腸リンパ管拡張症は,小腸の粘膜内リンパ管の閉塞または形成異常を特徴とするまれな疾患である。主に小児および若年成人が罹患する。症状としては,吸収不良の症状などがみられ,浮腫および発育遅滞を伴う。診断は小腸生検による。治療は通常,支持療法である。
腸リンパ管拡張症は吸収不良を引き起こす疾患である。
リンパ系の形成異常は,先天性の場合と後天性の場合がある。
先天性の症例は通常小児(典型的には3歳以前に診断)にみられ,まれに青年または若年成人に発生する。男性と女性の罹患率は同程度である。
後天性の症例では,後腹膜線維症,収縮性心膜炎,膵炎,腫瘍,またはリンパ管閉塞につながる浸潤性疾患に続いて異常が生じる。
リンパ流出障害によって,圧上昇および腸管内腔へのリンパ液漏出が起こる。カイロミクロンおよびリポタンパク質の吸収障害の結果として脂肪およびタンパク質の吸収不良を来す。炭水化物はリンパ系を介して吸収されないため,取り込みは障害されない。
腸リンパ管拡張症の症状と徴候
腸リンパ管拡張症の早期症状としては,広範でしばしば非対称性の末梢浮腫,間欠的な下痢,悪心,嘔吐,腹痛などがある。軽度から中等度の脂肪便(悪臭を放つ蒼白で体積の大きい脂ぎった便)を認める患者もいる。乳び胸水(乳び胸)および乳び腹水を認めることがある。
10歳未満で発症した場合には,発育が遅滞する。
腸リンパ管拡張症の診断
小腸内視鏡下生検
ときにリンパ管造影
腸リンパ管拡張症の診断には通常は小腸内視鏡下生検が必要であり,そこでは絨毛先端部に粘膜および粘膜下リンパ管の著明な拡張が認められる。
代替法として,リンパ管造影(足のリンパ管より造影剤を注入)により腸リンパ管の異常を示すことができる。
臨床検査値異常として,リンパ球減少および血清アルブミン,コレステロール,IgA,IgM,IgG,トランスフェリン,セルロプラスミン低値がある。
バリウム検査では,肥厚した結節性の粘膜ヒダが示されることがあり,積み重ねたコインのように見える。D-キシロースの吸収は正常である。腸管でのタンパク質喪失は,クロム51標識アルブミンを用いて示すことができる。
腸リンパ管拡張症の治療
支持療法
ときに外科的切除または修復
リンパ管の異常は是正することができない。腸リンパ管拡張症の支持療法として,中鎖脂肪酸トリグリセリドのサプリメントを含む低脂肪(30g/日未満)高タンパク質食がある。カルシウムおよび脂溶性ビタミンを補給する。
腸切除術または異常リンパ管を静脈に吻合する手術が有益となりうる。
胸水は胸腔穿刺により排出すべきである。