心室細動(VF)

執筆者:L. Brent Mitchell, MD, Libin Cardiovascular Institute of Alberta, University of Calgary
レビュー/改訂 2023年 1月
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心室細動では,心室が非協調的に震動し,有効な収縮は発生しない。直ちに失神を来し,数分以内に死亡する。治療は,即時の除細動を含めた心肺蘇生による。

不整脈の概要も参照のこと。)

心室細動(VF)は複数の微小な興奮波によるリエントリー性の電気活動を原因とし,心電図上では超高速の基線の動揺として出現し,動揺のタイミングと形態は不規則である。

VFは心停止状態にある患者の約70%でみられる調律であり,したがって多くの疾患における最終的な事象である。全体的に,VFを呈する大半の患者は基礎心疾患を有する(典型的には虚血性心筋症であるが,肥大型心筋症拡張型心筋症不整脈源性右室心筋症,またはブルガダ症候群のこともある)。基礎疾患が検出されない患者は特発性VFがあるとみなされる。いずれの疾患でもVFのリスクは,電解質異常,アシドーシス,低酸素血症,虚血により上昇する。

乳児および小児では,心室細動はかなりまれであり,心停止の形態としては心静止の方がより多くみられる。

特発性心室細動

VFによる心停止から蘇生した患者では,典型的には心疾患,特に冠動脈疾患心筋症,およびチャネル病を検索する評価が行われる。包括的な心電図検査,画像検査,および誘発試験でそのような原因疾患が同定されない場合,その患者には特発性心室細動があるとみなされる。それらの患者の一部は未診断ないし未知の遺伝性疾患を有している可能性が高いと考えられている。その疾患は家族性である可能性があるため,家族に対して心イベント(例,失神,動悸)を検索する臨床的評価と心電図検査,運動負荷試験,心エコー検査などの限定的な検査を行うことが推奨される。遺伝学的検査の役割は明らかにされていない。治療は植込み型除細動器の使用である。

心室細動の治療

  • 除細動

  • 植込み型除細動器

心室細動の治療は除細動を含めた心肺蘇生術による。直ちに(3分以内)施行された除細動の成功率は,当初から極めて重度のポンプ不全がなければ,約95%である。そうでない場合,たとえ直ちに施行された除細動でも成功率はわずか30%であり,蘇生できた患者も大半が退院前にポンプ不全で死亡する。

可逆的または一過性の原因がみられないVF患者では,将来VFや突然死を起こすリスクが高い。このような患者の大半には植込み型除細動器が必要であり,その多くには,その後の心室頻拍およびVFの発生頻度を低下させるための抗不整脈薬の併用が必要である。

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