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痛風

執筆者:Sarah F. Keller, MD, MA, Cleveland Clinic, Department of Rheumatic and Immunologic Diseases
レビュー/改訂 2022年 7月
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痛風は,高尿酸血症(血清尿酸値が6.8mg/dL[0.4mmol/L]を超える状態)により尿酸一ナトリウム結晶が関節内と関節周囲に析出する疾患であり,ほとんどの場合,急性または慢性関節炎が繰り返し発生する。痛風の最初の発作は通常は単関節性であり,第1中足趾節関節を侵すことが多い。痛風の症状としては,重度の急性疼痛,圧痛,熱感,発赤,腫脹などがある。確定診断には滑液中での結晶の同定が必要である。急性発作の治療は抗炎症薬による。非ステロイド系抗炎症薬(NSAID),コルヒチン,またはその両方を定期的に使用するとともに,アロプリノール,フェブキソスタット,または尿酸排泄促進薬(プロベネシドなど)で血清尿酸値をその飽和濃度未満(<6.8mg/dL[<0.4mmol/L])まで持続的に低下させることにより,発作の頻度を減らすことができる。

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結晶誘発性関節炎の概要も参照のこと。)

痛風は女性より男性でより多くみられる。通常,痛風は男性では中年期に,女性では閉経後に発生する。痛風は若年者ではまれであるが,30歳より前に本症を発症した場合はより重度であることが多い。痛風は家族性であることが多い。メタボリックシンドロームの患者は痛風のリスクが高い。

痛風の病態生理

高尿酸血症がより重度で長引くほど,痛風が発生する可能性が高くなる。尿酸値は以下の理由で上昇することがある:

  • 腎排泄(最も一般的)または消化管排泄の減少

  • 産生の亢進(まれ)

  • プリン体の過剰摂取(通常は排泄減少が併存)

尿酸(尿酸塩)の血清中濃度が高い人の一部だけに痛風発作が起きる理由は不明である。

腎排泄の減少が高尿酸血症の圧倒的最多の原因である。これは遺伝性(例,尿酸輸送体の効率性の個人差)である場合があり,また利尿薬の投与を受けている患者や糸球体濾過量(GFR)を低下させる疾患の患者でもみられる。エタノールは肝臓におけるプリン体の異化を促進して,乳酸の生成を増加させ,それにより尿細管での尿酸分泌を妨げるほか,エタノールは肝臓での尿酸合成を促進することもある。鉛中毒およびシクロスポリン(移植患者に通常高用量で投与される)は,尿細管機能を変化させて尿酸の貯留をもたらす。

尿酸の産生増加は,血液疾患(例,リンパ腫,白血病,溶血性貧血)や細胞増殖および細胞死が亢進した病態(例,乾癬,細胞傷害性のがん治療,放射線療法)において核タンパク質の代謝回転が亢進することで生じる場合がある。尿酸の産生増加はまた,遺伝による原発性の異常として起こる場合もあり,尿酸の産生量は体表面積と相関することから,肥満の状態でも起こることがある。尿酸の過剰産生の原因は大半の症例で不明であるが,まれに酵素異常を原因として同定できることがあり,ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼの欠損症(完全な欠損症はレッシュ-ナイハン症候群)も原因の1つである可能性があり,ホスホリボシルピロリン酸合成酵素の過剰活性も同様である。

プリン体を豊富に含む食物の摂取量増加(例,肝臓,腎臓,アンチョビ,アスパラガス,コンソメ,ニシン,グレービーソース/ブイヨン,キノコ,ムール貝,イワシ,胸腺/膵臓)が高尿酸血症の一因になることがある。ビール(ノンアルコールビールも含む)には,プリンヌクレオシドであるグアノシンが特に豊富に含まれている。しかしながら,厳格な低プリン食の食事療法は,血清尿酸値を約1mg/dL(0.1mmol/L)しか低下させず,そのため痛風患者にとって十分な治療になるのはまれである。

尿酸塩は尿酸一ナトリウム(MSU)の針状結晶として析出し,無血管組織(例,軟骨)または血管の少ない組織(例,腱,腱鞘,靱帯,滑液包壁)と温度がより低い遠位部の関節および組織を覆う皮膚(例,耳,指腹)において細胞外に沈着する。長期にわたる重度の高尿酸血症では,尿酸一ナトリウム結晶は,より大きな主要な関節および腎臓などの臓器の実質に沈着することがある。pHが酸性の尿では,尿酸塩は小さな板状結晶またはダイヤモンド形の尿酸結晶として容易に析出し,そうした結晶が凝集して尿の排出を妨げうる尿砂または結石を形成することがある。痛風結節は,関節および皮膚組織に発生することが最も多い尿酸一ナトリウム結晶の凝集物である。通常は線維性かつ肉芽腫性の基質に包まれており,それにより急性炎症の発生が防がれている。

急性痛風性関節炎は,外傷,医学的ストレス(例,肺炎,その他の感染症),手術,サイアザイド系利尿薬もしくは尿酸低下作用を有する薬剤(例,アロプリノール,フェブキソスタット,プロベネシド,ニトログリセリン)の使用,またはプリン体を豊富に含む食物もしくはアルコールの過剰摂取によって引き起こされる。発作は血清尿酸値の突然の上昇または突然の低下(後者の方が多い)により誘発されることが多い。こうした誘因となる病態のうち,その一部だけに続いて急性発作が起こる理由は不明である。関節内および関節周囲の痛風結節は運動を制限し,変形を引き起こす可能性があり,その場合は慢性結節性痛風性関節炎(chronic tophaceous gouty arthritis)と呼ばれる。痛風は二次性変形性関節症の発生リスクを高める。

痛風の症状と徴候

急性痛風性関節炎は,通常は痛みの突然の発症から始まる(夜間が多い)。母趾の中足趾節関節が侵される(足部痛風[podagra]と呼ばれる)ことが最も多いが,足背部,足関節,膝関節,手関節,および肘関節もよく侵される部位である。まれに,股関節,肩関節,仙腸関節,胸鎖関節,または頸椎関節が侵される。痛みは次第に激しくなり,通常数時間にわたって続き,しばしば耐えがたいほどである。腫脹,熱感,発赤,および鋭い圧痛は感染症を示唆している可能性がある。患部を覆う皮膚は緊張し,熱をもち,光沢を有し,赤色または紫色になることがある。発熱,頻脈,悪寒,および倦怠感がときに起こる。

経過

通常,最初の数回の発作では,単一の関節のみに症状が現れ,数日しか持続しない。その後の発作では,いくつかの関節で同時にまたは逐次的に症状が現れることがあり,無治療では最長で3週間持続する。その後の発作は無症状の期間をはさんでから発生するが,無症状の期間は次第に短くなる。最終的には,1年で複数回の発作が起こるようになることもある。尿酸降下療法を開始して継続しない場合,持続的な尿酸沈着により結節性痛風から慢性の変形性関節炎を発症する可能性がある。

痛風結節

痛風患者には触知可能な痛風結節が生じるが,まれに急性痛風性関節炎の既往がない患者にそうした結節が生じることもある。通常は硬い黄色または白色の丘疹または小結節であり,単一または複数である。様々な部位(一般的には手指,手,足,および肘頭またはアキレス腱の周辺)に発生しうる。痛風結節は,さらに腎臓および他の臓器ならびに耳の皮下にも発生することがある。変形性関節症のヘバーデン結節がある患者では,結節内に痛風結節が発生することがある。これは利尿薬を服用している高齢女性で最もよくみられ,劇的に炎症を起こして,炎症性の変形性関節症と誤診されることがある。通常は無痛性であるが,痛風結節(特に肘頭の滑液包中)は急速に炎症を起こし痛みを伴うようになることがあり,これは軽度または不顕性の外傷の後に多い。痛風結節は,皮膚を越えて突出することがあり,尿酸結晶のチョーク様の塊を排出する。その瘻孔が感染を起こすことがある。関節内および関節周囲の痛風結節は,最終的に変形と二次性変形性関節症を引き起こすことがある。

痛風の合併症

痛風性関節炎は,痛み,変形,および関節の運動制限を引き起こすことがある。炎症は,他の関節で鎮静化していながら一部の関節で再燃することがある。痛風患者が尿酸結石またはシュウ酸カルシウム結石による尿路結石症を発症することがある。

痛風の合併症としては,二次性の尿細管間質性疾患を伴う腎臓の閉塞や感染症などがある。未治療かつ進行性の腎機能障害(最も多くは併存する高血圧症に関連し,または頻度は低くなるが腎症の他の一部の原因に関連する)によってさらに尿酸の排泄が障害され,組織への結晶沈着が促進される。

痛風患者には心血管疾患閉塞性睡眠時無呼吸症候群非アルコール性脂肪性肝疾患や,メタボリックシンドロームを構成する病態がよくみられる。

痛風の診断

  • 臨床基準

  • 関節液検査

急性の単関節炎または少関節炎がみられる患者(特に高齢者または他の危険因子を有する患者)では,痛風の診断を疑うべきである。足部痛風(podagra)と繰り返す足背部の炎症は特に本症を示唆する。爆発的に始まって7~10日間で自然に終息した過去の発作もまた特徴的である。似た症状が以下に起因することがある:

回帰性リウマチは,1つまたはときにいくつかの関節もしくは腱鞘またはそれらの近傍における,自然に消退する繰り返す急性の炎症発作を特徴とし,痛みおよび紅斑が痛風と同程度に重度となることがある。発作は1~3日で自然にかつ完全に鎮静化することが多い。このような発作は関節リウマチの発症の前兆である場合があり,リウマトイド因子の検査が鑑別に役立つ可能性があり,これはRA患者の約50%で陽性となる(痛風患者の10%でも陽性となる)。

関節液検査

急性痛風性関節炎が疑われる場合,初診時に関節穿刺および関節液検査を行うべきである。痛風と診断された記録がある患者での典型的な再発には関節穿刺は必須とならないが,診断に疑問がある場合や,患者の危険因子または臨床的特徴から感染性関節炎が示唆される場合は,関節穿刺を施行すべきである。一部の症例では,痛風の診断は患者の病歴と臨床的特徴から,あるいは関節液を採取できない症例では画像検査の結果から合理的に推測できる場合もあるが,罹患関節から採取した滑液中でMSU結晶の存在を確認することを,あらゆる方法で試みるべきである。

関節液検査では,液体に遊離するかまたは食細胞によって取り込まれている,針状で強い負の複屈折性の尿酸結晶を同定することによって診断を確定できる。発作時に採取された滑液には炎症の特徴が認められ(関節内結晶の顕微鏡検査の表を参照),通常は白血球数が2000~100,000/μLとなり,多形核白血球の割合が80%を超える。これらの所見は感染性関節炎とかなり重なり,グラム染色(感度は低い)および培養で感染性関節炎を除外する必要がある。

表&コラム
表&コラム

血清尿酸値

血清尿酸値の上昇は痛風診断の裏付けとなるが,特異度と感度はともに低く,炎症性サイトカインであるインターロイキン6(IL-6)の尿酸排泄促進作用が一因となり,あるいは血清尿酸値の突然の低下が発作の誘因となることから,少なくとも30%の患者で急性発作中に血清尿酸値が正常となる。しかしながら,発作がない期間のベースラインの血清尿酸値は,細胞外の尿酸プールの大きさを反映する。新たに痛風と証明された患者では,ベースライン値を確立するために血清尿酸値を2回または3回測定すべきである。過剰産生と排泄減少の鑑別を目的とする尿中尿酸排泄の定量はもはや推奨されておらず,この検査でアロプリノールやフェブキソスタット(どちらも尿酸の産生を減少させる)に対する患者の反応を予測することもできない。治療開始後に血清尿酸値が低下する可能性があるが,組織沈着物が残存する限り,発作が起こり続ける可能性がある。尿酸沈着物の溶解には,治療開始から何カ月もの期間を要することがある。

画像検査

骨びらんまたは痛風結節を検索するために罹患関節のX線撮影を行ってもよいが,関節液検査で急性痛風の診断が確定している場合は不要であり,初回発作時にびらんが認められることはまれである。ピロリン酸カルシウム関節炎では,ときに放射線不透過性の沈着物が線維軟骨,関節の硝子軟骨(特に膝関節),またはその両方にみられることがあるが,石灰化は急性発作がなくとも認められる可能性がある。

痛風の診断においては,単純X線よりも超音波検査の方が感度が高い(ただし検者の技量に依存する)。関節軟骨への尿酸の沈着(double-contour sign)と臨床的に明らかでない痛風結節が特徴的な変化である。これらの所見は,最初の痛風発作が起きる前から明らかな場合もある。二重エネルギーCT(DECT)でも尿酸沈着を明らかにすることができ,標準的な臨床的評価および検査で診断がはっきりしない場合,特に滑液の吸引と分析が行えない場合に有用となりうる。

慢性痛風性関節炎の診断

原因不明の関節疾患が遷延しているか,皮下または骨に痛風結節がみられる患者では,慢性痛風性関節炎を疑うべきである。第1中足趾節関節または他の罹患関節の単純X線が有用となることがある。それらのX線では,張り出した骨縁辺とともに軟骨下骨の打ち抜き病変を示すことがある(第1中足趾節関節で最もよくみられる);病変がX線で目に見えるようになるには直径が5mm以上でなければならない。関節裂隙は,典型的には疾患経過のかなり後期まで保たれる。通常は,罹患関節の慢性貯留液から得られる滑液所見で診断に至る。

尿酸結晶の沈着を示唆する典型的なdouble-contour signを検出するために,診断を目的とする超音波検査を行うことが増えてきているが,その感度は検者の技量に依存し,ピロリン酸カルシウム結晶の沈着との決定的な鑑別はより困難な場合がある。

痛風の予後

痛風を早期に診断できれば,生涯にわたる尿酸降下療法によって大半の患者が通常の生活を送ることができる。進行例の多くで,血清尿酸値を積極的に低下させることにより,痛風結節の消失および関節機能の改善が可能である。痛風は一般に,最初の症状が30歳未満で出現した患者とベースラインの血清尿酸値が9mg/dL(0.5mmol/L)を超えている患者では,より重症となる。おそらく,メタボリックシンドロームおよび心血管疾患の有病率の高さから痛風患者の死亡率が増加している。

治療しても十分に改善しない患者もいる。通常の理由としては,不十分な患者教育,アドヒアランス不良,アルコール依存症のほか,主なものとして医師による高尿酸血症の過少治療がある。

痛風の治療

  • 非ステロイド系抗炎症薬(NSAID),コルヒチン,コルチコステロイド,またはインターロイキン1(IL-1)阻害薬による急性発作の終息

  • 血清尿酸値を低下させることによる尿酸一ナトリウム(MSU)結晶のさらなる沈着の予防,発作頻度の低減,および現存する痛風結節の消散(アロプリノールもしくはフェブキソスタットによる尿酸産生の減少,ウリカーゼ補充療法による沈着物の溶解,またはプロベネシドによる尿酸排泄の増加による)

  • コルヒチンまたはNSAIDの連日投与による繰り返す急性発作の予防

  • 併存する高血圧症,高脂血症,および肥満の治療と食事による過剰なプリン体摂取の回避

2020 American College of Rheumatology Guideline for the Management of Goutも参照のこと。)

急性発作の治療

非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は,急性発作の治療に効果的であり,一般に忍容性が高い。しかしながら,消化管障害,消化管出血,高カリウム血症,クレアチニン増加,体液貯留などの有害作用を引き起こすことがある。高齢患者と脱水患者はとりわけリスクが高い(特に腎疾患の既往がある場合)。抗炎症作用がある(高)用量で用いるNSAIDは実質的にどれも効果的であり,数時間以内に鎮痛効果が発現する可能性が高い。再発を予防するために,痛みおよび炎症の徴候が消失した後数日間治療を続けるべきである。

従来の治療法であるコルヒチンの経口投与を症状の出現直後に開始すれば,患者によっては劇的な反応が得られ,急性発作から12~24時間以内に開始した場合に最も効果的となる。1.2mgの投与に続いて1時間後に0.6mgを投与することがある;関節痛は12~24時間後に軽減する傾向があり,ときに3~7日以内に消失するが,そのためには一般に継続投与が必要であり,時間を要することがある。コルヒチンに耐えられる場合は,発作が鎮静化しても,0.6~1.2mgの1日1回投与を続けることができる。腎機能不全および薬物相互作用(特にクラリスロマイシンや一部のスタチン系薬剤との相互作用)のため,投与量の減少または他の治療法の利用が必要になることがある。消化管障害と下痢が頻度の高い有害作用である。

静注用コルヒチンは米国ではもはや利用できない。

コルチコステロイドは急性発作の治療に用いられている。罹患関節の吸引に続いてコルチコステロイドエステル結晶懸濁液を点滴注入すると,非常に効果的である(特に単関節の症状に対し);テブト酸プレドニゾロン4~40mgまたは酢酸プレドニゾロン5~25mgを,罹患関節の大きさに応じた用量で用いることがある。経口プレドニゾン(約0.5mg/kgを1日1回),筋注もしくは静注コルチコステロイド,または副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)80単位筋注の単回投与が効果的である(特に複数の関節が侵されている場合)。NSAID療法と同様に,再発を予防するため,コルチコステロイドは発作が完全に消失した後も数日間継続すべきである。

単剤療法が無効であるか毒性のために用量(例,NSAID)が制限される場合は,コルヒチンをNSAIDまたはコルチコステロイドと併用することができる。

NSAIDまたはコルチコステロイドに加えて,鎮痛補助薬,安静,氷冷,および炎症を起こしている関節の副子固定が助けになることがある。急性発作が始まった時点で患者が尿酸降下薬の投与を受けている場合,その薬剤は同じ用量で継続すべきであり,用量の調節は発作が治まるまで延期する。適切な抗炎症療法を行っていれば,急性発作中に尿酸降下療法を開始することに禁忌はない。

コルチコステロイド,コルヒチン,およびNSAIDが禁忌または無効である場合,アナキンラ(anakinra)などのIL-1阻害薬を用いることがある。アナキンラ(anakinra)は,発作の消失を早め,他の薬剤の使用を制限する併存症を複数併発した患者の入院期間を短縮する可能性がある。アナキンラ(anakinra)は典型的には100mg,皮下,1日1回の用法・用量で,症状が消失するまで投与される。アナキンラ(anakinra)には,血糖値や腎機能に影響を及ぼさず,体液貯留も引き起こさないという利点があり,適切に治療されている活動性感染症の患者にも使用することができる。実用的な考慮事項(例,費用)のため,アナキンラ(anakinra)は急性痛風発作の外来治療にはあまり使用されていない。

繰り返す発作の予防

急性発作の頻度は,コルヒチン0.6mgを1日1回または1日2回(耐容性と腎機能に応じて最大1.2mg/日)服用することで減少する。発作の前兆が最初に現れたときに,追加でコルヒチン0.6mg錠を2錠服用すると,発作が阻止されることがある。患者がコルヒチンの予防投与を受けていて,過去2週間の間に急性発作を治療するために高用量のコルヒチン投与を受けたことがある場合,発作を予防する試みには,代わりにNSAIDまたはコルチコステロイドを用いるべきである。

長期のコルヒチン服用中には(可逆的な)神経障害および/またはミオパチーが発生することがある。この病態は,腎機能不全がある患者と特定のスタチン系薬剤またはマクロライド系薬剤を併用している患者で発生する可能性が高いが,これらの危険因子がない患者にもまれに発生することがある。

腎機能が許すならば,低用量のNSAIDを連日投与することでも発作の頻度を減らすことができる。コルチコステロイドの長期使用は,有害作用が生じる可能性があるため,理想的な予防的治療とならない。

血清尿酸値の低下

コルヒチン,NSAID,およびコルチコステロイドは,いずれも血清尿酸値を低下させないため,痛風結節による進行性の関節損傷を遅らせる効果はない。尿酸降下薬により,関節損傷を予防することができ,すでに損傷がある場合は回復が得られることもある。結節性の沈着物は,血清尿酸値を低下させるか,ウリカーゼ補充療法で溶解させることで,再吸収される。血清尿酸値を飽和濃度未満(通常は6mg/dL[0.35mmol/L]未満を目標とする)に維持することにより,沈着物が溶解していき,最終的に急性の関節炎発作の頻度が減少する。この減少は以下によって達成される:

  • キサンチンオキシダーゼ阻害薬(XOI)(アロプリノールまたはフェブキソスタット)による尿酸産生の阻止

  • 尿酸排泄促進薬(プロベネシドまたはロサルタン)による尿酸排泄量の増加

  • 重度の結節性痛風または高用量のXOIに耐えられない患者では両タイプの薬剤の併用

  • 重度の結節性痛風がある患者や他の尿酸降下療法に反応しなかった患者などでは,ウリカーゼ補充療法により尿酸塩をアラントイン(より可溶性で排泄されやすい)に変換することによる尿酸排泄量の増大

以下がみられる患者は尿酸降下療法の適応となる:

  • 痛風結節の沈着

  • 画像検査での痛風による関節損傷の所見

  • 痛風性関節炎の頻回または生活に支障を来す発作(例,年2回を超える)

  • 尿路結石症

  • 発作頻度は少ないが,血清尿酸値が9mg/dL(0.5mmol/L)を超える患者,または発作により著しい困難が生じている患者

  • 繰り返す急性発作の治療に使用される薬剤(NSAIDまたはコルチコステロイド)に対する相対的禁忌とされる複数の併存症(例,消化性潰瘍,慢性腎臓病)

高尿酸血症は通常,痛風発作と尿酸腎結石症がいずれもなければ治療しない。

尿酸降下療法の目標は血清尿酸値を低下させることである。痛風結節がなければ,妥当な目標値は6mg/dL(0.35mmol/L)未満であり,これは飽和状態での値(正常な深部体温およびpHで6.8mg/dL超[0.4mmol/L超])よりも低い。この目標達成に向けた治療戦略で血清尿酸値が6mg/dL未満まで低下すれば,発作頻度が低下することを実証した説得力のあるデータが得られている。2つのランダム化比較試験により,血清尿酸値が6mg/dL未満の患者では,血清尿酸値がより高い患者と比較して,痛風発作の回数が有意に少ないことが確立されている。血清尿酸値が目標値の水準(6mg/dL未満)で痛風発作が起きた患者では,この閾値を超えていた患者と比べて発作回数が少なかった(1)。

触知可能な痛風結節がある場合や,結節性の沈着により著明な障害が起きている場合は,それらをより迅速に溶解することが妥当な治療目標となり,そのためには目標値をより低く設定する必要がある。血清尿酸値が低いほど,痛風結節は速やかに消失する。沈着物が完全に溶解したと推定された後は,血清尿酸値を6mg/dL未満の水準まで上昇させることができる。

薬剤が血清尿酸値の低下に効果的である;プリン体の食事制限はそれほど効果的ではないが,プリン体が豊富な食物,アルコール(特にビール),およびノンアルコールビールの多量の摂取は避けるべきである。炭水化物制限(特に高果糖コーンシロップ)と減量によって血清尿酸値を下げることができるが,インスリン濃度が高いと尿酸排泄が抑制されることから,インスリン抵抗性がある患者では血清尿酸値が特に大きく低下する。低脂肪の乳製品の摂取を推奨すべきである。尿酸降下療法の最初の1カ月間は急性発作が起きやすいため,そのような治療は,コルヒチンまたはNSAIDの1日1回または1日2回投与とともに開始するべきである。

痛風結節の消失には,たとえ血清尿酸値を低値に維持しても何カ月もかかることがある。血清尿酸値を定期的に測定すべきである(通常,必要な用量を決定している間は月1回,その後は治療の有効性を確認するために少なくとも年1回,薬剤の変更または体重増加がある場合はより頻回)。尿酸降下療法は発作が起きても中止すべきではない。

アロプリノールは,尿酸合成を阻害するキサンチンオキシダーゼ阻害薬であり,初回の尿酸降下療法で最もよく処方される望ましい薬剤である。尿酸結石または尿砂はアロプリノール療法中に溶解することがある。治療は通常50~100mg,経口,1日1回で開始し,最大800mg,経口,1日1回まで徐々に増量できる。1日1回の投与で消化管障害が生じる場合は,投与を分割してもよい。まれであるが重度の全身性過敏反応の発生率を抑えるために,腎機能不全のある患者では開始量を減らすこと(例,クレアチニンクリアランスが60mL/min/1.73m2未満の場合は50mg,経口,1日1回)を推奨する臨床医もいるが,この介入の有効性を確認できるデータは限られている。アロプリノールの最終用量は,目標とする血清尿酸値によって決定すべきである。最も一般的な1日量は300mgであるが,この用量で効果的に血清尿酸値が6mg/dL(0.35mmol/L)未満まで低下する痛風患者の割合は40%未満である。用量が300mgを超えるとアロプリノールの吸収が低下する可能性があるため,分割投与(例,1日2回投与)を考慮すべきである。

アロプリノールの有害作用には軽度の消化管障害や発疹などがあるが,これらはスティーブンス-ジョンソン症候群,生命を脅かす肝炎,血管炎,または白血球減少症の前兆である場合がある。有害作用は,腎機能障害がある患者でより多くみられる。HLA-B*5801のキャリアではアロプリノール反応のリスクが高く,HLA-B*5801の保有率は人種により異なる(2)。したがって,2020 American College of Rheumatology Guideline for the Management of Goutでは,東南アジア系の患者(例,漢民族,朝鮮人,タイ人)とアフリカ系アメリカ人の患者に対してはHLA B*5801の検査を行い,この遺伝子マーカーが認められた場合は代替薬を使用することが推奨されている。アロプリノールは,アザチオプリンまたはメルカプトプリンを服用している患者では,これらの薬剤の代謝を下げ,それにより免疫抑制作用と細胞傷害作用を増強する可能性があるため,禁忌である。肝トランスアミナーゼ値が上昇することがあり,定期的に測定すべきである。

フェブキソスタットは,費用は高いものの(米国),尿酸合成を強力に阻害するキサンチンオキシダーゼ阻害薬である。アロプリノールに耐えられない患者,アロプリノールの禁忌がある患者,またはアロプリノールにより十分に尿酸値が下がらない患者において特に有用である。フェブキソスタットは,アロプリノールと同等の効果で急性発作を予防するようである(3)。フェブキソスタットの投与は40mg,1日1回,経口の用量で開始し,尿酸値が6mg/dL(0.35mmol/L)未満に低下しない場合は80~120mg,1日1回,経口まで増量する。フェブキソスタットは(アロプリノールと同様に)アザチオプリンまたはメルカプトプリンを服用している患者では,これらの薬剤の代謝を抑制する可能性があるため,禁忌である。心血管疾患が判明している患者を対象とした研究において,フェブキソスタットアロプリノールと比べて死亡リスクを上昇させたが(4),その後のいくつかの研究では同様の結果は確認されなかった(5)。トランスアミナーゼ値が上昇することがあり,定期的に測定すべきである。

ペグロチカーゼ(pegloticase)は,ペグ化された遺伝子組換えウリカーゼである。ウリカーゼは,尿酸をより溶解度の高いアラントインに変換する,ヒトには存在しない酵素である。ペグロチカーゼ(pegloticase)は高価であり,他の治療で血清尿酸値の低下が得られなかった痛風患者に主に使用されている。ペグロチカーゼ(pegloticase)は,結節性の沈着物が大量にあり,他の尿酸降下療法では妥当な期間内に溶解する可能性が低いと予想される患者にも使用することができる。過剰な尿酸沈着が完全になくなるまで,何カ月もの期間(典型的には最低6~9カ月間)にわたって2~3週間毎に静脈内投与するが,しばしば血清尿酸値が1mg/dL(0.1mmol/L)未満まで低下する。ペグロチカーゼ(pegloticase)は,溶血およびメトヘモグロビン血症を引き起こす可能性があるため,G6PD欠損症患者では禁忌である。ペグロチカーゼ(pegloticase)の点滴では,アナフィラキシーに一致する症状が現れる可能性がある。現時点で入手可能な製剤の有効性は,薬物中和抗体の発現率の高さから限定的である。ペグロチカーゼ(pegloticase)の投与後も尿酸値が6mg/dL(0.35mmol/L)未満まで低下しない場合は,抗ポリエチレングリコール(PEG)抗体が発現している可能性が高く,将来のアレルギー反応のリスクが高まっていることが示唆されるため,以降は定期投与を中止する。他の尿酸降下薬によってペグロチカーゼ(pegloticase)の無効が覆い隠される事態を避けるため,他の尿酸降下薬をペグロチカーゼ(pegloticase)と併用してはならない。しかしながら,免疫抑制薬(例,メトトレキサート)をペグロチカーゼ(pegloticase)と併用することで,中和抗体の発現を予防できることがある。

尿酸排泄促進薬を用いる治療法は,尿酸排泄が低下しており(高尿酸血症がある患者の大多数),正常な腎機能を有し,腎結石の既往がない患者で有用である。プロベネシドは,米国で入手できる唯一の尿酸排泄促進薬である。

プロベネシドは,アロプリノールとフェブキソスタット両方の禁忌があるか,どちらの使用も耐えられない場合に,単剤療法として使用することができる。プロベネシドは,腎機能の低下に伴い効力が失われるため,糸球体濾過量が50mL/min/1.73m2未満の患者では一般に有用とならない。プロベネシドによる治療は,最初は250mg,経口,1日2回で開始し,必要に応じて最大1g,経口,1日3回まで増量する。キサンチンオキシダーゼ阻害薬に追加しても効果的である。

降圧薬のロサルタンとトリグリセリド値を低下させる薬剤のフェノフィブラートは,どちらも尿酸排泄促進作用を有しており,これらの薬剤の対象疾患を有する患者において尿酸値を低下させる目的で使用することができる。低用量のサリチル酸系薬剤は,尿酸排泄を減少させて,高尿酸血症を悪化させることがあるが,その影響は軽微にとどまるため,ほかに心血管疾患の二次予防などで適応がある場合には,その使用を避けるべきではない

その他の治療法

全ての患者(特に慢性的に尿砂または尿酸結石を排泄する患者)において1日3L以上の水分摂取が望ましい。

尿酸値を下げる治療と十分な水分補給にもかかわらず尿酸による尿路結石症が持続する患者には,尿のアルカリ化(クエン酸カリウム20~40mEqを1日2回経口投与,またはアセタゾラミド500mgを就寝時に経口投与)もときに効果的である。しかしながら,尿の過度のアルカリ化は,リン酸カルシウム結晶やシュウ酸カルシウム結晶の沈着につながる可能性がある。

腎結石を砕くために体外衝撃波砕石術が必要になることがある。

健康な皮膚部位の大きな痛風結節を外科的に除去することがある;他の全ての場合では,尿酸値を下げる十分な治療で緩徐に消失させるべきである。

治療に関する参考文献

  1. 1.Stamp LK, Frampton C, Morillon MB, et al: Association between serum urate and flares in people with gout and evidence for surrogate status: a secondary analysis of two randomised controlled trials.Lancet Rheumatol 4: e53-e60, 2022.doi.org/10.1016/S2665-9913(21)00319-2

  2. 2.Jutkowitz E, Dubreuil M, Lu N, et al: The cost-effectiveness of HLA-B*5801 screening to guide initial urate-lowering therapy for gout in the United States.Semin Arth Rheum 46:594-600, 2017.doi: 10.1016/j.semarthrit.2016.10.009

  3. 3.O'Dell JR, Brophy MT, Pillinger MH, et al: Comparative effectiveness of allopurinol and febuxostat in gout management.NEJM Evid 1(3):10.1056/evidoa2100028, 2022.doi: 10.1056/evidoa2100028.Epub 2022 Feb 3.PMID: 35434725; PMCID: PMC9012032.

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  5. 5.Mackenzie IS, Ford I, Nuki G, et al: Long-term cardiovascular safety of febuxostat compared with allopurinol in patients with gout (FAST): a multicentre, prospective, randomised, open-label, non-inferiority trial.Lancet 396(10264):1745-1757, 2020.doi: 10.1016/S0140-6736(20)32234-0

要点

  • プリン体の過剰摂取や産生増加が高尿酸血症に寄与する可能性もあるが,痛風の最も一般的な原因は,腎疾患または尿酸輸送体の効率性に関する遺伝的変異に起因した尿酸排泄の減少である。

  • 突然かつ原因不明の急性単関節炎または少関節炎がみられた患者では痛風を疑い,特に母趾または中足部が侵されている場合と突然かつ原因不明の急性関節炎を繰り返し,7~10日間で自然寛解する場合には強く疑う。

  • 滑液中に針状で強い負の複屈折性の尿酸結晶を認めること,または二重エネルギーCTもしくは超音波検査の所見により診断を確定する。高尿酸血症の記録だけでは,痛風性関節炎の診断を確定するには不十分である。

  • 痛風の急性発作は経口コルヒチン,NSAID,コルチコステロイド,コルヒチンとNSAIDもしくはコルチコステロイドの併用,またはインターロイキン1(IL-1)阻害薬で治療する。

  • コルヒチンおよびNSAIDと血清尿酸値を低下させる薬剤の生涯にわたる使用を処方することにより,将来の発作リスクを低下させる。

  • 痛風結節がある患者,年2回を超える頻度で痛風発作がみられる患者,尿路結石症がある患者,および急性発作を緩和するための薬剤の禁忌となる併存症が複数ある患者には,血清尿酸値を低下させる薬剤を投与し,それ以外の患者では,継続している尿酸低下療法を個別化する。

  • 通常はアロプリノールまたはフェブキソスタットを単剤または尿酸排泄促進薬との併用で処方することで,尿酸値を低下させる。

無症候性高尿酸血症

無症候性高尿酸血症は,臨床的痛風のない7mg/dL(0.4mmol/L)を超える血清尿酸値の上昇である。

一般に,無症候性高尿酸血症には治療は不要である。血清尿酸値が10mg/dL(0.6mmol/L)もの高値を示す無症候性高尿酸血症でも,大半の患者が10年にわたり痛風発作を起こさない。しかしながら,尿酸の排泄過多がみられ,尿アルカリ化と十分な水分摂取にもかかわらず尿酸による腎結石症を繰り返している患者には,アロプリノールを投与してもよい。

観察データから,高尿酸血症が慢性腎臓病,心血管疾患,および青年における本態性高血圧の進行に寄与する可能性が示唆された。しかしながら,複数の介入研究では,血清尿酸値の低下により腎疾患の進行が軽減する効果は実証されなかった。

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