入院による錯乱と精神機能の低下

執筆者:Michael Joseph Pistoria, MEng, DO, Lehigh Valley Hospital - Coordinated Health
レビュー/改訂 2021年 8月
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人は誰もが病気のために混乱することがあり、特に痛みや不安に対する薬を服用している場合、その可能性が高くなりますが、病院の環境が問題に拍車をかけます。個人的な持ち物や衣服は、その人のアイデンティティの象徴ですが、入院している人は指定のガウンを着なければなりません。見慣れた景色もなければ、普段の習慣もできない、見知らぬ場所で生活することになります。刺激(何かを見たり聞いたり、人と交流したりするなど)がほとんどない場合もしばしばあります。飾り気のない白い壁とお決まりの設備品しかない病室で、1人きりで過ごしたり、同室の患者がいても会話をしなかったりする場合もあります。長い時間、話し相手が誰もいない場合もあれば、聴こえてくるのはテレビの音だけという場合もあります。

さらに、病院が定める手順やスケジュールも頭を混乱させます。例えば、夜中に頻繁に目を覚まして、十分な睡眠をとれなくなったり、薄暗い明かりしかない慣れない部屋の中で自分がどこにいるのか分からなくなったり、多くの検査や複雑な機器に圧倒されたりすることもあるかもしれません。

集中治療室(ICU)では、錯乱がさらにひどくなる可能性があります。ICUでは1人きりになり、ときには、自分がいる状況を判断する手がかりになる窓も時計もない場合もあります。電子モニターから電子音が鳴り、常に明るい照明がついた部屋の中で過ごし、採血や点滴の交換、薬の投与が頻繁に行われるために、睡眠を妨げられることもあります。疲れていると、錯乱や見当識障害が起こりやすくなります。錯乱が重度になると、ICU症候群と呼ばれる一種のせん妄状態に陥ることがあります。

入院中に、いつになく錯乱状態になった場合は、それが本人の正常な行動であるとスタッフが思わないように、家族からスタッフに伝えるのがよいでしょう。せん妄は、原因(もともとの病気、薬、ストレスの多い状況)を取り除けば通常は回復します。

ある種の状況下では、患者は自分がなぜ入院しているのか分からなくなるほど混乱することがあります。興奮して、ベッドから出ようとしたり、静脈ラインや他のチューブを抜こうとしたり、自分や他の人に危害を与えかねない行動をとったりする可能性があります。他者の行動を脅迫と勘違いして、暴力で応じることがあります。そのような場合、友人や家族がその場にいるなら、患者を落ち着かせる助けになります。患者が危険なことを行わないように、病院スタッフが24時間付き添うこともあります。まれに、錯乱がなくなるまで、身体的拘束を行ったり、少量の抗精神病薬を投与したりすることもあります。

入院による問題も参照のこと。)

入院中の錯乱と精神機能の低下の予防

患者が自分を見失わずにいられるように、家族とスタッフは次のことを行います。

  • 部屋の明るさが十分になるよう調節します。

  • 見やすいカレンダーや時計を用意します。

  • ベッドから出るよう患者を促し、定期的に散歩させ、できる限り通常の生活を送らせます。

  • 病院の外の世界で起きていることを話して聞かせ、精神的な刺激を与えるようにします。

  • 何が、なぜ行われているか理解できるように、検査と治療について説明を行います。

  • 眼鏡や補聴器が必要な患者では、それらが手元にあり、本当に使用しているかを確認します。

  • 水分と栄養を十分とっているかを確認します(脱水状態になると、せん妄が起きることがあります)。

  • 夜間はできる限り中断なく十分に睡眠をとれるようにさせます。

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