シゾイドパーソナリティ障害は、社会的関係から距離を取ることと全般的な無関心、また対人関係での感情表現の少なさの広汎なパターンを特徴とします。
シゾイドパーソナリティ障害の患者は、他者との親密な関係に対して関心がないようにみえ、一人でいることを好みます。
シゾイドパーソナリティ障害の診断は、社会的関係から距離を取ることと無関心、また感情表現の少なさなどの、特定の症状に基づいて下されます。
社会的技能を身に付けることに焦点を当てた認知行動療法がこの障害の患者を変化させるのに有用な場合があります。
パーソナリティ障害(人格障害とも呼ばれます)とは、本人に重大な苦痛をもたらすか、日常生活に支障をきたしている思考、知覚、反応、対人関係のパターンが長期的かつ全般的にみられる人に対して用いられる用語です。
シゾイドパーソナリティ障害の患者は、他者と意味のある関係をもつことに困難を抱えています。
シゾイドパーソナリティ障害は米国の一般集団の約3~5%にみられます。男性で若干多くみられます。
他の病気もしばしば認められます。シゾイドパーソナリティ障害患者の最大半数がうつ病を少なくとも1回経験しています。患者はしばしば他のパーソナリティ障害ももっています。最も多いのは以下のものです。
シゾイドパーソナリティ障害の原因
シゾイドパーソナリティ障害の発症には遺伝子が一定の役割を果たしていると考えられています。この障害は、統合失調症や統合失調型パーソナリティ障害の家族がいる人でより多くみられる場合があります。
小児期に養育者が感情的に冷たい、ネグレクトする、そしてよそよそしい人物であったことが、シゾイドパーソナリティ障害の発症に関わっている可能性があります。そのような養育者をもつことで、他者との人間関係とは満足の得られるものではないという子どもの感じ方が助長される可能性があります。
シゾイドパーソナリティ障害の症状
他者からの孤立
シゾイドパーソナリティ障害の患者は、近親者も含め、他者と親密な関係をもちたいという欲求がないようにみえます。患者には、ときに第1度近親者(親や兄弟など)がいる以外、親しい友人や相談相手がいません。デートすることはまれであり、結婚しないこともよくあります。患者は一人でいることを好むため、他者との交流の必要がない活動や趣味(コンピュータゲームなど)を選ぶ傾向があります。
他者との性行為に対する関心は、あるとしてもごくわずかです。また患者は感覚的、身体的体験による楽しさ(砂浜での散歩など)をあまり感じないようにみえます。
シゾイドパーソナリティ障害の患者は、他者が自分のことをどのように考えているかについて、それがよいことであれ、悪いことであれ、悩まないようにみえます。無関心であるように、または自分のことに没頭しているようにみえることがあります。普通の社会的行動様式に気づかないため、社会的に不器用にみえることがあります。
感情表現の少なさ
シゾイドパーソナリティ障害の患者は、社会的状況に反応したり(例えば、微笑んだり、頷いたりすることにより)、感情を示したりすることがまれです。患者は、挑発された場合でも、怒りを表すことに困難があります。重要なライフイベントに適切に反応することがなく、状況の変化に対する反応が受け身にみえることがあります。そのため、自分の人生に方向性をもっていないようにみえることもあります。
まれに、このような患者が安心して自分の内面をさらけだす場合、患者は(特に社会的交流において)苦痛を感じていることを認めます。
症状の持続
シゾイドパーソナリティ障害の症状は時間が経過しても同じ状態にとどまる傾向があり、他のパーソナリティ障害よりもその傾向がみられます。
シゾイドパーソナリティ障害の診断
具体的な診断基準に基づく医師による評価
パーソナリティ障害の診断は、通常は米国精神医学会が発行している精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)第5版(DSM-5)に基づいて下されます。
シゾイドパーソナリティ障害の診断を下すには、以下の4つ以上によって示されるように、社会的関係から距離を置くこととそのような関係に対する全般的な無関心、また人付き合いで感情を表すことの少なさが持続的に認められる必要があります。
家族も含め、親密な関係を求めたり、楽しんだりすることがない。
一人で活動することを強く好む。
他者との性的活動に対する興味がほとんどなく、あるとしてもごくわずかである。
楽しみを得る活動がほとんどない。
場合により第1度近親者がいること以外に、親しい友人や相談相手がいない。
他者からの賞賛や批判に対して無関心であるようにみえる。
感情的に冷めていて、無関心であり、出来事への反応や人付き合いにおいて感情を表さない。
また、症状は成人期早期までに始まっている必要があります。
シゾイドパーソナリティ障害の治療
社会的技能に焦点を合わせた認知行動療法
シゾイドパーソナリティ障害の一般的治療は、すべてのパーソナリティ障害に対するものと同じです。
シゾイドパーソナリティ障害の患者はよそよそしく、無関心なため、医師が患者と協力的で互いを尊重し合う関係を築くことが困難になります。協力関係を築き、患者が治療に参加するのを促すために、医師は、他者との交流の必要がない活動を好む人にアピールする話題(切手収集など)について話し合おうと努めることもあります。
シゾイドパーソナリティ障害に対する精神療法または薬物療法の効果については、情報があまりありません。
社会的技能を身に付けることに焦点を当てた認知行動療法が患者を変化させるのに有用な場合があります。例えば、患者は社会的手がかり(言葉によるものと、顔の表情や身振りなどの言葉によらないもの)をどうやって認識するのかを学ぶことができます。