胃は、胃酸という酸をたくさんつくっていて、それが食べものの消化を助けています。正常な胃や腸には、表面を胃酸から守るための仕組みが備わっています。この仕組みが何かにじゃまをされると、酸によって表面が傷つくことがあります。
消化性潰瘍とはどのような病気ですか？
「消化性（peptic）」とは、消化に関係しているという意味で、ペプシン（pepsin）や酸（acid）に関連があります。潰瘍とは、ただれのことです。つまり、消化性潰瘍とは、胃や小腸の最初の部分（十二指腸というところ）の表面にただれができた状態です。胃の消化性潰瘍は、胃潰瘍といいます。小腸の最初の部分の潰瘍は、十二指腸潰瘍といいます。
ヘリコバクター・ピロリという細菌に感染したり、NSAIDという種類の薬（アスピリンやイブプロフェンなどの痛み止め）を飲んだりすると、胃酸に対する守りの仕組みがうまく働かなくなることがあります。
胃酸は、胃や十二指腸の表面をあれさせます。
おなかの上の方に痛みや気持ち悪さを感じるようになります。
潰瘍が深くなると、そこから血が出たり、胃に穴が開いたりすることがあります。
医師は、ヘリコバクター・ピロリを退治する抗菌薬と、胃酸の量を減らす薬を使って、消化性潰瘍を治療します。
Photo provided by David M.Martin, MD.
胃と腸
消化性潰瘍の原因は何ですか？
消化性潰瘍の最も多い原因は次の2つです：
胃の感染症、ふつうはヘリコバクター・ピロリという細菌によるもの
NSAID（イブプロフェンやアスピリンなどの痛み止めの薬）など、一部の薬を使うこと
タバコを吸う人は、消化性潰瘍になりやすいです。また、潰瘍の治りが遅く、くり返し潰瘍ができることも多いです。
消化性潰瘍にはどのような症状がありますか？
消化性潰瘍の人の多くでは、何の症状も現れません。症状が出る場合、最もよくあるのは次のものです：
軽いまたは中くらいのおなかの痛み（胸の真ん中にある骨のすぐ下、おなかの上の方の真ん中あたりに、焼けるような痛み、かじられたような痛み、うずくような痛みを感じます）
その痛みはふつう、何度も現れて、消えます。ふつう、十二指腸潰瘍は、食べものを食べると具合いがよくなりますが、数時間すると、また痛みが戻ってきます。制酸薬を飲めば、ふつうは痛みが軽くなります。
ほかにも次のような症状があります：
吐き気や嘔吐
おなかがいっぱいに感じる
消化性潰瘍にはどのような合併症がありますか？
消化性潰瘍は、次のような問題を引き起こすことがあります：
出血が起きて、便が黒くなったり、口から血をはいたり、コーヒーかすのような黒い液体をはいたりする
胃や小腸の壁に穴が開いて（穿孔といいます）、重い感染症になって、おなかが痛くなる
ヘリコバクター・ピロリ感染症を治療しないでいると、あなたが胃がんになる危険性が高くなります。
医師はどのようにして、私が消化性潰瘍かどうかを判断しますか？
医師は、あなたの症状から潰瘍を疑って、すぐに潰瘍の治療を始めます。具合がよくなれば、何も検査をしないことが多いです。
しかし、次の場合には、医師が検査をすることがあります：
症状が長引いている場合
症状が重いか、よくあるタイプの潰瘍ではない場合
あなたが45才を過ぎてから症状が出始めた場合
薬を飲んでも、よくならない場合
医師はおもに次の検査をします：
内視鏡検査（体の中を見るためのやわらかい管を使って、胃の中を調べる検査）
内視鏡検査をするときは、ふつう、生検（組織を小さく取って、顕微鏡で調べる検査）をして、ヘリコバクター・ピロリという細菌の感染症や、がんがないかを調べます。
医師は消化性潰瘍をどのように治療しますか？
医師は潰瘍を次のような薬で治療します：
あなたがヘリコバクター・ピロリ感染症なら、抗菌薬
酸を減らす薬（プロトンポンプ阻害薬やヒスタミンH2受容体拮抗薬など）
炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの制酸薬
医師はまた、あなたが次のことをしないようにも指導します：
アスピリンなどのNSAIDという種類の薬を飲むこと
お酒を飲むこと
タバコを吸うこと
おなかの痛みやふくれた感じを悪化させるたべもの
潰瘍から血が出ている場合は、医師が内視鏡検査をして、出血を止める治療をします。あなたの胃や腸の壁に穴が開いている場合は、手術が必要になります。
