粘膜類天疱瘡(ねんまくるいてんぽうそう)とは、体の粘膜に水疱ができる自己免疫疾患です。最もよく侵されるのは口と眼の粘膜です。
粘膜類天疱瘡は免疫系が粘膜を攻撃することで起こり、水疱とびらんが生じます。
口の中や体の他の部位に水疱が生じます。
粘膜類天疱瘡の診断は、組織のサンプルを顕微鏡で調べることによって下されます。
治療は通常、コルチコステロイドや免疫の働きを抑える薬(免疫抑制薬)により行います。
(水疱ができる病気の概要も参照のこと。)
粘膜とは、体の表面の湿った部分のことです。粘膜類天疱瘡では、典型的には口(口腔粘膜類天疱瘡)と眼(眼粘膜類天疱瘡)が侵されますが、その他の粘膜(のどの内部や性器など)や皮膚も侵されることがあります。高齢者に最も多くみられ、男性よりも女性に多くみられます。
粘膜類天疱瘡の原因
粘膜類天疱瘡の症状
粘膜類天疱瘡の主な症状は、痛みのある水疱ができ、それにより粘膜が赤くなって腫れ、破壊され、最終的にただれ(潰瘍)になることです。それらの潰瘍が治癒するにつれて、患部に瘢痕ができることがあります。実際に水疱を目にすることはまれで、典型的には患部の皮膚がなくなり、すり減った状態になります。
口腔内では、水疱は通常歯ぐきと口内の粘膜のあらゆる部位に生じます。頬の内側、歯ぐき、口の中の天井部分が赤くなり、ただれます。粘膜がすり減ると潰瘍ができ、ヒリヒリまたはチクチクする感覚がします。
鼻、のど、性器や肛門の表面などの他の粘膜では、しばしば潰瘍が瘢痕を残して治癒します。食道(のどと胃をつないでいる管状の臓器)の粘膜に瘢痕が生じると食道が狭くなり、嚥下困難が起こります。
粘膜類天疱瘡では、皮膚に実際に水疱ができる場合もあります。それらは頭皮、顔面、体幹、腕や脚に現れる傾向があります。水疱が治癒すると、典型的には皮膚に瘢痕が残ります。
眼に粘膜類天疱瘡が起きると、他の部位とは異なる様相を呈します。水疱はできませんが、両眼が赤くなり、ただれ、その後は乾燥します。結膜(まぶたの裏側と白眼の部分を覆っている膜)が収縮して瘢痕化することがあります(眼粘液性類天疱瘡の症状も参照)。重症の場合は、失明することがあります。
粘膜類天疱瘡の診断
生検
医師は通常、その特徴的な外観から粘膜類天疱瘡と認識します。診断の確定は、組織のサンプルを顕微鏡で調べる検査(生検)によって行います。検査では、抗体の沈着を顕微鏡で見えるようにするために、ときに特殊な化学染色を行うこと(蛍光抗体法)もあります。
粘膜類天疱瘡の予後(経過の見通し)
粘膜類天疱瘡はゆっくりと進行し、治療せずに治ることはまれで、治療しても完全に治らないことが多くあります。
粘膜類天疱瘡の一部の患者では、体内にがんができるリスクが高まります。
粘膜類天疱瘡の治療
コルチコステロイドおよびドキシサイクリン + ニコチン酸アミド
ときに、その他の薬(重症患者に対する免疫抑制薬など)
粘膜類天疱瘡の治療法としては、コルチコステロイドや、ドキシサイクリンとニコチン酸アミドの併用などがあります。コルチコステロイドは直接患部に塗る場合もあれば、潰瘍の中に注射する場合もあります。
重度の粘膜類天疱瘡では、免疫の働きを抑える薬(免疫抑制薬)が必要になる場合があり、ジアフェニルスルホンまたはプレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)を投与することがあります。あるいは、他の免疫抑制薬(アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、リツキシマブ、シクロホスファミドなど)や免疫グロブリンの静脈内投与に加えて、高用量のプレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)が投与されることもあります。
さらなる情報
役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
全米希少疾患患者協議会(National Organization for Rare Disorders):参考資料や支援組織へのリンクを含めた粘膜類天疱瘡に関する情報