炎症性腸疾患(IBD)には,いくつかのクラスの薬剤が役立つ。これらの選択および使用の詳細については,各疾患の項目で述べる(クローン病の治療および潰瘍性大腸炎の治療を参照)。
(炎症性腸疾患の概要も参照のこと。)
メサラジン(5-ASA,アミノサリチル酸)
5-ASAはプロスタグランジンおよびロイコトリエンの産生を阻害するほか,炎症カスケードに対して有益な効果をもたらす。5-ASAは腸管内でのみ活性を示し,上部小腸で急速に吸収されるため,経口剤は吸収が遅延するように製剤化する必要がある。
このクラスの最初の薬剤であるサラゾスルファピリジンは,サルファ成分のスルファピリジンを5-ASAに結合させることで,吸収を遅延させている。この化合物は,下部回腸および結腸の腸内細菌叢によって分解され,5-ASAを放出する。しかしながら,サルファ成分は数多くの有害反応(例,悪心,ディスペプシア,頭痛)を引き起こし,葉酸(葉酸塩)の吸収に干渉し,また,ときに重篤な有害反応(例,溶血性貧血または無顆粒球症,まれに肝炎,肺炎,または心筋炎)をもたらす。男性の最大80%で,精子数および精子運動性に可逆的な低下が生じる。サラゾスルファピリジンを使用する場合は,食後に服用させ,最初は低用量(例,0.5g,経口,1日2回)で投与し,数日かけて1~1.5g,1日4回まで徐々に用量と投与回数を増やすべきである。葉酸サプリメント(1mg,経口)を連日投与し,血算および肝機能検査を6~12カ月毎に行うべきである。メサラジン投与に続発する急性間質性腎炎がまれに起こるが,早期に認識されれば大半の症例が可逆的であるため,腎機能の定期的なモニタリングが望ましい。
5-ASAと他の基剤を結合させた薬剤は,有効性はほぼ同等とみられるが,有害作用がより少なくなっている。オルサラジン(olsalazine)(5-ASAの二量体)およびバルサラジド(balsalazide)(5-ASAを不活性化合物に抱合)は,細菌のアゾ還元酵素によって分解される(サラゾスルファピリジンと同様)。これらの薬剤は主に結腸内で活性化され,近位小腸の病変に対する有効性は低い。錠剤のバルサラジド(balsalazide)の女性患者における有効性は臨床研究では示されていない。オルサラジン(olsalazine)は,ときに下痢を引き起こし,特に全大腸炎の患者で認められる。この問題は用量の漸増および食事との同時投与によって最小限に抑えられる。
他の剤形の5-ASAには,遠位回腸および結腸に入るまで薬物の放出を遅らせるために,腸溶コーティングや徐放性コーティングが用いられている。腸溶性製剤と徐放性製剤を組み合わせて1日1回投与してもよく,投与回数を減らすことで,服用に対する患者のアドヒアランスが改善する可能性がある。これらの5-ASA製剤の治療効果は全て概ね同等である。
直腸炎型および左側大腸炎型には,5-ASAは坐薬または浣腸でも利用できる。これらの直腸内投与製剤は,直腸炎および直腸S状結腸炎に対する急性治療と長期間の維持療法の両方で効果的であり,経口5-ASAとの併用により効果が増加する。直腸の刺激感のために浣腸に耐えられない患者には,5-ASAのフォーム製剤を投与すべきである。
コルチコステロイド
大半の病型のIBDの急性増悪(flare-up)に対して5-ASA化合物では不十分である場合には,コルチコステロイド(高用量で開始する)が有用である。しかしながら,コルチコステロイドは維持療法としては不適切である。
重症例には静注ヒドロコルチゾンまたはメチルプレドニゾロンを使用する;中等例および重症例には経口プレドニゾンまたはプレドニゾロンを使用してもよい。治療は症状が寛解するまで(通常は7~28日間)継続した後,1週間毎に20mg,1日1回まで漸減していく。その後はさらに,臨床効果に応じて用量を1週間に2.5~5mgずつ漸減するとともに,5-ASAまたは免疫調節薬による維持療法を開始する。短期間のコルチコステロイド大量投与の有害作用としては,高血糖,高血圧,不眠症,多動,急性の精神病エピソードなどがある。
直腸炎型および左側大腸炎型にはヒドロコルチゾンの浣腸またはフォーム製剤【訳注:日本では使用されず,代わりにプレドニゾロンまたはベタメタゾンの注腸剤が使用される】を使用することができ,浣腸液の場合は1日1回または1日2回投与する。浣腸はできるだけ長時間腸内に留めるべきであり,患者に左側臥位をとらせ,股関節部を挙上した状態で,夜間に滴下注入することにより,保留時間が延長して分布が拡大する可能性がある。治療が効果的ならば,約2~4週間は毎日,その後1~2週間は隔日で継続し,それから徐々に1~2週間かけて中止すべきである。
ブデソニドは肝初回通過効果が大きい(90%超)コルチコステロイドであることから,経口投与により消化管疾患に有意な作用をもたらしうる一方,副腎抑制は最小限に抑えられる。経口ブデソニドはプレドニゾロンと比較して有害作用が少ないが,効果はそれほど迅速でなく,典型的には重症度の低い疾患に用いられる。ブデソニドは寛解を8週間維持する上で効果的となることがあるが,長期維持に効果的であるとはまだ証明されていない。この薬剤は小腸クローン病に対して利用可能であるほか,潰瘍性大腸炎用としては腸溶性製剤が入手できる。また,米国以外では浣腸として利用可能である。
コルチコステロイド(ブデソニドなど)を開始した患者には,全例でビタミンD(400~800単位/1日)とカルシウム(1200mg/1日)を経口投与するべきである。肝硬変などの慢性肝疾患を有する患者では,生物学的利用能や臨床効果が増強される可能性があるため,コルチコステロイドは慎重に使用すべきである。
免疫調節薬
代謝拮抗薬のアザチオプリン,6-メルカプトプリン,およびメトトレキサートも,生物学的製剤との併用療法に用いられる。
アザチオプリンおよび6-メルカプトプリン
アザチオプリンとその代謝物である6-メルカプトプリンは,T細胞の機能を阻害するほか,T細胞のアポトーシスを誘導する可能性がある。これらは長期にわたり効果を示すため,コルチコステロイドの必要性を減少させ,寛解を多年にわたり維持する可能性がある。これらの薬剤は,しばしば臨床的な効果を示すまでに1~3カ月を要するため,コルチコステロイドは少なくとも2カ月目まで完全に中止はできない。用量は個々人の代謝に応じて異なる。中活性型(intermediate metabolizer)の患者におけるアザチオプリンまたは6-メルカプトプリンの用量は,50%減量するとともに,臨床反応と血液学的なモニタリングの結果に基づいて調節すべきである。
最も頻度の高い有害作用は,悪心,嘔吐,および倦怠感である。定期的に白血球数を測定して骨髄抑制の徴候をモニタリングしなければならない(1カ月間は隔週,その後は1~2カ月毎)。約3~5%の患者で膵炎または高熱が起こり,いずれの場合も再投与は絶対的禁忌である。肝毒性はよりまれで,6~12カ月毎の血液検査でスクリーニングが可能である。これらの薬剤は,リンパ腫および非黒色腫皮膚がんのリスク増加と関連している。
これらの薬剤を開始する前に,チオプリンメチルトランスフェラーゼ(TPMT)(アザチオプリンや6-メルカプトプリンをその活性代謝物である6-チオグアニン[6‐TG]や6‐メチルメルカプトプリン[6‐MMP]に変換する酵素)の活性を測定する検査を受けさせるべきである。この酵素の既知の低活性バリアントに関する遺伝子型検査も受けさせるべきである。これらの薬剤を開始した後は,安全の確保と効果的な用量の決定のために,6‐TGおよび6‐MMPの濃度を測定することが有用である。治療の効力は,赤血球8 × 108個当たり230~450ピコモルの範囲で6‐TG濃度に相関する。6‐TG濃度が450ピコモルを超えると,骨髄毒性が生じる可能性がある。6‐MMP濃度が赤血球8 × 108個当たり5700ピコモルを超えると,肝毒性が生じる可能性がある。反応が得られない患者については,治療に対する抵抗性とアドヒアランス不良を鑑別する上で,代謝物濃度の測定も有用となる。
メトトレキサート
メトトレキサートの投与は,ステロイド抵抗性またはステロイド依存性のクローン病患者の多くに,さらにはアザチオプリンや6-メルカプトプリンに反応しなかった患者にも有益である。
有害作用には悪心,嘔吐,および無症候性の肝機能検査値異常がある。一部の有害作用は葉酸1mg,経口,1日1回の投与で消失することがある。メトトレキサートを使用している患者は男女ともに,女性パートナーが子宮内避妊器具,避妊用インプラント,経口避妊薬などの効果的な避妊法を確実に用いるようにするべきである。コンドーム,殺精子剤,ペッサリー,子宮頸管キャップ,周期的な禁欲など,効果の低い避妊法を用いないよう指導すべきである。さらに,女性およびおそらく男性も,妊娠を試みる場合はその前に少なくとも3カ月間はメトトレキサートを中止すべきである。治療開始後3カ月間は,月1回の血算およびアルブミンを含む肝機能検査を行い,その後,治療期間中は8~12週毎に行う。飲酒,B型肝炎,C型肝炎,肥満,および糖尿病が肝毒性の危険因子であり,乾癬もその可能性がある。できれば,これらの病態を有する患者には,メトトレキサートによる治療を行うべきではない。治療前の肝生検は推奨されず,1年間に実施した12回の検査のうち6回でアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)値の上昇がみられた場合に肝生検を行う。メトトレキサート治療により,骨髄抑制,肺毒性,および腎毒性が起こることもある。
シクロスポリンおよびタクロリムス
コルチコステロイドおよび生物学的製剤に反応せず,結腸切除が必要な可能性がある重症潰瘍性大腸炎患者には,リンパ球の活性化を阻害するシクロスポリンが有益となる可能性がある。クローン病に対する同薬剤の使用の詳細な記述は,難治性の瘻孔または膿皮症患者に関するもののみである。長期使用(6カ月以上)は,複数の有害作用(例,腎毒性,痙攣発作,日和見感染症,高血圧,神経障害)により禁忌である。一般に,コルチコステロイドおよび生物学的製剤に反応しない重症潰瘍性大腸炎患者には,より安全な根治的選択肢である結腸切除術を避ける理由がない限り,シクロスポリンは投与しない。これらの薬剤を使用する場合は,血中トラフ濃度を200~400ng/mL(166~333nmol/L)に維持すべきであり,コルチコステロイド,シクロスポリン,および代謝拮抗薬の併用投与中にはPneumocystis jirovecii感染症の予防を考慮すべきである。
移植患者にも使用される免疫抑制薬のタクロリムスは,シクロスポリンと同等に効果的とみられ,入院を必要としない重症または難治性の潰瘍性大腸炎患者への使用を考慮してもよい。血中トラフ濃度を10~15ng/mL(12~25nmol/L)に維持すべきである。タクロリムスは,クローン病における肛門周囲瘻孔および皮膚瘻孔の短期治療として投与できる。
生物学的製剤
TNF阻害薬
インフリキシマブ,セルトリズマブ,アダリムマブ,およびゴリムマブは,腫瘍壊死因子(TNF)に対する抗体である。インフリキシマブ,セルトリズマブ,およびアダリムマブは,クローン病に有用であり,特に術後再発の予防または遅延に対して有用性が高い。インフリキシマブ,アダリムマブ,およびゴリムマブは,難治性またはステロイド依存性の潰瘍性大腸炎に対して有益である。前述のTNF阻害薬のいずれかに耐えられない患者と当初反応するも効果がみられなくなった患者は,別のTNF阻害薬に反応する可能性がある。
インフリキシマブは,クローン病と潰瘍性大腸炎に対して有用であり,5mg/kgを2時間の持続静注により投与する。続いて2週目および6週目に再度投与する。その後は8週毎に投与する。大部分ではないとしても多くの患者では,寛解を維持するために,1年あまりのうちに用量を増やすか,投与間隔を短くする必要がある。許容される治療域の血清中濃度は5μg/mL超である。
アダリムマブは,クローン病と潰瘍性大腸炎に対して有用である。負荷量として160mgを皮下投与した後,2週目に80mgを皮下投与する。その後は2週毎に40mgを皮下投与する。許容される治療域の血清中濃度は7.5μg/mL超である。
セルトリズマブは,クローン病に対して有用である。400mgを2週毎に3回皮下投与した後,維持療法として4週毎の投与を継続する。許容される治療域の血清中濃度は20μg/mL超である。
ゴリムマブは,潰瘍性大腸炎患者に有益である。負荷量として200mgを皮下投与した後,2週目に100mgを皮下投与する。その後は4週毎に100mgを皮下投与する。
TNF阻害薬による単剤療法は寛解導入と寛解維持のいずれにも明らかに効果的であるが,TNF阻害薬をチオプリン系薬剤(例,アザチオプリン)またはメトトレキサートとの併用で開始した方がより良好な結果が得られることを示唆する研究もある。しかしながら,併用療法に伴い有害作用が増加する可能性を考えると,治療に関する推奨は個別化するべきである。コルチコステロイドの漸減を2週間後に開始してもよい。輸注時に生じる有害作用(輸注反応[infusion reaction])として,即時型過敏反応(例,発疹,そう痒,ときにアナフィラキシー様反応),発熱,悪寒,頭痛,悪心がある。遅延型過敏反応も発生している。皮下投与するTNF阻害薬(例,アダリムマブ)は輸注反応を引き起こさないが,局所の紅斑,疼痛,およびそう痒(注射部位反応)を惹起する可能性はある。
TNF阻害薬の使用後に患者数名が敗血症で死亡していることから,これらの薬剤はコントロール不良の細菌感染が存在する場合は禁忌である。また,TNF阻害薬に起因するとされた結核およびB型肝炎の再活性化が報告されており,したがって,治療開始前に潜在性結核のスクリーニング(ツベルクリン検査および/またはインターフェロンγ遊離試験による)とB型肝炎のスクリーニングを行う必要がある。水痘に対する免疫を確認することが推奨される。一部の医師はエプスタイン-バーウイルス(EBV)およびサイトメガロウイルス(CMV)の血清学的検査も推奨している。
TNF阻害薬による治療では,ほかにもリンパ腫やその他のがん(例,非黒色腫皮膚がん),脱髄疾患(例,多発性硬化症,視神経炎),心不全,肝毒性,および血液毒性が懸念される。
その他の生物学的製剤
いくつかの免疫抑制作用をもつインターロイキンと抗インターロイキン抗体も炎症反応を軽減する可能性があり,クローン病を対象として研究されている。
ベドリズマブおよびナタリズマブは,白血球接着分子に対する抗体である。ベドリズマブは,中等症から重症の潰瘍性大腸炎およびクローン病を対象として利用可能である。ベドリズマブ静注の推奨用量は300mgであり,これを0週目,2週目,6週目とその後8週毎に投与する。その作用は腸管に限局すると考えられているため,クローン病の最難治例を対象とする限定処方プログラムで二次治療の薬剤としてのみ使用されるナタリズマブよりも安全性が高い。ベドリズマブの許容される治療域の血清中濃度は20μg/mL超である。これらの薬剤は過敏反応を引き起こし,感染症のリスクを増大させる可能性がある。ナタリズマブについては,進行性多巣性白質脳症(PML)のリスクを高めるため,現在のところ使用制限プログラムでのみ利用可能である。ベドリズマブはナタリズマブと同じクラスの薬剤であるため,理論的にはPMLのリスクがある。
ウステキヌマブ(抗IL-12/23抗体)は,中等度から重度のクローン病または潰瘍性大腸炎の患者を対象として利用可能である。負荷量として体重に基づき < 55kgでは260mg,55~85kgでは390mg,> 85kgでは520mgを単回静注する。
負荷投与に続いて,維持量として90mgを8週毎に皮下投与する。
その他の抗サイトカイン抗体,抗インテグリン抗体,低分子薬,および成長因子製剤が現在研究段階にあり,活性化免疫細胞を枯渇させる白血球除去療法も研究されている。
リサンキズマブ(抗IL-23抗体)は,中等度から重度のクローン病の患者を対象として利用可能である。導入量として,0,4,8週目に600mgを静注する。維持量は12週目に180~360mgを皮下投与し,その後は8週毎とする。内視鏡的寛解を維持する最低用量の使用が推奨される。ベースライン時および寛解導入期中に肝機能検査を行うべきである。
バイオ後続品は先行バイオ医薬品と非常に類似した生物学的製剤である。TNF阻害薬のバイオ後続品が市販されている。
低分子薬
低分子薬とは分子量が1キロダルトン未満の薬剤である。その一部は現在,IBDの管理用として使用または開発されている。経口で投与され,モノクローナル抗体と関連する免疫原性はない。
トファシチニブは,ヤヌスキナーゼ(JAK)1~3を阻害する低分子薬であり,中等症から重症の潰瘍性大腸炎の成人患者を対象として利用可能である。即放性製剤の初回用量としては,10mgを1日2回,8週間以上経口投与した後,5~10mgを1日2回経口投与する。徐放性製剤の初回用量としては,22mgを1日1回,8週間以上経口投与した後,11mgを1日1回経口投与する。起こりうる有害作用としては,コレステロール高値,下痢,頭痛,帯状疱疹,血中クレアチンホスホキナーゼ高値,上咽頭炎,発疹,上気道感染症などがある。その他のまれな有害作用としては,がんや日和見感染症などがある。さらに,米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)は,関節リウマチ患者において致死的な肺塞栓症と死亡のリスクが高まることについて警告した。
ウパダシチニブは,ヤヌスキナーゼ1(JAK1)を選択的に阻害する低分子薬である。この薬剤はIL-6およびIFN-γ関連のシグナル伝達を阻害するため,ナチュラルキラー細胞の減少に対する影響がトファシチニブなど他の低分子薬と比較して少ない。導入量は潰瘍性大腸炎では45mg,1日1回,8週間,クローン病では45mg,1日1回,12週間である;維持量は潰瘍性大腸炎とクローン病ともに15mg,1日1回であり,難治例,重度例,および進展例では30mg1日1回まで漸増することができる。30mgの用量で寛解が得られない場合は,投薬を中止すべきである。最もよくみられる副作用は,尋常性ざ瘡,毛包炎,上気道感染症,過敏症,悪心,腹痛である。一般的に,副作用は他のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬(例,トファシチニブ)と同様である。
オザニモドは,スフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体調節薬であり,中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎の成人患者に対して使用されている。初回の用法・用量は,1~4日目に0.23mg,経口,1日1回,5~7日目に0.46mg,経口,1日1回である。維持量は0.92mg,経口,1日1回で,8日目から開始する。治療開始後最初の14日間で服用忘れがみられた場合は,0.23mg,経口,1日1回の漸増レジメンを再び開始すべきである。14日間の治療後に服用忘れがみられた場合は,推奨に従って治療を継続すべきである。オザニモドは,過去6カ月以内に心筋梗塞がみられた患者と不安定狭心症や心不全など他の心臓の問題がある患者では禁忌である。この薬剤は,以下の心伝導系障害を有する患者でも禁忌である:Mobitz II型第2度ブロック,第3度房室ブロック,洞不全症候群,または洞房ブロック(ペースメーカーが機能している場合を除く)。過去6カ月以内に脳卒中または一過性脳虚血発作を起こした患者では,オザニモドの使用は避けるべきである。オザニモドはまた,無治療かつ重症の睡眠時無呼吸症候群がある患者とモノアミン酸化酵素阻害薬を服用している患者でも使用を控えるべきである。オザニモドは感染リスクを増大させる,徐脈性不整脈を引き起こす,リンパ球数を減少させる,肝障害を引き起こすなどの可能性がある。オザニモドによる治療を開始する前に,心電図検査と水痘帯状疱疹ウイルス抗体検査を行うべきである。
抗菌薬およびプロバイオティクス
抗菌薬
抗菌薬はクローン病には役立つ場合があるが,中毒性大腸炎(toxic colitis)を除いて,潰瘍性大腸炎に対する使用には制限がある。メトロニダゾール500~750mg,経口,1日3回,4~8週間の投与により,軽症のクローン病をコントロールし,瘻孔の治癒を促進できることがある。しかしながら,有害作用(特に神経毒性)のため,しばしば治療を終了できない。シプロフロキサシン500~750mg,経口,1日2回の投与はより毒性が低い可能性がある。多くの専門家がメトロニダゾールとシプロフロキサシンの併用を推奨する。非吸収性抗菌薬であるリファキシミンの200mg,経口,1日3回または800mg,経口,1日2回での投与も,活動性のクローン病の治療として有益となりうる。
プロバイオティクス
様々な非病原性微生物(例,片利共生菌である大腸菌[Escherichia coli],Lactobacillus属,Saccharomyces属)の連日投与はプロバイオティクスとして機能し,回腸嚢炎の予防に効果的となりうるが,他の治療上の役割はまだ明確にはなっていない。ヘルパーT2細胞による免疫を刺激するために寄生虫の豚鞭虫(Trichuris suis)を寄生させる治療法が試みられており,潰瘍性大腸炎の疾患活動性を低下させる可能性がある。