男性生殖器系への加齢の影響

執筆者:Irvin H. Hirsch, MD, Sidney Kimmel Medical College of Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 2021年 3月
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男性の性機能は徐々に変化していきますが、これが加齢そのものによって生じるのか、それとも加齢に伴う病気などが原因なのかは明らかではありません。勃起の頻度、持続時間、硬さは、加齢とともに徐々に衰えていきます(勃起障害を参照)。男性ホルモン(テストステロン)の値が低下する傾向があり、それにより性的欲求(性欲)が弱まります。陰茎(ペニス)への血流量が減少します。その他の変化には以下のものがあります。

  • 陰茎の感度低下

  • 射精時に放出される液量の減少

  • 射精の徴候の減弱

  • 射精を伴わないオルガスム

  • オルガスムに達した後、陰茎がより早く柔らかくなる(萎縮)

  • オルガスムに達した後、勃起できるようになるまでの時間(不応期)が長くなる

20歳頃から男性のテストステロン(主要な男性ホルモン)の分泌量は、通常、平均で年1~2%の割合で減少し始めます。重い症状を起こすのに十分なテストステロン産生減少がみられる人生後半の時期を男性更年期ということがあります。しかし、男性の緩やかなホルモン減少は女性の閉経期に起こるものとは大きく異なり、女性の場合はほぼ必ず、わずか数年の間に急速に女性ホルモンが減少します。テストステロンの減少する速さは男性では個人によって大きく違います。70代で、テストステロン値が30代の平均値に匹敵する男性もいます。

年齢を問わずテストステロン値が低い男性では、性欲減退、筋肉量の減少、腹部脂肪の増加、骨がもろくなり骨折しやすくなる(骨粗しょう症)、気力の低下、思考の鈍化、血球数の減少(貧血)といった加齢と関連する特徴が現れることがあります。テストステロン値が低いと、冠動脈疾患のリスクも増えます。

テストステロン補充療法

テストステロンの値が正常でも、テストステロンの減少による異常の発生を遅らせたり正常化させたりする目的でテストステロンを服用することに、多くの男性が興味をもっています。しかし、現在のところ、テストステロン補充療法(TRT)は、テストステロンの減少による症状に加えて、性腺機能低下症と呼ばれるテストステロンの血中濃度の異常な低下がみられる男性にしか推奨されていません。最近になって、TRTを受ける男性で心臓発作や脳卒中のリスクが高まる可能性を示唆した研究結果が複数報告されていますが、それらの結果は一貫しているわけではありません。

テストステロン補充療法の副作用

テストステロン療法では、いびき、尿路の閉塞(通常は前立腺肥大症によって起こる)の症状増大、気分の変化、にきび、血栓、乳房の肥大など、特定の副作用がまれにみられることがあります。テストステロンは、ときに体内での赤血球の生産を過剰に増加させることがあり、それにより血栓や脳卒中など、様々な病気のリスクを高める可能性があります。

今のところ、テストステロン療法には前立腺がんの発生または進行に対する影響はないと考えられています。しかし、この問題については完全には解明されていないため、前立腺がんの発生リスクについて主治医に相談するべきです。

テストステロン補充療法のフォローアップ

テストステロンの投与を受けている男性は、血球数の変化と前立腺がんがないか、数カ月毎に確認する必要があります。こうした検査により、治療できる可能性がより高い早期のうちにがんを発見できることがあります。一部の前立腺がん患者がテストステロン療法を受けることがありますが、その場合はさらに頻繁に主治医のチェックを受けるべきです。

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