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遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)

(オースラー-ウェーバー-ランデュ症候群)

執筆者:David J. Kuter, MD, DPhil, Harvard Medical School
レビュー/改訂 2023年 5月
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遺伝性出血性毛細血管拡張症は、血管形成に異常があるため、血管がもろくなって出血しやすくなる遺伝性疾患です。

本ページのリソース

  • 皮膚や口腔、鼻腔、消化管の内側に血管の拡張(毛細血管拡張)がみられます。

  • 血管が破れると、これらの血管から持続的に出血し、特に鼻腔内の血管で出血がみられます。

  • 通常は、唇や舌で血管の拡張が認められることで、診断を下すのに十分な情報になります。

  • 医師は出血を止めるとともに、出血により貧血が起きている場合には、鉄剤の投与または輸血を行うことがあります。

この病気では、皮膚の下の血管が破れて出血することがあり、特に顔、唇、口や鼻の中、手足の指の先に小さな赤色ないし紫色の変色がみられます。大量の鼻出血もみられます。脳、肝臓、肺、脊髄と同様に、消化管や尿路の細い血管も影響を受けて、これらの場所で出血を起こすこともあります。出血が頻繁に生じると、多くの人では、鉄の血中濃度の低下(鉄欠乏性貧血)がみられます。

遺伝性出血性毛細血管拡張症は遺伝性疾患であり、変異遺伝子が子どもに受け継がれます。いくつかの遺伝子は特定されています。

遺伝性出血性毛細血管拡張症の症状

遺伝性出血性毛細血管拡張症の人の多くでは、動脈と静脈の間に異常な経路(動静脈奇形)ができています。このような異常な経路により、血流が一部の組織を迂回することがあり、結果、その組織では酸素が足りなくなります。例えば、動静脈奇形が脳や脊髄に発生すると、けいれん脳卒中、麻痺が生じ、肝臓に発生すると、肝不全になることがあります。血液の迂回や出血による貧血が起こると、心臓に大きな負担がかかることになり、 心不全に至ります。動静脈奇形が肺にあると、血液が肺を通過する過程で肺に十分な量の酸素が取り込まれないために、息切れや疲労感が生じたり、皮膚が青白くなったりすることがあります。また、小さい血栓でも脳に達する可能性があり、脳卒中一過性脳虚血発作を引き起こすことがあります。

遺伝性出血性毛細血管拡張症の例
遺伝性出血性毛細血管拡張症(顔)
遺伝性出血性毛細血管拡張症(顔)

この写真は、遺伝性出血性毛細血管拡張症の患者の顔をクローズアップしたもので、目に見える毛細血管(毛細血管拡張)が写っています。

DR P.MARAZZI/SCIENCE PHOTO LIBRARY

遺伝性出血性毛細血管拡張症(口)
遺伝性出血性毛細血管拡張症(口)

この写真には、遺伝性出血性毛細血管拡張症の患者の口唇や舌に生じた、目に見える毛細血管(毛細血管拡張)が写っています。

By permission of the publisher.From Deitcher S.In Atlas of Clinical Hematology.Edited by JO Armitage.Philadelphia, Current Medicine, 2004.

手の毛細血管拡張
手の毛細血管拡張

DR P.MARAZZI/SCIENCE PHOTO LIBRARY

遺伝性出血性毛細血管拡張症の診断

  • 医師による評価

  • 画像検査

  • ときに遺伝子検査

遺伝性出血性毛細血管拡張症の診断は通常、家族歴を検討し、顔面や口の周り、手の指、手のひら、足の指の血管に典型的な拡張があることを確認し、さらに鼻出血の病歴を確認した後に下されます。

診断に疑いがあれば、しばしば血液検査を行って、鉄欠乏性貧血について調べます。

いったん遺伝性出血性毛細血管拡張症の診断が下されると、脳、肺、肝臓、腸の画像検査を行って動静脈奇形の有無を調べます。

スクリーニング

動静脈奇形の家族歴がある場合、思春期を迎えた時点で、遺伝性出血性毛細血管拡張症のスクリーニングが行われます。スクリーニングでは通常、貧血を調べるための血液検査のほか、肺、肝臓、脳の画像検査が行われます。遺伝性出血性毛細血管拡張症に関連する遺伝子変異の一部が特定されているため、スクリーニングで遺伝子検査も行われることがあります。スクリーニング検査は通常、青年期の終わりに再び行われ、その後も5~10年毎に繰り返されます。

遺伝性出血性毛細血管拡張症の治療

  • 止血

  • 鉄サプリメント

  • ときに輸血

遺伝性出血性毛細血管拡張症の治療では、出血を止めるまたは予防することを目標とします。治療としては、圧迫、血管を狭くする外用薬(収斂剤)の使用、または鼻や消化管で血液が漏れている血管をレーザー光線で破壊する治療が行われます。重度の出血では、手術などのより体に負担の大きい手法が必要な場合があります。

肺の動静脈奇形や、ときに肝臓の動静脈奇形では、カテーテルと呼ばれる細くて柔軟な管を用いて問題のある血管に小型の器具を挿入します。この手技では、患者の動脈の1つからカテーテルを挿入し、動静脈奇形がある部位につながる動脈へとカテーテルを進めます。そして、小さなコイルまたはプラグをカテーテルを通じて挿入し、動静脈奇形からの出血を止めます。

出血は、ほぼ必ず再発し、鉄欠乏性貧血に至ります。遺伝性出血性毛細血管拡張症では、しばしば鉄剤の補充(経口または静脈内投与)が必要になります。輸血を繰り返す必要が生じることもあります。出血を最小限に抑えるために、血栓の分解を阻害する薬剤(アミノカプロン酸やトラネキサム酸など)の服用が必要になることがあります。

ベバシズマブ、パゾパニブ、ポマリドミド、サリドマイドなどの他の薬剤によって異常な血管の数や密度を減らすことができます。これらの薬のうち、鼻と消化管の出血の発生頻度を減らすことが示されているのは、ベバシズマブだけです。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  1. CureHHT:遺伝性出血性毛細血管拡張症に関する一般的な情報(研究および支援に関するリソースを含む)

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