ビル関連疾患は、現代の気密性の高いビル内の物質にさらされることが原因で、肺や体の他の部位が損傷される病気です。
ビル関連疾患は、換気が不十分な気密性が高いビル内の物質にさらされることが原因で発生します。
症状は原因物質によって様々ですが、発熱、呼吸困難、鼻水や鼻づまり、頭痛、皮膚の異常、集中力の低下などがみられます。
診断には、一般にビル内の空気質の評価や、ビル関連疾患の症状がみられる人の数の調査も含まれます。
治療としては、一般にビルからの退去やビル内の空気質の改善が行われます。
(環境性肺疾患の概要も参照のこと。)
ビル関連疾患は、気密性を高めることによりエネルギー効率を高めた現代のビル環境に原因がある病気の総称です。このようなビルの特徴は、窓が密閉されていることと、空気の循環を暖房・換気・空調システム(HVAC)に依存していることです。ビル関連疾患のほとんどが一般のオフイスビルで発生しますが、共同住宅、一戸建て住宅、学校、博物館、図書館でもみられます。
ビル関連疾患には、以下のものがあります。
特異的なもの
非特異的なもの
特異的なビル関連疾患
特異的なビル関連疾患とは、ビル環境にかかわる曝露と発症との関係が証明されている病気です。例えば以下のものがあります。
吸入による発熱は、有機物(炭素を含む物質からなり、生物に由来するもの)のエアロゾルや粉塵を吸い込むことが原因で生じる発熱です。また、金属や高分子化合物を含んだ蒸気を吸い込んで発熱をきたすこともあります。有機粉塵による中毒症候群(organic dust toxic syndrome)という用語は、細菌で汚染された有機ガスにさらされた人にみられるインフルエンザ様の症状を指す言葉として用いられています。中毒性肺炎(toxic pneumonitis)という表現がよく用いられますが、より広い範囲の病態を指します。症状として、発熱、頭痛、全身のだるさ(けん怠感)などがあります。曝露から4~12時間以内に症状が現れます。
加湿器熱は、一般のビルなどで加湿器やその他の換気装置が細菌や真菌の温床となり、これらの汚染物質がエアロゾル化されて空気中にばらまかれることで発生します。加湿器熱は、吸入による発熱の一種です。加湿器熱の患者では、微熱、けん怠感、せき、息切れなどがみられます。例えば、週末にそのビルから離れた後など、曝露がなくなると症状が改善することで、原因が疑われることがよくあります。この病気は突然現れて、通常は数日間続きます。症状がわずかなこともあれば、まったくないこともあります。また、集団発生が一般的です。この病気は、初回の曝露時に発生することがあります。
症状が続く場合は、その原因が感染症か、別の病気かを判定するための検査が必要になる場合があります。一般に換気設備のメンテナンスを十分に行うことで、吸入による発熱は予防できます。
非特異的なビル関連疾患
非特異的なビル関連疾患とは、ビル環境に関連する曝露と発症との関係が証明しにくい病気です。
集団発生の場合もあれば、1人のみに発生する場合もあります。ビル内で集団発生した病気に対しては、シックハウス症候群という病名が使用されてきましたが、この病名の使用は専門家の間ではもはや支持されていません。ビル関連疾患の症状は、一般的なものであることが多く、次のようなものが考えられます。
目のかゆみ、ヒリヒリ感、ドライアイ、涙目
鼻水または鼻づまり
のどの痛みまたは締めつけられる感じ
かゆみを伴う皮膚の乾燥または原因不明の発疹
頭痛、嗜眠、または集中力の低下
屋外から新鮮な空気を十分に取り込めないことによる、高温、多湿、換気不良などのビル関連因子によって、症状を説明できると考えられる例もあります。女性、アレルギーがある人、身体感覚が敏感な人、症状を心配しがちな人、不安または抑うつがある一部の人は、ビル関連疾患にかかる可能性が高くなります。
ビル関連疾患の診断
ときに、空気質の検査または空気中の汚染物質の特定
空中に浮遊する微生物を検出する調査には、費用と時間がかかりますが、特定のビル関連疾患が疑われる場合には、空気の汚染源を明らかにするためにこのような調査が必要になります。
非特異的なビル関連疾患の診断に使用できる特別な臨床検査はありません。ビル内の空気質の検査結果に加え、ビル入居者に同様の症状が高い割合でみられれば、ビル関連因子によって問題が起こっていると推測できます。