乾癬性関節炎は、脊椎関節炎の1つで、皮膚または爪に乾癬がある人の一部で発生する関節炎の一種です。
関節の炎症が、乾癬のある人に発生することがあります。
炎症がよくみられる関節は、股関節、膝関節、手足の指などです。
診断は症状に基づいて下されます。
非ステロイド系抗炎症薬、疾患修飾性抗リウマチ薬(メトトレキサートなど)、シクロスポリン、腫瘍壊死因子阻害薬が役立ちます。
乾癬性関節炎は、関節リウマチと似ていますが、関節リウマチに特徴的な抗体は生産されません。乾癬性関節炎は、乾癬(皮膚の病気で、鱗のような赤い発疹が起こり爪が厚くなって小さなくぼみができ、それが繰り返される)の患者の約30%に発生します。特定の遺伝子(HLA-B27)をもつ人と、この病気にかかった家族がいる人は、脊椎の乾癬性関節炎のリスクが高まります。乾癬性関節炎の原因は不明です。
乾癬性関節炎の症状
乾癬性関節炎の炎症は、しばしば手足の指の先端に最も近い関節に起こりますが、股関節、膝関節、脊椎などの他の関節にもよく起こります。多くの場合、腕の関節の方がより影響を受けます。背中が痛むことがあります。
炎症が長引くと、関節が腫れて変形することがあります。乾癬性関節炎は、関節リウマチと比べて、関節を非対称性(体の左右の片側が反対側よりも影響が大きい)に侵すことが多く、より少ない関節に生じます。腱や靱帯が関節の周囲で骨に付着している部分で炎症を起こすことがあります(付着部炎と呼ばれます)。一部の乾癬性関節炎患者では線維筋痛症もみられることがあり、これは筋肉痛、関節のこわばり、疲労を引き起こします。
乾癬の発疹が現れるのは、関節炎が発生する前の場合も後の場合もあります。ときに発疹は、頭皮やへそ、殿部の後ろと太ももの間などの皮膚の谷間に隠れているため、気づかれないことがあります。皮膚と関節の症状が同時に現れたり消えたりすることもあれば、そうでないこともあります。関節の症状より皮膚の症状が重いこともあれば、関節の症状の方が重いこともあります。
この画像には、乾癬性関節炎患者の指先に最も近い関節(遠位指節間関節)の腫れが写っています。
Image courtesy of Kinanah Yaseen, MD.
この写真には、乾癬性関節炎の患者に生じた指炎(ソーセージ指と呼ばれます)が写っています。ソーセージ指と呼ばれるのは、指が腫れることによってソーセージのような外観を呈することに由来しています。爪の陥凹や皮膚に生じたサーモン色の斑もみられます。
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この写真には、乾癬の患者の頭皮が、赤くカサカサして肥厚している様子が写っています。
DR P.MARAZZI/SCIENCE PHOTO LIBRARY
この写真には、乾癬の患者の肘に生じた、銀白色のうろこ状のものに覆われた赤い斑が写っています。
SCIENCE PHOTO LIBRARY
乾癬性関節炎の診断
乾癬性関節炎の予後(経過の見通し)
乾癬性関節炎では、炎症を起こす関節が関節リウマチよりも少ないため、通常、予後は関節リウマチよりも良好です。それでも、関節がひどく損傷する可能性もあります。
乾癬性関節炎の治療
疾患修飾性抗リウマチ薬
アプレミラスト
腫瘍壊死因子阻害薬
ウステキヌマブ、セクキヌマブ、イキセキズマブ、アバタセプト
乾癬性関節炎の治療では、発疹を抑え、関節の炎症を軽減することを目標とします。関節リウマチの治療に効果的ないくつかの薬(表「関節リウマチの薬」を参照)、特に非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD、特にメトトレキサート)、免疫抑制薬のシクロスポリン、および生物学的製剤が乾癬性関節炎の治療にも使用されます。
アプレミラストは、乾癬の治療に使用される効果的な内服薬であり、関節炎の治療に役立つ可能性があります。
生物学的製剤は生物由来の材料から作られ、免疫系に関与する特定の化学物質を阻害します。具体的には、注射または点滴で投与する腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬(アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、セルトリズマブ ペゴル、ゴリムマブ、グセルクマブ)、注射で投与するウステキヌマブ、セクキヌマブ、イキセキズマブ、注射または点滴で投与するアバタセプトなどがあります。乾癬性関節炎にはTNF阻害薬が特に効果的です。
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
米国関節炎財団(Arthritis Foundation):乾癬性関節炎や他の種類の関節炎と利用可能な治療法に関する情報や、生活習慣に関するアドバイス、その他の情報源