慢性腎盂腎炎

(慢性感染性尿細管間質性腎炎)

執筆者:Talha H. Imam, MD, University of Riverside School of Medicine
レビュー/改訂 2022年 11月 | 修正済み 2023年 6月
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慢性腎盂腎炎は,腎臓の持続的な化膿性感染症であり,ほぼ常に重大な解剖学的異常がある患者に発生する。症状はみられない場合もあれば,発熱,倦怠感,側腹部痛などがみられる場合もある。診断は尿検査,培養,および画像検査による。治療は抗菌薬投与と構造的異常の是正による。

尿路感染症[UTI]に関する序論も参照のこと。)

通常の機序は感染尿の腎盂への逆流である。原因としては,閉塞性尿路疾患やストルバイト結石などもあるが,最も頻度が高いのは膀胱尿管逆流症(VUR)である。

病理学的には,腎萎縮および腎杯形成異常に重複して腎実質の瘢痕が認められる。慢性腎盂腎炎は慢性腎臓病に進行する場合がある。慢性腎盂腎炎を有する患者では,菌血症の素因となっている可能性がある感染巣が残存している場合や,腎移植患者では尿路および移植腎に播種した感染巣が残存している場合がある。

黄色肉芽腫性腎盂腎炎(XPN)は,感染に対する異常な炎症反応とみられる,まれな亜型と考えられる。感染組織が黄色を呈するのは,巨細胞,脂質貪食マクロファージ,およびcholesterol cleftが存在するためである。腎臓は腫大し,腎周囲の線維化と隣接する後腹膜組織の癒着がよくみられる。この疾患は,ほぼ常に片側性であり,再発性UTIの病歴を有する中年女性に好発する。長期の尿路閉塞(通常は結石に起因する)および感染によりリスクが上昇する。最も頻度の高い起因菌は,Proteus mirabilisと大腸菌(Escherichia coli)である。

慢性腎盂腎炎の症状と徴候

症状と徴候はしばしば曖昧であり,一貫しない。一部の患者では,発熱,側腹部痛,腹痛,倦怠感,または食欲不振がみられる。黄色肉芽腫性腎盂腎炎では,一側性の腫瘤が通常触知できる。

慢性腎盂腎炎の診断

  • 尿検査および尿培養

  • 画像検査

慢性腎盂腎炎は,再発性尿路感染症および急性腎盂腎炎の既往がある患者で疑われる。しかしながら,膀胱尿管逆流症(VUR)を呈する小児を除き,大半の患者はこれらの病歴を有していない。ときに,画像検査で典型的所見が偶然見つかることで本疾患が疑われる。症状は曖昧で非特異的であるため,本疾患を示唆しないことがある。

尿検査および尿培養と通常は画像検査を施行する。尿沈渣は通常少ないが,腎上皮細胞,顆粒円柱,ときに白血球円柱が認められる。タンパク尿はほぼ常に認められ,VURが広範な腎障害を引き起こしている場合には,ネフローゼレベルにある可能性もある。両腎ともに罹患している場合は,有意な高窒素血症が生じる前に濃縮能の低下と高クロール性アシドーシスが認められることがある。尿培養は無菌または陽性の場合があり,通常はグラム陰性菌である。

最初に行う画像検査は通常,超音波検査,ヘリカルCT,または排泄性尿路造影である。画像検査での慢性腎盂腎炎(通常は逆流または閉塞を伴う)の特徴として,古典的には大きく,深い,分節性の粗い皮質の瘢痕が通常は1つまたは複数の腎杯に広がっている。最も頻度の高い部位は腎上極である。腎皮質が消失し,腎実質は菲薄化する。侵されていない腎組織は局所的に肥大し,分節性に腫大することがある。慢性の重度の逆流に起因する変化を反映して,尿管拡張がみられることもある。同様の変化が尿路結核でも起こりうる。

黄色肉芽腫性腎盂腎炎では,ほぼ常に尿培養でP. mirabilisまたは大腸菌の増殖がみられる。CTを施行し,結石またはその他の閉塞を検出する。画像検査では,腎周囲に様々な程度で拡張した無血管性腫瘤が認められる。ときに,悪性腫瘍(例,腎細胞癌)との鑑別のために生検が必要になる場合があるか,腎摘出の際に切除した組織で検査することが可能である。

慢性腎盂腎炎の予後

慢性腎盂腎炎の経過は非常に多様であるが,通常は極めて緩慢に進行する。大半の患者は発生後20年以上にわたり十分な腎機能を有する。急性腎盂腎炎の頻回の増悪は,コントロールされていても,通常は腎臓の構造および機能をさらに悪化させる。持続的な尿路閉塞は腎盂腎炎の素因であるか,腎盂腎炎を永続させ,腎盂内圧を上昇させ,腎を直接損傷する。

慢性腎盂腎炎の治療

  • 閉塞の是正

  • 長期にわたる抗菌薬療法

  • ときに腎摘出術,ときにその後の腎移植術

閉塞を解除できずに尿路感染症の再発を頻回に起こしている場合は,長期の抗菌薬療法(例,トリメトプリム/スルファメトキサゾール,トリメトプリム,フルオロキノロン系薬剤,ニトロフラントイン)が有用であり,無期限に必要になる場合もある。尿毒症または高血圧の合併は適切に治療しなければならない。

黄色肉芽腫性腎盂腎炎の場合,局所感染を制御するための抗菌薬を最初に投与し,続いて全ての関連組織とともに腎を一括摘出する。

腎移植を受ける慢性腎盂腎炎患者では,移植の前に腎摘出術が必要になる場合がある。

要点

  • 慢性腎盂腎炎は通常は腎盂への尿逆流の素因(例,VUR,閉塞性尿路疾患,ストルバイト結石に起因)を有する患者が罹患する。

  • 患者が再発性急性腎盂腎炎を有する場合は慢性腎盂腎炎を疑うが,しばしば診断は画像検査での偶然の所見に基づいて最初に疑われる。

  • 画像検査を施行する(超音波検査,ヘリカルCT,または排泄性尿路造影)。

  • 閉塞を軽減できない場合は,抗菌薬による長期予防療法を考慮する。

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