中枢性尿崩症

(バソプレシン感受性尿崩症)

執筆者:John D. Carmichael, MD, Keck School of Medicine of the University of Southern California
レビュー/改訂 2021年 3月 | 修正済み 2022年 9月
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やさしくわかる病気事典

中枢性尿崩症(にょうほうしょう)は、バソプレシン(抗利尿ホルモン)の欠乏のために非常に薄い尿が過剰につくられる病気です(多尿症)。

  • 中枢性尿崩症には、脳腫瘍、脳の損傷や脳の手術、結核、他のいくつかの病気など、複数の原因があります。

  • 主な症状は、強いのどの渇きと多尿です。

  • 診断は、尿検査、血液検査、水制限試験に基づいて下されます。

  • 中枢性尿崩症の患者には、通常、バソプレシンやデスモプレシンという薬が投与されます。

甲状腺の概要も参照のこと。)

バソプレシンは視床下部(下垂体のすぐ上に位置する脳内の部位)でつくられるホルモンで、下垂体の後葉がその貯蔵と分泌を担っています。バソプレシンは、つくられる尿の量を減らすよう腎臓に信号を送ることで、体液量の調節を助けます。尿の量を増加させる物質を利尿薬と呼ぶことから、バソプレシンは抗利尿ホルモンと呼ばれています。

中枢性尿崩症の原因

中枢性尿崩症の原因は、バソプレシンの欠乏です。欠乏の原因には以下のものがあります。

  • 遺伝

  • 他の病気

  • 原因不明

そのほかに中枢性尿崩症の原因となる病気には、視床下部や下垂体の手術による偶発的な損傷、頭蓋底の骨折をはじめとする脳損傷、腫瘍、サルコイドーシス結核、動脈瘤(動脈壁の隆起)や脳につながっている動脈の閉塞、脳炎や髄膜炎、まれな病気であるランゲルハンス細胞組織球症などがあります。

腎性尿崩症は別の種類の尿崩症で、バソプレシンの量は十分にあるにもかかわらず、腎臓に異常があるため、バソプレシンに反応できない病態です。

中枢性尿崩症の症状

症状はいずれの年齢でも、徐々にあるいは突然発生します。多くの場合、以下のような症状だけがみられます。

  • 強いのどの渇き

  • 尿の過剰産生

排尿回数が過度に増え、夜間にトイレにいくことが多くなります。尿として失われた水分を補うために、1日に約3~30リットルもの水を飲むことがあります。氷水がよく好まれます。水分を補充できないと、すぐに脱水になって低血圧とショック症状を起こすおそれがあります。継続的に薄い尿が大量に排出されますが、特に夜間に著しくなります。

中枢性尿崩症の診断

  • 水制限試験

患者に大量の排尿がみられる場合、医師は尿崩症を疑います。糖尿病(過度の排尿を引き起こす原因としてより一般的にみられます)の疑いを否定するために、最初に尿糖の検査が行われます。血液検査ではナトリウムの高値のほか、多くの電解質が異常値を示します。

中枢性尿崩症の最良の診断方法は水制限試験です。水制限試験では、約12時間にわたって定期的に尿の量や血液中の電解質濃度、体重を測定しますが、その間の水分摂取は禁止されます。検査の間、患者の状態が注意深くモニタリングされます。12時間が経過したら(あるいは血圧の低下、心拍数の増加、または5%以上の体重減少がみられたらすぐに)、検査を中止してバソプレシンを注射します。バソプレシンに反応して排尿の増加が止まり、尿が濃くなり始め、血圧が上昇し、心拍数が正常に近くなった場合は、中枢性尿崩症と診断されます。注射後も排尿の増加が続き、尿は薄いままで、血圧や心拍数も変化しない場合は、腎性尿崩症と診断されます。

中枢性尿崩症の治療

  • デスモプレシン

デスモプレシン(作用がより長く続くバソプレシン)は、1日2回の鼻腔スプレーのほか、ときに錠剤または皮下注射や静脈内注射で投与されることもあります。投与量は体の水分バランスと正常な尿量を維持できるように調節されます。バソプレシンを過剰に使用すると、体液が貯留し、むくみなどの問題が生じるおそれがあります。手術中または意識不明の中枢性尿崩症の患者には、バソプレシンが注射されます。

中枢性尿崩症は、クロルプロパミド、カルバマゼピン、クロフィブラート、サイアザイド系利尿薬など、バソプレシンの生産を刺激する薬によって制御できる場合もあります。しかし、これらの薬では重症の尿崩症の症状を解消することはできません。

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