綿肺症は,綿,亜麻,および麻の栽培および加工に携わる労働者に発生する気管支収縮を特徴とする反応性気道疾患の1つの形態である。病因は綿塵に含まれる細菌性内毒素である。症状は胸部圧迫感および呼吸困難であり,週明けの仕事の初日に悪化し,週末に向けて軽減する。診断は病歴および肺機能検査所見に基づく。治療には曝露の回避および抗喘息薬の使用などがある。
(環境性肺疾患の概要も参照のこと。)
綿肺症の病因
綿肺症は未処理の原綿に接触する労働者にほぼ限って起こり,特に開封された梱に曝されるか,紡績作業に従事するまたはカーディング室で作業を行う労働者にみられる。綿肺症は急性曝露後にも起こりうるが,通常は10年以上の慢性曝露歴をもつ労働者に発生する。
エビデンスからは,綿塵に含まれる細菌性内毒素が原因であることが示唆されている。そのような内毒素は,特に遺伝的に感受性の高い人において,気管支収縮,慢性気管支炎,および肺機能の漸進的な低下を引き起こす。綿塵への長期曝露はかつて肺気腫の原因になると考えられていたが,現在この説は否定されている。
綿肺症の症状と徴候
症状は胸部圧迫感および呼吸困難で,曝露を繰り返すにつれて軽減する。症状は,週明けまたは休暇明けの仕事の初日に出現し,週末までには軽減または消失する。数年間にわたり曝露が繰り返されると,胸部圧迫感が再び現れ,週の半ばまで,ときには週末まで,またはその人が仕事を続ける限り持続する傾向がある。この典型的な時間的パターンにより綿肺症を喘息と鑑別できる。
急性曝露の徴候は頻呼吸および喘鳴である。より慢性の曝露患者では断続性ラ音が聴取されることがある。
綿肺症の診断
曝露歴および肺機能検査の結果
綿肺症の診断は生綿への曝露歴および肺機能検査に基づいて行うが,肺機能検査では典型的な気流閉塞および肺活量の低下が,特に勤務シフトの初日の勤務開始時および終了時に比較測定した際にみられる。メサコリンに対する反応性亢進もしばしば認められる。
繊維産業労働者において,症状報告やスパイロメトリーなどによるサーベイランスを行うことは早期発見に役立つ。
綿肺症の治療
抗喘息薬
綿肺症の治療には曝露の回避または軽減および抗喘息薬の使用などがある。
綿肺症の予防には,個人用防護具の使用および環境衛生の遵守が極めて重要である(1)。
治療に関する参考文献
1.Er M, Emri SA, Demir AU, et al: Byssinosis and COPD rates among factory workers manufacturing hemp and jute.Int J Occup Med Environ Health 29(1):55–68, 2016.doi: 10.13075/ijomeh.1896.00512