口腔灼熱症候群は、しばしば舌に生じる口の痛みで、口の中に目に見える口内炎や異常がない人にみられるものです。
口腔灼熱症候群には、原因は異なるけれども症状が共通しているいくつかの病態が含まれています。
灼熱感やピリピリ感、麻痺したような感覚が口全体または舌だけに起こり、持続的な場合もあれば間欠的な場合もあります。
口腔灼熱症候群の診断は、症状に基づいて下されるほか、舌の不快感の原因としてより一般的なものがみられない場合に下されます。
根本的な原因があれば、それを治療します。
口を湿った状態に保つと、しばしば灼熱感の緩和に役立ちます。
口腔灼熱症候群は、閉経後の女性に最も多く発生します。
口腔灼熱症候群は、多くの人が刺激のある食べものや酸性の食べものを食べた後に経験する一時的な不快感とは異なります。
口腔灼熱症候群の原因
口の痛みの原因となる病気はいくつかあります。そのような病気にかかっておらず、口の中に明らかな異常が認められない状態で口の痛みがある場合には、医師はこれを口腔灼熱症候群と呼んでいます。口腔灼熱症候群の原因として、痛みと味覚を制御する神経にあまりよく理解されていない異常が生じていることがおそらく関与しているだろうと医師は考えています。
口の痛みの原因となるその他の病気には以下のものがあります。
カンジダ症(真菌感染症)
食べものに対するアレルギーや歯科製品に対するアレルギー
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬(高血圧の治療に用いられる薬)の使用
特定の、しばしば習慣的な口の動き(異常習癖と呼ばれる)(例えば、舌で歯を押したりする癖、歯の噛みしめ、歯ぎしり[ブラキシズム])
舌や口の中のその他の状態(炎症、自己免疫疾患、がんなど)
口腔灼熱症候群の症状
痛みを伴う灼熱感、ピリピリ感、麻痺したような感覚が口全体(特に舌、唇、口の天井)または舌だけに起こります。この感覚は持続的な場合も間欠的な場合もあり、1日を通して徐々に強くなっていくことがあります。また、飲食することによって緩和する場合もあります。ほかにも次のような症状があります。
口腔乾燥(強いのどの渇きに伴う)
味覚の変化
痛みの起こりうる結果として、食習慣の変化、易怒性、抑うつ、他者を避けることなどが挙げられます。
口腔灼熱症候群の診断
医師による評価
考えられる原因を特定するための検査
医師または歯科医師は、患者の病歴と食習慣を詳細に確認し、口の診察を行います。診断を下すには、通常、痛みがほぼ毎日起こり、1日約2時間以上で3カ月以上にわたって続く必要があります。口の灼熱感の原因となることが分かっているその他の特定の病気を調べるために血液検査や他の検査が行われることもあります。例えば、口腔乾燥が生じていないかどうかを確認するために、唾液の分泌を調べる検査を行うことがあります。口腔灼熱症候群はしばしば診断が難しく、その原因としては、特定の病気による口の痛みでは、それが軽症であるか初期である場合にも口腔内の組織が正常にみえる可能性があることがあげられます。
口腔灼熱症候群の治療
口を湿った状態に保ち、痛みを緩和するための対策
ときに抗うつ薬または抗不安薬
口の痛みの原因がみつかれば、それを治療します。
症状の緩和に役立つ手段はいくつかあります。人工唾液、氷片、頻繁に水を飲むこと、またはチューインガム(シュガーレス)を噛むことが、唾液の分泌を促し口を湿った状態に保つために役立つことがあります。ノルトリプチリンなどの抗うつ薬やクロナゼパムなどの抗不安薬が、ともに起こりうる感情の変化に対してときに役立ちますが、これらの薬は、口腔乾燥を引き起こして痛みの症状を悪化させることがあります。カプサイシンのクリームやガバペンチン、ビタミンサプリメント(BとC)も役に立つ場合があります。認知行動療法が、他の治療法で効果がみられない場合に、役立つことがあります。治療を行わなくても症状が自然に消えることがありますが、再発することもあります。
さらなる情報
役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
米国国立歯科・頭蓋顔面研究所、口腔灼熱症候群(National Institute of Dental and Craniofacial Research, Burning Mouth Syndrome):データと統計、一般向けの出版物の入手、口腔ケアを受けられる場所を見つける方法などの口腔灼熱症候群に関する包括的な情報