神経系とは何ですか？
神経系は、体の情報を処理して伝える仕組みです。神経系は、メッセージを受け取り、情報を処理した後、体のほかの部分に信号を送り、何をすべきかを伝えます。
神経系は次のものからできています。
脳
脊髄
神経
神経系は、あなたが考えたり、話したり、何かをしたりすることのすべてに関わっています。
脳は、コンピュータのCPU（中央処理装置）に似ています。
脳は目や耳、鼻、皮膚などの感覚器官から情報を受け取ります。そして情報を処理し、考えやアイデアを生み出します。その後、脳は体にメッセージを送ります。たとえば、脳が筋肉にどう動くか命令することで、人は歩いたり、話したり、体を思いどおりに動かしたりすることができます。また脳は、あなたが何も考えなくても、体のたくさんの機能をコントロールしています。たとえば、脳は呼吸、心拍数、血圧を自動的に整えています。
脊髄は、太い電気ケーブルのような、神経の長い管です。
脊髄は脳から出て、脊椎の中心にある空洞を通って、背中を下っていきます。脳の神経は、下にある脊髄に向かって信号を送ります。続いて、脊髄にあるほかの神経がそのメッセージを体のほかの部分に伝えます。また、脊髄は全身から脳へのメッセージも伝えます。
神経は、信号を伝えるケーブルのようなものです。
それぞれの神経には、たくさんの神経細胞でできた線維が何本も含まれています。丈夫にして、けがから守るために、それらの線維は束になっています。
中枢神経系とは、脳と脊髄のことです。脳と脊髄以外の神経は末梢神経系といいます。
神経系はどのような仕組みで働いていますか？
神経系は次のものからできています。
神経細胞とその線維
脳と脊髄、そして脊髄を出てすぐのところにある神経のかたまりの中には、何百億個もの神経細胞があります。
それぞれの神経細胞には、顕微鏡でしか見えないほど小さな本体部分が1つだけあります。
神経細胞の本体部分は、栄養を処理して、細胞が生きていけるようにする働きをしています。
それぞれの神経細胞には、次のように、細胞に入ってくる線維と、細胞から出ていく線維があります。
信号が入ってくる線維は、ほかの神経細胞や感覚器官の受容器という部分から出る信号を受け取ります。
信号を出す線維は、ほかの神経、筋肉、またはほかの臓器へと信号を送ります。
信号は神経細胞の中を一つの方向にだけ伝わります。
神経線維の長さは、数十センチメートルにもなることがあります。たとえば、1本の神経線維が脊髄から足の指まで、ずっと続いていることがあります。皮膚や臓器に向かう神経線維の中には、感覚受容器をもっているものがあります。たとえば、皮膚の神経線維の端にある受容器は、とがったものや熱いものを感じ取ります。
神経細胞は化学物質を使って、信号を送ります。
神経線維に沿って、次々と化学変化が起こるのです。
化学変化が神経線維の先まで届くと、神経伝達物質という別の化学物質が放出されます。
神経伝達物質は、顕微鏡でしか見えないほど小さなすき間を、ただようように通過していき、別の細胞の受容体という部分にぶつかります。
神経伝達物質は、その細胞に化学変化を引き起こします。
その細胞が神経細胞なら、その細胞の線維に沿って、また次々と化学変化が起きていき、それにより信号が伝わります。
次の細胞が神経細胞ではない場合もあり、たとえば、次の細胞が筋肉の細胞なら、神経伝達物質は筋肉の細胞を収縮させる化学変化を引き起こします。
神経細胞の典型的な構造
神経細胞（ニューロン）は、大きな細胞本体と複数の神経線維でできていて、神経線維としては、信号を送るための長くのびた1本の突起（軸索）と、信号を受け取るための多数の枝（樹状突起）があります。軸索から送られて来た信号は、シナプス（2つの神経細胞同士の接合部のこと）を通過して別の細胞の樹状突起に伝わります。 大きな軸索は、脳と脊髄では乏突起膠細胞に、末梢神経系ではシュワン細胞にそれぞれ包まれています。これらの細胞の膜はミエリンと呼ばれる脂肪（リポタンパク質）でできていて、この膜が軸索に何層にもしっかりと巻きついて、髄鞘と呼ばれる構造物を作っています。髄鞘は、ちょうど電気ケーブルを包んでいる絶縁体のようなものです。髄鞘がある神経では、髄鞘がない神経より神経信号がずっと速く伝わります。 |
1つの神経細胞が送れる信号は1種類だけで、たくさんの情報を伝えることはできません。しかし、脳のように何百億もの神経細胞がつながりあうと、とても性能の高い情報処理装置のように機能することができます。
神経系にはどのような問題が起こりますか？
神経系は、次のような多くの問題によって影響を受けます。
脳や脊髄の神経細胞が死んでしまうと、ふたたび増えることができません。しかし、近くにあるほかの脳細胞が、死んだ脳細胞の代わりをすることがあります。細胞の本体が傷ついていなければ、神経線維は元にもどることがあります。神経線維が元にもどるには、数カ月かかることもあります。医師が細い神経を縫い合わせることで、その神経がまた働くようになる場合もあります。脊髄や脳を元にもどすことは医師にもできません。
