IgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)は,原発性硬化性胆管炎と同様の症状を引き起こす,まれな胆管疾患である。IgG4-SCは胆管炎と膵炎で発症することがある。診断には胆道造影での異常所見,血清IgG4値の上昇,および組織学的所見が必要である。コルチコステロイドによる治療で劇的かつ持続的な寛解が得られる。
(胆道機能の概要も参照のこと。)
IgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)は,肝内および肝外胆管へのIgG4優位の上皮下リンパ形質細胞浸潤によって引き起こされる胆道狭窄疾患である。
IgG4-SCは臨床的に原発性硬化性胆管炎(PSC)と大きく異なる。免疫を介した線維炎症性の疾患群であるIgG4関連疾患が肝臓で顕在化したものである。IgG4-SCは,まれな疾患で,主に50歳代と60歳代の男性にみられる。IgG4-SC患者の70%以上は自己免疫性膵炎(AIP)を合併する(1)。AIPと無関係なIgG4-SCの病型は比較的頻度が低い。
総論の参考文献
1.Umehara H, Okazaki K, Masaki Y, et al: A novel clinical entity, IgG4-related disease (IgG4RD): General concept and details.Mod Rheumatol 22(1):1-14, 2012. doi: 10.1007/s10165-011-0508-6
IgG4-SCの症状と徴候
臨床像は原発性硬化性胆管炎または胆管癌のそれに類似し,症状としては黄疸,体重減少,腹痛などがみられる。
IgG4-SCの診断
胆道造影
IgG4値
組織学的検査
膵炎と胆管障害を併発している患者では特にIgG4-SCを考慮すべきである。IgG4-SCは他の形態の硬化性胆管炎とは治療法が異なり,予後が良好であることから,IgG4-SCを他の硬化性胆管炎と正確に鑑別することが極めて重要である。診断には,非定型的な胆道造影所見,IgG4値の上昇(全例ではないが大半の患者でみられる),および代表的な組織学的特徴を認める必要があり,そのような組織学的特徴としては,肝内および肝外胆管壁のIgG4陽性形質細胞に富んだびまん性のリンパ形質細胞浸潤や,花筵状(「cartwheel」)線維化,胆管上皮層の保持などがある。特に高齢患者では,IgG4-SCが肝胆道系の悪性腫瘍と誤診される可能性がある。
IgG4-SCの治療
コルチコステロイド
IgG4関連硬化性胆管炎の治療は,コルチコステロイド(プレドニゾン単剤療法)が中心となる。目標は完全寛解の誘導である。高用量での治療により,生化学検査所見および症状の速やかな改善と血清IgG4値の低下が得られ,しばしば胆道ステント留置を回避することができる。コルチコステロイド(プレドニゾン)単剤療法で完全寛解を達成できるが,大半の患者で維持療法が必要であり,再発率は50%に達する(1)。コルチコステロイド療法が不成功に終わった患者では,リツキシマブも効果的な治療である。
治療に関する参考文献
1.Sandanayake NS, Church NI, Chapman MH, et al: Presentation and management of post-treatment relapse in autoimmune pancreatitis/immunoglobulin G4-associated cholangitis.Clin Gastroenterol Hepatol 7(10):1089-1096. doi: 10.1016/j.cgh.2009.03.021
要点
IgG-SCは,PSCとは明確に異なる,固有の胆管疾患である。
膵炎と胆管障害の両方がみられる患者では特にIgG-SCを疑うこと。
診断には胆道造影での異常所見,血清IgG4値の上昇,および組織学的所見が必要である。
コルチコステロイドによる治療で劇的かつ持続的な寛解が得られる。