黄色ブドウ球菌とは何ですか?
ブドウ球菌は、よくみられる細菌のグループです。一部の種類のブドウ球菌はふつう、人の皮膚の表面や生活環境の中で生きていて、病気は引き起こしません。ほかの種類のブドウ球菌、特に黄色ブドウ球菌は、深刻な感染症を引き起こすことがあります。ブドウ球菌感染症と呼ばれることも多いです。
ほかの人から、または細菌がついている物にさわることで、黄色ブドウ球菌感染症にかかることがあります。
黄色ブドウ球菌感染症は軽いものもあれば、命にかかわるものもあります。
ブドウ球菌は血流に入ると、臓器に問題を起こすことがあります。
医師は黄色ブドウ球菌感染症を抗菌薬で治療します。
黄色ブドウ球菌感染症の多くには、よくある抗菌薬が効きません。
念入りに手を洗うことが、黄色ブドウ球菌感染症の予防に役立ちます。
MRSAとは何ですか?
黄色ブドウ球菌感染症には、これまでは治せる抗菌薬がたくさんありました。今では多くの種類のブドウ球菌が、最も強い抗菌薬以外すべてに耐性をもつようになりました。よくあるグループの抗菌薬では完全に治すことができない黄色ブドウ球菌は、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)といいます。MRSAやそのほかのさらに耐性の強いブドウ球菌が、特に病院内で、多くみられるようになってきています。それらの感染症は、治療が難しいです。
黄色ブドウ球菌感染症の原因は何ですか?
黄色ブドウ球菌感染症は、次のことから簡単に広がる可能性があります。
感染している人にさわる
細菌がついているもの(ジムの器具、電話、ドアノブ、リモコン、エレベーターのボタンなど)にさわる
ブドウ球菌はふつう、次のものに感染します。
皮膚
しかし、ブドウ球菌は血流に乗って移動して、心臓の弁や骨など、体の中のほぼどこにでも感染します。また、ペースメーカー、人工関節、心臓弁など、体内の医療機器に付くこともあります。
ブドウ球菌保菌者とは何ですか?
皮膚の表面や鼻の中にブドウ球菌がいても、症状が何も現れない人もいます。このような人を保菌者といいます。保菌者は、ほかの人に細菌をまき散らして感染させることがあります。病院で働いている人や入院している患者は、保菌者である可能性が高いです。
黄色ブドウ球菌感染症にはどのような症状がありますか?
皮膚に黄色ブドウ球菌感染症があると、次の症状がみられることがあります。
体のどこかに黄色ブドウ球菌感染症があると、次のようなほかの症状がみられることがあります。
乳房の感染症(乳腺炎):乳房が痛くて赤くなり、膿瘍(うみがたまったもの)ができますが、これはふつう、母乳をあげ始めてから1~4週間後の母親によくみられる
肺の感染症(肺炎):高熱が出て、息切れがして、せきといっしょに血が混じったたんが出ることが多い
心臓弁の感染症(心内膜炎):熱が出て、息切れがする(命にかかわることがある)
骨の感染症(骨髄炎):寒気、発熱、骨の痛みがあり、その骨の上の皮膚が赤くなって腫れる
この写真のせつ(おでき)は、腫れて圧痛があり、内部には膿がたまっています。
Photo provided by Thomas Habif, MD.
この女性では、まゆ毛の下に炎症を起こした赤いせつがみられます。
DermPics/SCIENCE PHOTO LIBRARY
膿痂疹では、水疱が複数集まって出現し、それらが破れてハチミツのような色の痂皮が形成されます。
Image courtesy of Thomas Habif, MD.
この膿痂疹(のうかしん)の小児の写真では、黄色いかさぶたを伴った皮膚のただれがみられます。
DR P.MARAZZI/SCIENCE PHOTO LIBRARY
医師はどのようにして、私が黄色ブドウ球菌感染症かどうかを判断しますか?
医師はふつう、診察をすれば、黄色ブドウ球菌感染症と判断できます。ほかの部分に黄色ブドウ球菌感染症がないかを判断するために、医師は次のような検査をします。
血液検査
感染した体液の検査
医師は黄色ブドウ球菌感染症をどのように治療しますか?
医師は黄色ブドウ球菌感染症を抗菌薬で治療します。病院内で感染した場合は、医師はあなたにMRSAに効果のある抗菌薬を出します。
ときには、皮膚の感染症は、皮膚にぬる軟膏で治療できることがあります。
皮膚の感染症がより重い場合は、抗菌薬を飲み薬で出すか、ときには静脈に注射します。
骨の感染症では、ふつう、感染が起きた骨の組織を取り除く手術が必要になります。
膿瘍がある場合は、医師が切開してうみを出します。
ブドウ球菌感染症はどうすれば予防できますか?
石けんと水で念入りに手を洗うか、手の消毒液を使いましょう。
皮膚に黄色ブドウ球菌感染症が起きている場合は、ほかの人のために料理をしたり、食事を用意したりしないでください。