非びらん性胃炎とは,主にHelicobacter pylori感染症の結果として生じる様々な組織学的異常を指す用語である。大半の患者は無症状である。診断は内視鏡検査による。治療はH. pylori除菌のほか,ときに胃酸分泌抑制である。
非びらん性胃炎の病理
表在性胃炎
主な浸潤炎症細胞は,リンパ球および形質細胞と好中球の混在である。炎症は表在性で,前庭部,胃体部,またはその両方が侵される。通常,萎縮または化生を伴わない。
有病率は年齢とともに上昇する。
深在性胃炎
深在性胃炎は症候性である可能性が高い(例,漠然としたディスペプシア)。
単核球および好中球は筋層までの粘膜全体に浸潤するが,そのような浸潤で予測されるような滲出液または陰窩膿瘍はめったにもたらされない。斑状に分布することがある。
表在性胃炎が存在することがあり,部分的な腺萎縮および化生が存在することもある。
胃粘膜萎縮
胃腺の萎縮が胃炎に続いて起こることがあり,ほとんどの場合,長期の前庭部胃炎(ときにB型胃炎と呼ばれる)に続発する。胃粘膜萎縮がみられる患者の一部では,壁細胞に対する自己抗体が認められ,通常は胃体部胃炎(A型胃炎)や悪性貧血と関連する。
萎縮は特異的な症状を伴わずに起こることがある。内視鏡検査では,萎縮が進行して粘膜下の血管分布が視認できるようになるまで,粘膜は正常な外見を呈することがある。萎縮が最終段階に達するとともに,胃酸およびペプシンの分泌が減少し,また,内因子が欠乏することがあり,その結果としてビタミンB12の吸収不良が起こる。
化生
慢性非びらん性胃炎では,以下の2種類の化生がよくみられる:
粘液腺化生
腸上皮化生
粘液腺化生(偽幽門腺化生)は胃腺の重度萎縮に伴って起こり,胃腺が粘液腺(前庭部粘膜)に進行性に置換され,特に小弯に沿って認められる。胃潰瘍が認められることがあるが(典型的には,前庭部粘膜と胃体部粘膜の接合部),それがこれらの化生変化の原因または結果であるのかは不明である。
腸上皮化生は,典型的には慢性粘膜傷害に反応して前庭部から始まり,胃体部にまで及ぶことがある。胃粘膜細胞は変化して腸管粘膜に類似し,杯細胞,内分泌(腸クロム親和性または腸クロム親和性細胞様)細胞,および痕跡絨毛を伴い,場合によっては,機能的特徴(吸収性)も有することがある。
腸上皮化生は,組織学的に,完全型(最も多い)または不完全型に分類される。完全型化生では,胃粘膜は,組織学的および機能的に完全に小腸粘膜に形質転換し,栄養吸収能力およびペプチド分泌能力を有する。不完全型化生では,上皮は大腸の組織学的所見に近い所見を呈し,高頻度に異形成を示す。腸上皮化生は胃癌の発生につながる可能性がある。
非びらん性胃炎の症状と徴候
H. pylori関連胃炎患者の大半は無症状であるが,患者によっては軽度のディスペプシアや,その他の漠然とした症状を呈する場合もある。
非びらん性胃炎の診断
内視鏡検査
この病態は他の目的で行われた内視鏡検査で発見されることが多い。無症状の患者に対する検査は適応ではない。胃炎が同定された場合は,H. pylori検査の施行が適切である。
非びらん性胃炎の治療
H. pylori の除菌
ときに胃酸分泌抑制薬
慢性非びらん性胃炎の治療は,H. pyloriの除菌による。H. pylori関連の表在性胃炎の有病率が高いこと,および臨床的続発症(すなわち,消化性潰瘍)の発生率が比較的低いことから,無症状患者の治療については多少の議論がある。しかしながら,H. pyloriはグループ1の発がん因子であり(1),除菌によってがんリスクが減少する。
H. pylori陰性患者の治療は対症的に行い,胃酸分泌抑制薬(例,H2受容体拮抗薬,プロトンポンプ阻害薬)または制酸薬を使用する。
治療に関する参考文献
1.American Cancer Society: Known and probable human carcinogens.2022.Accessed 1/20/22.