E型肝炎は、E型肝炎ウイルスによる肝臓の炎症です。
E型肝炎は、通常、感染した人の便で汚染されたものを摂取したときに感染します。
E型肝炎は、食欲不振、全身のけん怠感、黄疸など、ウイルス性肝炎の典型的な症状を引き起こします。
E型肝炎の診断は、血液検査の結果に基づいて下されます。
E型急性肝炎に対する特別な治療法はありませんが、ほとんどの患者が完治します。
(肝炎の概要、急性ウイルス性肝炎の概要、慢性肝炎の概要も参照のこと。)
E型肝炎が慢性化することは通常ありませんが、免疫機能が低下している人(HIV感染症の人や、がんに対する化学療法の薬など免疫機能を抑制する薬を使用している人など)では慢性化することがあります。
E型肝炎の感染
E型肝炎の感染は、感染した人の便で汚染されたものを別の人が摂取したときに主に起こります(糞口感染と呼ばれます)。
E型肝炎は、ときに流行することがあり、その多くは便に汚染された水が原因です。これまで中国、インド、メキシコ、ペルー、ロシア、パキスタン、中央アフリカ、北アフリカで流行が起きたことがありますが、米国や西欧では起こっていません。効果的な衛生管理対策が行き届いている国では、感染例の大半が安全な水を確実に得られない公衆衛生状況がよくない国から帰ってきた旅行者で発生しています。
E型肝炎の症状
E型肝炎患者では、急性肝炎の典型的な症状がみられます。具体的な症状としては以下のものがあります。
食欲不振
全身のだるさ(けん怠感)
吐き気と嘔吐
発熱
腹痛
黄疸(皮膚と白眼が黄色に変色すること)
黄疸が発生する理由は、損傷を受けた肝臓が血液から正常にビリルビンを取り除くことができないためです。そうしてビリルビンが血液中に蓄積し、皮膚に沈着して、かゆみが生じます。ビリルビンは黄色い色素で、赤血球の正常な分解の際に老廃物として作られます。
まれではありますが、特に妊婦において、E型肝炎が重度の症状を引き起こすことがあります。妊婦では、肝不全の徴候を伴う重度の肝炎(劇症肝炎)のリスクと死亡のリスクが上昇します。
E型肝炎の診断
血液検査
黄疸などの典型的な症状に基づいて肝炎が疑われます。
肝炎の検査は、通常、肝臓がどの程度機能しているかと肝傷害の有無を評価する血液検査(肝臓の検査)により開始します。肝臓の検査では、肝酵素や肝臓で作られるその他の物質の濃度を測定します。この検査は、肝傷害の重症度の判定に役立つことがあります。
検査の結果から肝炎が疑われる場合は、他の血液検査を行って肝炎ウイルスの有無を調べます。この血液検査では、特定のウイルスの一部(抗原)や、体内でウイルスを攻撃するために作られた特定の抗体のほか、ときにはウイルスの遺伝物質(RNAまたはDNA)を特定できます。
E型肝炎の検査は常に行われるものではありません。しかし、以下の両方に当てはまる場合、利用可能であれば、E型肝炎ウイルスに反応して患者の免疫系によって作られた抗体を検出するための血液検査を行います。
検査でA、B、C型肝炎が検出されないが、ウイルス性肝炎の典型的な臨床像がみられる。
E型肝炎の流行地域に最近旅行した。
E型肝炎の予防
十分な公衆衛生と個人の衛生管理が、E型肝炎の予防に役立ちます。公衆衛生が不十分な国に旅行する人は、浄化されていない水を飲まないようにすることで感染のリスクを減らすことができます。水の煮沸と塩素消毒によって、E型肝炎ウイルスは不活化します。
新しいワクチンが利用可能ですが、米国では利用できません。E型肝炎がよくみられる中国で利用可能です。
E型肝炎の治療
一般的な対策
E型慢性肝炎に対してときにリバビリン
飲酒によってさらに肝臓が障害されるため、E型肝炎の患者は禁酒すべきです。特定の食べものを避けたり活動を制限したりする必要はありません。
E型急性肝炎に対する特別な治療法はありません。
かゆみが生じた場合、経口投与するコレスチラミンによってかゆみが緩和することがあります。
リバビリン(抗ウイルス薬)の12週間の投与は、E型慢性肝炎に対する効果的な治療となる可能性がありますが、さらなる研究が必要です。
ほとんどの場合、黄疸が消えれば安全に仕事に復帰することができます。