペクトラム症:シゾイドパーソナリティ症患者では,社会的障害および常同的な行動または興味はそれほど顕著ではない。
統合失調型パーソナリティ症:この疾患は知覚および思考の歪みを特徴とし,このような特徴はシゾイドパーソナリティ症ではみられない。
回避性パーソナリティ症:シゾイドパーソナリティ症における社会的孤立は社会的関係からの広汎な隔離および全般的な無関心によるものであるのに対し,回避性パーソナリティ症では,恥をかいたり,拒絶されたりすることへの怖れによるものである。
ScPDの治療
社会生活技能訓練
シゾイドパーソナリティ症の一般的治療は全てのパーソナリティ症に対するものと同じである。
シゾイドパーソナリティ症に対する精神療法または薬物療法について公表された対照試験はない。
一般に,1人での娯楽を好む人にアピールする非個人的話題(例,所有物,収集物,趣味)について興味を共有する努力が,患者との関係を築き,おそらくは治療的交流を促進するのに役立つ可能性がある。
社会的技能の習得に焦点を当てた認知行動療法的アプローチも患者を変化させるのに役立つ場合がある。シゾイドパーソナリティ症患者は他者に対する関心がないため,変化するよう動機づけることができない場合がある。