糖尿病は成人だけの問題ではありません。それが今日の現実です。米国では青年期の小児の5人に1人近くが前糖尿病という状態にあり、2型糖尿病を発症するリスクが通常より高くなっています。
これは、すべての保護者が注意するべき健康上のリスクです。
糖尿病とは
糖尿病は、体内でインスリンが十分に作られないか、作られたインスリンに対して体が正常に反応しないために、血糖値(ブドウ糖の血中濃度)が異常に高くなる病気です。眼や腎臓、神経などを侵す一群の合併症につながる可能性があり、心臓発作や脳卒中を若くして発症するリスクを高める可能性もあります。
糖尿病には大きく分けて2つの病型があります。
- 1型糖尿病は、インスリンを作っている膵臓の細胞が破壊されるためにインスリンが作られなくなる、自己免疫疾患です。1型糖尿病は最初に症状が急激に現われることが多く、強いのどの渇き、頻尿、夜尿、意図しない体重減少などがみられます。
- 2型糖尿病は、体の細胞がインスリンに正常に反応しなくなり(この状態をインスリン抵抗性と呼びます)、インスリンの生産量がインスリン抵抗性を補えなくなることで発症します。2型糖尿病は遺伝的な素因と肥満を伴っているのが一般的です。2型糖尿病は、症状が徐々に現れ、数年かけて進行する可能性があります。2型糖尿病の小児では、無症状の場合もありますが、1型糖尿病の人と同様の症状がみられる場合もあります。
過去25年間で、2型糖尿病は小児で非常に多くみられるようになっています。
前糖尿病とは
前糖尿病とは、体内でのブドウ糖の処理に問題があり、血糖値が正常より高くなっているものの、糖尿病の基準は満たしていない状態です。小児の前糖尿病は、2型糖尿病の発生リスクとなる重大な警戒すべき徴候です。
前糖尿病が2型糖尿病に進行するのを予防するには、前糖尿病の徴候を見つけるための対策と、血糖値を低下させるための積極的な対策を講じます。小児の前糖尿病を見つけて対処する上で、保護者が知っておくべきことが5つあります。
1. 前糖尿病は治療できます
幸いにも前糖尿病は、一般的に、薬の処方を受ける前に推奨される生活スタイルに変えることで、予防や治療が可能です。一方で、そうした生活スタイルの変化は、小児にとって長期間にわたり継続するのは難しい課題です。
2. 前糖尿病には警戒すべき徴候があります
一般に、小児が思春期に近づくか思春期を迎えた時期に、医師が糖尿病のリスクがある小児をスクリーニングします。しかし、保護者は小児の糖尿病リスクを高める要因や、早めにかかりつけ医に相談するべき事柄に対して注意を払うべきです。小児期の肥満は最大の要注意点の一つです。また、ラテン系、アフリカ系アメリカ人、アメリカ先住民、アジア系アメリカ人の家系の小児もリスクが高いです。さらに、首筋や脇の下、太ももの付け根の周辺の皮膚に黒ずんだ斑点がみられる小児がいますが、これは黒色表皮腫と呼ばれるもので、インスリン抵抗性に伴ってみられます。その他の危険因子としては、高血圧、コレステロール高値 、女子では多嚢胞性卵巣症候群などがあります。
3. 家族歴が大きく影響します
上記のような警戒すべき徴候に加えて、家族歴も重要な予測因子となる可能性があります。前糖尿病のある小児の約半数には、糖尿病の第1度近親者(親、子ども、兄弟)が1人いて、対象に祖父母を含めると、その割合は90%になります。
つまり、ある小児が前糖尿病や糖尿病である場合、家族内にもう一人同様の人がいることが多いのです。このことから、健康な食事と運動などについて、他の家族がお互いにサポートし合う「家族プロジェクト」として取り組む機会が生まれます。ただし、特に小児が成長するにつれて、よりよい生活スタイルを選ぶ自主性を持たせることも大切です。自分の家族歴をコントロールすることはできないでしょうが、健康を維持するための取組みはコントロールできます。
4. 健康な食事が不可欠です
小児の肥満や前糖尿病のリスクを減らすために保護者がすぐに実行できることがいくつかあります:
- 高カロリーの飲み物を避ける―フルーツジュースや炭酸飲料、その他の甘味飲料を制限する。
- 加工食品を避ける―ファストフードやスナック菓子よりも、生鮮食品や自然食品を選ぶ。
- 食事の分量を制限する―食事の量を減らし、食べ残しを少なくする。choosemyplate.govにある提言を確認する。
- 間食を制限する―1日の主な食事を大事にする。
- 外食を制限する―高カロリーの食べ物や揚げ物の誘惑を避ける。
5. 定期的な運動がこれまで以上に重要になっています
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、私たちの日課は色々なかたちで壊されてしまいました。以前は、子どもたちは学校で休み時間や体育の授業で運動していましたし、教室の移動や登下校で歩いていました。それが今では、家にいる時間が多くなり、画面の前で過ごす時間が増えています。
前糖尿病を予防して解消するには、子どもたちが1日を通して健康な運動を定期的にできるようにすることが大事です。子どもたちをテレビやパソコン、電話の前から離し、立ち上がって動き回り、運動をするようにしましょう。
小児の前糖尿病と糖尿病についてさらに学ぶには、MSDマニュアルのこの話題に関するQuick Facts(一部の言語で利用可)をチェックしてください。