毒キノコ中毒

執筆者:Gerald F. O’Malley, DO, Grand Strand Regional Medical Center;
Rika O’Malley, MD, Grand Strand Medical Center
レビュー/改訂 2022年 5月
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やさしくわかる病気事典

毒があるキノコ類は多く、キノコの種類によって引き起こされる症状が異なる可能性があります。

  • キノコの種類によって、作られる毒素とその作用が異なります。

  • 同じ種でも、キノコの生育時期や調理法によって毒性の強さが異なる可能性があります。

  • 毒キノコと毒のないキノコを区別するのは、知識のある人でも難しく、民間伝承の知識はあてになりません。

  • 中毒患者が食べたキノコを特定するのは困難な場合があるため、医師は通常、症状に基づいて治療を行います。

中毒の概要も参照のこと。)

毒キノコはいずれも嘔吐と腹痛を引き起こします。他の症状はキノコの種類によって非常に多様です。一般に、摂取後早期(2時間以内)に症状を引き起こすキノコは、後になって(通常6時間以降)引き起こすものより危険性は低くなります。

知っていますか?

  • 摂取後早期(2時間以内に)に症状を引き起こすキノコは、後になって(約6時間後以降に)症状を引き起こすものより通常は危険性が低くなります。

早期の消化管の症状

摂取後早期に消化管の症状を引き起こすキノコ(オオシロカラカサタケ Chlorophyllum molybditesや芝生によく生える小さな茶色のキノコなど)は、典型的には摂取後1~6時間以内に嘔吐や下痢を引き起こします。下痢に血が混じることもあります。頭痛や全身の痛みが起きる人もいます。症状は通常24時間以内に治まります。

脳や脊髄に影響を及ぼす早期の症状

脳や脊髄に影響を及ぼす早期の症状を引き起こすキノコには、幻覚発現物質のシロシビンを含む幻覚作用のあるキノコなどがあります。最もよくみられるのはシビレタケ属(Psilocybe)の仲間ですが、ほかにもシロシビンを含むキノコはあります。摂取後15~45分以内に吐き気と嘔吐も引き起こします。症状は摂取後20~90分以内に現れ、多幸感、想像力の高まり、幻覚などが生じます。 心拍数や血圧の上昇がよくみられ、小児では発熱がみられることがあります。しかし、このような症状は治療をしなくても治まり、深刻な結果に至ることはまれなため、特別な治療は通常不要です。ただし、興奮が激しい場合は、ロラゼパムなどの鎮静薬が投与されることがあります。

ムスカリンを含むキノコによって生じる早期の症状

アセタケ属(Inocybe)の多くや、カヤタケ属(Clitocybe)の一部のキノコで起こる食中毒では、原因となる有害物質はムスカリンです。ムスカリンはアセチルコリンに類似した物質で、アセチルコリンは生体が神経間でメッセージを伝達するために利用する物質(神経伝達物質)です。以下のような症状が食後30分以内に現れます。

  • 涙と唾液の分泌増加

  • 瞳孔の縮小(収縮)

  • 発汗

  • 嘔吐、胃けいれん、下痢

  • めまい

  • 筋肉のひきつり(線維束性収縮)

  • 錯乱、昏睡、けいれん発作(ときにみられる)

これらの症状の一部は重篤なものですが、大半の患者の症状は軽度で、通常は12時間以内に消失します。症状が重い患者には、アセチルコリンを阻害する薬であるアトロピンを静脈内投与することで、ほぼ全員が24時間以内に回復します。中毒が重度の場合、治療をしないと数時間で死亡することもあります。

後になって現れる消化管やその他の症状

後になって消化管の症状を引き起こすキノコには、タマゴテングタケ(Amanita phalloides)やその近縁種のキノコ(テングタケ属[Amanita ]、シャグマアミガサタケ属[Gyromitra]、フウセンタケ属[Cortinarius]の仲間)などがあります。

タマゴテングタケ Amanita phalloidesは米国のキノコ中毒による死亡の原因の95%を占めています。嘔吐と下痢が6~12時間で生じます。血糖値が危険なレベルにまで低下します(低血糖)。症状は数日の間は治まりますが、その後、肝不全や、ときには腎不全が生じることがあります。肝不全が起こると、皮膚が黄色になります(黄疸)。腎不全が起こると、尿量が減ったり、尿が出なくなったりします。症状は自然に消失することもありますが、このタイプの中毒を起こした人の約半数は5~8日で死に至ります。肝不全が生じた場合は、肝移植を受けることで生き延びられる可能性があります。

アマニタ・スミシアナ Amanita smithianaというテングタケ属のキノコは、後になってから(食後およそ6~12時間後に)嘔吐や下痢を引き起こす傾向があります。食べた後3日から1~2週間以内に腎不全が起こることがあり、多くの場合、一時的に血液透析が必要になります。

シャグマアミガサタケ属(Gyromitra)のキノコも、後から嘔吐や下痢、低血糖を引き起こします。その他の問題として、脳への毒性(けいれん発作など)や、数日後に生じる肝不全や腎不全があります。

フウセンタケ属(Cortinarius)のキノコの大半は欧州が原産です。嘔吐や下痢が3日間続くことがあります。食べた後3~20日で、わき腹の痛み(側腹部痛)と尿量減少の症状を伴う腎不全が生じることがあります。腎不全はしばしば自然に治ります。

いくつかのキノコ類(キシメジ属[Tricholoma]やベニタケ属[Russula]など)は、遅発性の筋肉の崩壊(横紋筋融解症)の原因となり、一部の症例では致死的となります。特異的な治療法はないため、具体的な症状の治療と患者の不快感の軽減に重点が置かれます。

その他のキノコ類(カヤタケ属[Clitocybe]、アカゾメタケ[Hapalopilus rutilans]、スギヒラタケ[Pleurocybella porrigens]など)も、手や指、足、つま先のしびれや灼熱感、浮動性めまい、視覚障害、意識変容、けいれん発作、呼吸不全などの脳および神経の症状を引き起こし、また死に至ることもあります。

さらなる情報

役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  1. 米国中毒情報センター協会(American Association of Poison Control Centers):米国に拠点を置く中毒センターで、24時間年中無休、無料で秘密厳守の中毒ヘルプライン(Poison Help Line、1-800-222-1222、米国のみ)を運営している【訳注:日本では、大阪中毒110番072-727-2499、または、つくば中毒110番029-852-9999】

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