熱帯性スプルーは,吸収不良と巨赤芽球性貧血を特徴とするまれな後天性疾患であり,その病因はおそらく感染と考えられている。診断は臨床所見と小腸生検による。治療はテトラサイクリンと葉酸の6カ月間の投与である。
熱帯性スプルーは吸収不良症候群である。
熱帯性スプルーの病因
熱帯性スプルーの症状と徴候
熱帯性スプルーの診断
小腸生検と内視鏡検査
吸収不良がもたらす結果をスクリーニングするための血液検査
熱帯性スプルーが風土病である地域の住民またはそれらの地域に滞在したことがある個人で,巨赤芽球性貧血および吸収不良の症状が認められる場合は,熱帯性スプルーが疑われる。
第1選択の検査は,上部消化管内視鏡検査と小腸生検である。特徴的な組織学的変化(特定の吸収不良疾患における小腸粘膜の組織学的所見の表を参照)は,通常,全小腸に起こり,上皮および粘膜固有層の慢性炎症細胞浸潤を伴う絨毛鈍化が認められる。セリアック病と寄生虫感染症を除外しなければならない。セリアック病の場合とは異なり,熱帯性スプルーの患者では,抗組織トランスグルタミナーゼ抗体(tTG)と抗筋内膜抗体(EMA)は陰性である。
追加の臨床検査(例,血算,アルブミン,カルシウム,プロトロンビン時間,鉄,葉酸,ビタミンB12)は,栄養状態の評価に役立つ。バリウムによる経口小腸造影では,バリウムの分節化,内腔の拡張,粘膜ヒダの肥厚を認めることがある。D-キシロースの吸収異常が90%以上の症例で認められる。しかしながら,これらの検査は特異的でなく,熱帯性スプルーの診断に必須というわけでもない。
熱帯性スプルーの治療
長期のテトラサイクリン
熱帯性スプルーの治療として,テトラサイクリンを250mg,経口,1日4回で1または2カ月間投与した後,1日3回で重症度と治療効果に応じて最長6カ月間投与する。テトラサイクリンの代わりに,ドキシサイクリンを100mg,経口,1日2回で投与することもできる。
最初の1カ月間は,葉酸を5~10mg,経口,1日1回で投与するとともに,ビタミンB12を1mg,筋注,週1回で数週間投与するべきである。巨赤芽球性貧血は速やかに軽快し,劇的な臨床反応が認められる。
他の栄養素を必要に応じて補給する。
再発は20%の患者で起こる。4週間の治療後に反応が認められない場合は,別の疾患が示唆される。