胆嚢および胆管腫瘍は,肝外胆道閉塞を引き起こすことがある。症状がない場合もあるが,全身症状や胆道閉塞を反映した症状を来すことも多い。診断は超音波検査とCT胆道造影または磁気共鳴胆道膵管造影に基づく。予後は極めて不良である。機械的な胆汁ドレナージにより,そう痒,繰り返す敗血症,および胆道閉塞による疼痛をしばしば緩和できる。
(胆道機能の概要も参照のこと。)
胆管癌およびその他の胆管腫瘍はまれであるが(10万人当たり1~2人),通常悪性である(1)。胆管癌のほとんどは肝外胆管に発生し,60~70%は肝門部周囲(Klatskin腫瘍)に,約25%は遠位肝外胆管に,残りは肝臓内に発生する。確立されている危険因子として,原発性硬化性胆管炎,高齢,肝吸虫の寄生,総胆管嚢腫などがある。
胆嚢癌はまれである(10万人当たり2.5人)。アメリカンインディアン,大きな胆石(3cm以上)のある患者,慢性胆嚢炎により胆嚢に広範な石灰化(磁器様胆嚢)を来した患者で,より多くみられる。ほぼ全ての患者(70~90%)では胆石もみられる。生存期間の中央値は3カ月である。がんが早期に発見された場合(例,胆嚢摘出術で偶然発見)は,治癒の可能性がある。
胆嚢ポリープは,胆嚢腔に発生した良性の粘膜組織の突起物であり,通常は症状を引き起なさい。大半は直径10mm未満で,コレステロールエステルとトリグリセリドから構成され,このようなポリープが存在する状態をコレステロール沈着症と呼んでいる。胆嚢ポリープは超音波検査時に約5%の人で認められる。その他の極めてまれな良性ポリープには,腺腫(腺筋腫症を引き起こす)および炎症性ポリープがある。10mm未満の胆嚢ポリープがある患者は,危険因子とポリープの大きさに応じて6~12カ月毎の頻度で超音波検査によるサーベイランスを受けるべきである。直径6~9mmのポリープの一部には,ときに胆嚢摘出術が推奨される。ただし,直径が10mm以上の場合は,常に手術を考慮すべきである。
総論の参考文献
1.Banales JM, Cardinale V, Carpino G, et al: Expert consensus document: Cholangiocarcinoma: current knowledge and future perspectives consensus statement from the European Network for the Study of Cholangiocarcinoma (ENS-CCA).Nat Rev Gastroenterol Hepatol 13(5):261-280, 2016. doi: 10.1038/nrgastro.2016.51
胆嚢および胆管の腫瘍の症状と徴候
胆管癌患者の大半は,典型的には50~70歳で,そう痒と無痛の閉塞性黄疸がみられる。早期の肝門部周囲の腫瘍では,漠然とした腹痛,食欲不振,および体重減少のみを引き起こすこともある。その他の特徴としては,疲労,灰白色便,触知可能な腫瘤,肝腫大,または胆嚢の拡張(遠位部の胆管癌に伴うCourvoisier徴候)がある。疼痛は胆道仙痛と類似する場合(胆道閉塞を反映)もあれば,持続性かつ進行性の場合もある。まれではあるが,内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)が原因で敗血症(急性胆管炎に続発する)が発生することがある。
胆嚢癌患者の臨床像は,胆石症による胆道痛を緩和するために施行された胆嚢摘出術で偶然発見されるものから,持続性の疼痛,体重減少,腹部腫瘤,閉塞性黄疸などを伴う進行例まで多岐にわたる。
大半の胆嚢ポリープは症状を引き起こさない。
胆嚢および胆管の腫瘍の診断
超音波検査(ときに超音波内視鏡検査)とそれに続く磁気共鳴胆道膵管造影(MRCP)またはCT胆道造影
ときに内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)
肝外胆道閉塞の原因を説明できない場合は,胆管癌と胆嚢癌を疑う。臨床検査結果は胆汁うっ滞の程度を反映する。原発性硬化性胆管炎の患者では,血清中のがん胎児性抗原(CEA)および糖鎖抗原(CA 19-9)を定期的に測定して,胆管癌のモニタリングを行う。
診断は超音波検査(ときに超音波内視鏡検査)と,通常はその後に施行するMRCPに基づく(肝臓および胆嚢の画像検査を参照)。ときにCTが施行されるが,超音波検査を超える情報,特に胆嚢癌に関する情報が得られることがある。これらの方法で結論が得られない場合と胆管癌が疑われる場合は,ERCPが必要になる。ERCPは,腫瘍を検出するだけでなく,擦過細胞診により組織診断情報を提供でき,これにより超音波またはCTガイド下での針生検が不要となる場合もある。病期分類には造影CTが有用である。
病巣の進展範囲を特定して治療方針の参考とするには,開腹が必要である。
胆嚢および胆管の腫瘍の治療
胆管癌には,ステント留置術(またはその他のバイパス術)またはときに切除
胆嚢癌には,通常は対症療法
胆管癌では,閉塞部位へのステント留置術または外科的バイパス形成術により,そう痒,黄疸,おそらく疲労が緩和される。
CTで浸潤所見が確認された肝門部胆管癌には,経皮経肝胆道造影または内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)によりステントを挿入する。遠位胆管の胆管癌にはERCPにより内視鏡的にステントを留置する。胆管癌が限局性のようであれば,外科的検索により肝門部切除または膵頭十二指腸切除術による切除可能性を判定する。
限局性の肝門部胆管癌に対する肝移植は,United Network for Organ Sharing(UNOS)によって承認された特定のプロトコルの一部として,一部の移植センターで実施可能である。
胆嚢癌は多くの場合,対症的に治療する。
要点
胆道癌(通常は胆管癌または胆嚢癌)はまれである。
原因不明の肝外胆道閉塞または腹部腫瘤がみられる場合は,がんを疑う。
がんの診断は画像検査により行い,超音波検査から始め,続いてMRCPを施行する。
癌の治療は対症的(例,胆管癌による閉塞に対するステント留置術またはバイパス術)に行うが,ときに切除の適応となる。
肝門部胆管癌のある患者の一部では,肝移植を考慮する。