先天性多発性関節拘縮症とは、子宮内で発生して多くの関節が「固まる」まれな病気の総称です。
先天異常あるいは先天奇形とは、出生前の段階で生じた身体的な異常のことです。「先天」とは、「生まれたときから存在する」という意味です。(顔面、骨、関節、および筋肉の先天異常に関する序も参照のこと。)
関節拘縮症は、関節が永久的に「固まって」しまう病気です。関節の硬直は300種類以上の病気でみられ、35種類以上の特定の遺伝性疾患(脊髄性筋萎縮症I型や18トリソミーなど)が先天性多発性関節拘縮症と関連することが報告されています。
先天性多発性関節拘縮症の原因
先天性多発性関節拘縮症の症状
先天性多発性関節拘縮症の乳児では、いくつかの関節が弯曲した状態で硬直し、そのために関節が曲がらなくなります。硬直した関節に付着している筋肉は通常弱く、発達が不十分です。子宮内で胎児の筋肉と関節の動きが低下していると、生まれた後も関節の動きが低下しやすくなります。侵されている関節では、正常の場合は骨を動かす働きをする神経も損なわれていることがあります。関節拘縮症がある乳児では、股関節、膝関節、または肘関節に脱臼がみられることもあります。
先天性多発性関節拘縮症の診断
医師による評価
遺伝子検査
出生前に、定期的な超音波検査で異常のある腕や脚が認められることがあります。腕や脚の異常がみられる場合、胎児の他の部位の超音波検査や、絨毛採取や羊水穿刺で胎児の遺伝子検査を行うことがあります。
出生後には、医師が身体診察を行い、乳児の固まった関節や腕と脚に注目します。そのような先天異常のある乳児に対しては、遺伝専門医が診察を行うことがあります。遺伝専門医とは、遺伝学(遺伝子と、特定の性質や形質が親から子にどのように受け継がれるかについての科学)を専門とする医師です。乳児の血液サンプルの遺伝子検査を行い、染色体や遺伝子の異常がないか調べることがあります。この検査は、特定の遺伝性疾患が原因なのかどうかを判断し、他の原因を否定するために役立ちます。
様々な種類の関節拘縮症を鑑別するために、筋生検(検査のために筋肉のサンプルを採取すること)や筋電図検査などの筋肉の検査を行うことがあります。
先天性多発性関節拘縮症の予後(経過の見通し)
生まれつき関節拘縮症がある乳児では、関節拘縮症の原因が知能にも影響を及ぼす病気や症候群でなければ、一般的に比較的正常な知能が発達します。
医師は、親が予後(経過の見通し)を知り遺伝カウンセリングを受けられるように、何が関節拘縮症の原因になったのか詳細な診断を確定しようとします。
多くの小児の予後は非常に良好です。この病気の小児の約3分の2が治療後に歩けるようになります。
先天性多発性関節拘縮症の治療
ギプスと理学療法
ときに手術
患児の四肢をギプスで固定して、硬くなった関節を注意深く動かす理学療法を行うと関節の動きがよくなります。
関節の動きをより正常にするために、付着している組織から骨を離す手術が必要になる場合もあります。筋肉を動かす手術(例えば、上腕三頭筋が肘関節を伸ばすのではなく曲げることができるように動かす)によって機能が改善することがあります。