糖尿病とはどのような病気ですか？
糖尿病は、血糖（ブドウ糖）値が高くなりすぎる病気です。
体が血糖を正常にコントロールする方法が正しく働かないと、糖尿病になります。
糖尿病には、1型と2型の2つの種類があります。
1型糖尿病の人はインスリンを投与しなければなりません（1型はインスリン依存性糖尿病と呼ばれることもあります）。
2型糖尿病の人の中にはインスリンを注射しなければならない人もいますが、多くの人は薬を飲み、食習慣を変えるだけですみます。
糖尿病を治せる治療法はありませんが、インスリンやその他の薬を使用したり、食習慣を変えることで管理できます。
血糖とは何ですか？
血糖とは：
体のおもなエネルギー源です。
血糖は、飲み物に入っている糖分や食べものに加える糖分からつくられるだけではありません。血糖は、次のようなあらゆる種類の食べものからつくられます：
パン
果物
パスタ
イモ類
これらのほかにも、炭水化物を含んでいる食べものがたくさんあります。体が炭水化物を血糖に変えます。
体はどのようにして血糖値を調節するのですか？
体は、血液から体の細胞にどのくらい糖分を取り込むかを調節するのに、次のものを使います：
インスリン
インスリンは膵臓でつくられるホルモンです。膵臓は腹部にある臓器で、胃の後ろ側にあります。
食事をすると、体は食べものを吸収し、血糖値が上がります。膵臓は血糖値が高くなったことを感じとり、インスリンを出し始めます。インスリンは体の細胞に血液から糖を取り込むよう伝えます。血糖値が正しい水準になると、膵臓はインスリンを出すのを止めます。
糖尿病の原因は何ですか？
糖尿病にはインスリンの問題が関係しています。
糖尿病には、おもに次の2種類があります：
1型糖尿病では、インスリンをつくる細胞が壊れていて、膵臓でインスリンをつくることができません。
2型糖尿病では、膵臓ではインスリンがたくさんつくられますが、体の細胞が本来あるべき形でインスリンに反応しません。
甘い食べものを食べても糖尿病にはなりません。ただ、食べすぎて体重がとても重くなると2型糖尿病になることがあります。
1型糖尿病はふつう30才までに発症しますが、よくみられるのは子どもや青年です。
2型糖尿病はどの年齢でも発症しますが、次のような人により多くみられます：
過体重か肥満の人
30才以上の人
特定の人種や民族の人（アメリカでは、黒人やアジア人、アメリカンインディアン、ヒスパニック系の人の方がそのほかの人よりも糖尿病になる率が高い）
2型糖尿病の家族がいる人
妊娠中に2型糖尿病になる女性もいます。これを妊娠糖尿病といいます。
糖尿病にはどのような症状がありますか？
1型糖尿病の症状は急に始まることがよくあります。次のような症状がみられることがあります：
尿が多くなる
とてものどが渇いて、たくさん飲む
お腹が痛くなる（特に子ども）
いつもよりたくさん食べてもまだ体重が減る
目がかすむ
眠かったり、胃が気持ち悪くなる
ときに、糖尿病性ケトアシドーシスという危険な問題が起こることがあります。この問題は急に始まって、子どもの糖尿病の最初のサインであることがあります。糖尿病性ケトアシドーシスになると、次のような症状がみられることがあります：
息が果物かつマニキュアの除光液のようなにおいがする
息が深くなって呼吸がとても速くなる
胃が気持ち悪くなって吐く
全身に力が入らず疲れた感じがする
2型糖尿病の症状はゆっくりと始まることがあります。何年も症状は現れないかもしれません。その場合、次のことに気づくことがあります：
尿の回数と量が多くなる
水を飲む量が増える
これらの症状は数週間から数カ月かけて悪化します。次のようなことも起こるかもしれません：
体中がだるくて疲れる
目がかすむ
脱水（体内の水分が十分でない状態）になる
糖尿病にはどのような合併症がありますか？
医師はどのようにして、私が糖尿病かどうかを判断しますか？
医師はあなたの血液を検査して次のことを調べます：
血糖値
ふつう、医師はあなたが何かを食べる前の朝一番に血糖値を測ります。これを空腹時血糖といいます。医師が空腹時血糖を測る必要があるのは、1日の残りの時間では食事量によって血糖値が上下するためです。
空腹時血糖値：
100未満ならば正常です
100～125の場合、糖尿病のリスクがあります
126以上だと、糖尿病です。
医師はこのほかに次の検査をすることがあります：
ヘモグロビンA1C
ヘモグロビンは、赤血球の中にある物質です。血液の中に酸素を運びます。血液の中の糖がヘモグロビンにくっついて、ヘモグロビンA1Cになります。
血糖値が高いほど、ヘモグロビンA1Cは多くなります。
ヘモグロビンA1Cは長く残るため、その量は血液中でゆっくり変化します。このため、ヘモグロビンA1Cの値から、医師は過去2～3カ月の血糖値が分かります。ヘモグロビンA1Cの値が6.5％以上であれば糖尿病です【訳注：日本の糖尿病の診断では血糖値の基準も満たす必要があります】。
医師は糖尿病をどのように治療しますか？
糖尿病を治せる治療法はありません。治療の目標は、血糖値を正常に近い水準に保つことです。
自分自身の血糖値を上手に調節するほど、合併症が起こる可能性が低くなります。
糖尿病の治療には次のようなものがあります：
適切な食事をする
運動する
太っている場合は体重を減らす
薬を飲む
定期的に血糖値をチェックする
あなたが糖尿病ならば、この病気についてできるだけたくさん学んでください。糖尿病指導にたずさわっている看護師に相談してください。看護師は、何を食べればよいか、体をどれくらい動かしたらよいか、血糖値をどのようにチェックするか、インスリンをどのように調整するか（必要な場合）などをあなたが理解することを助けてくれます。
何を食べればよいですか？
糖尿病では、体は血糖値の変化に反応できないため、次のことが大切です：
食事やおやつを、毎日大体同じ時間に食べる
毎日大体同じ量を食べる
毎回の食事で炭水化物（パンなど）と脂肪分の多い食べものの量を制限する
野菜や、ゆっくりと消化される炭水化物（たとえば果物や全粒穀物、繊維質の多い食品に含まれるようなもの）をもっとたくさん食べる
キャンディ、クッキー、ドーナッツ、ペストリーなどの加工食品を制限する
炭酸飲料、甘いアイスティー、レモネード、フルーツポンチ、スポーツドリンクなどの砂糖が入った飲みものは飲まないようにする
お酒は、女性の場合は1日に1ドリンク、男性の場合は1日に2ドリンクに制限する【訳注：「1ドリンク」とは、日本ではアルコール量で10g、アルコール度数5％のビールで250mL程度の量とされています】
どれくらい体を動かせばよいですか？
毎日、何か運動をするようにしましょう。
運動をすることで、健康な体重になったり、健康な体重を保ったり、血糖値を調節したりする助けになります。
どれくらい運動すればよいのかや、どのような運動が一番よいのかは、医師や看護師に相談してください。
運動すると血糖値が下がるため、長時間運動をする前には、おやつを食べたり、インスリン注射の量を減らす必要があります。
体重を減らした方がよいですか？
2型糖尿病の場合、太りすぎならば体重を減らそうとすることがとても大切です。
体重を減らすことが血糖値の調節に役立ちます
体重が十分に減れば、薬を飲む必要がなくなることもときどきあります。
1型糖尿病の場合、体重を減らしても血糖値コントロールの助けにはなりません。しかし、体重が重すぎることは誰にとっても健康なことではありません。
どうして自分の血糖値をチェックした方がよいのですか？
血糖値をチェックする必要があるのは、血糖値が次のようなことでいつも変わるからです：
何を食べるか
どのくらい体を動かすか
感じるストレスの強さ
感染しているかどうか
使っている薬
その日の時刻
血糖値が大きく変わったときは、食事や使っている薬を変える必要があるかもしれません。
医師は、いつ、何回ぐらい血糖値をチェックすればよいか教えてくれます。1型糖尿病の場合、ふつうは1日に数回血糖値をチェックする必要があります。2型糖尿病の場合、チェックはそれよりも回数を減らすことができます。
ほとんどの場合、血糖値のチェックは次の方法で行います：
ランセットという小さなとがった道具で指先を刺して、血液を1滴取る
その血液を小さなプラスチック製の試験紙にのせる
血糖値を読み取る小さな機械にその試験紙を入れる
チェックするたびに血糖値を記録して、医師にもそれらの数値が分かるようにします。医師はその数値を使って、飲んでいる薬や食習慣を変えた方がよいかどうかを教えてくれます。血糖値をチェックしないと、誰にも分からないまま血糖値が高くなりすぎる可能性があります。
一部には、血糖値を連続してモニタリングする装置を使う人もいます―これは皮下に小さなセンサーを埋め込み、携帯電話のようにベルトに装着した小型の装置の画面に数分ごとに測った血糖値を表示させるものです。
医師は血液中のヘモグロビンA1Cの値も3～6カ月ごとにチェックすることがあります。これにより、時間の経過の中で血糖値がどの程度コントロールされているかを確認することができます。
薬を飲む必要がありますか？
1型糖尿病の場合は、インスリン（注射か吸入）が必要になります―自分の血糖値のチェック結果に基づいて、どのようにインスリンの量を調節するかを学ぶことができます。
2型糖尿病の場合は、飲み薬を飲む必要がありますが、インスリンも必要になることがあります。
糖尿病についてのくわしい情報は、どこで教えてもらえますか？
米国糖尿病学会（American Diabetes Association）：糖尿病とその管理に関する支援ツールと指導を提供しています。
JDRF：1型糖尿病の研究に資金を提供する世界的な組織です。
米国国立糖尿病・消化器・腎疾患研究所（National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases）：糖尿病とその合併症について詳細な情報を提供しています。
