診療記録(カルテ)の取扱い

執筆者:Michael R. Wasserman, MD, California Association of Long Term Care Medicine
レビュー/改訂 2023年 4月
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電子媒体や紙のファイルで医療機関に保管されている自分の診療記録には、すぐにアクセスできないことあります。しかし米国では、実際のファイル自体は医師または医療機関が所有しているものの、個人の医療情報を「所有」しているのは患者本人と考えられていて、これには情報を閲覧する権利、情報のコピーを得る権利、誤りの是正を求める権利も含まれています。一般には、明示的な許可なく他人の診療記録を閲覧することは認められませんが、その人に医療を提供する上で必要な場合は例外とされています(例えば、その人にケアを提供している病院スタッフや、主治医から相談を受けた専門医は、都度許可を得ることなく、その人の診療記録を閲覧することができます)。また、自分の診療記録をほかの人が閲覧ことを書面で許可することもでき、これは家族がケアに関する決定に参加できるようにする上で重要になってきます。裁判所の命令で記録のコピーや要約の提示が求められることもありますが、それは特定の法的状況下に限られるため、大半の人は経験することがありません。

自分の診療記録について自身への開示や他の医療専門職への送付を依頼する場合は、その情報提供を許可する書面に署名します。その後、通常は診療所または病院のスタッフが記録のコピーを発行するか、記録の全部または一部をまとめた要約を作成します。一般に、必要になるのは記録全体ではなく、特に有用な医療情報だけで、記録にはその人にとって有用でない情報も数多く含まれていることがあります。(医療の最大限活用に関する序論も参照のこと。)

必要なことを常に把握しておくために、特に重要な情報について個人的な医療記録をつけるべきです。記憶に頼ってはいけません。予防接種の記録は小児期の間だけとっておくのが通例でしたが、生涯を通じて残しておくべきです。服薬計画は自分で紙に書き留めるか、誰かに書いてもらって、診療記録と一緒に保管しておきます。また、緊急の医療が必要になった場合に備えて、服薬計画のコピーを常に手元に置いておくべきです。この情報は投薬計画に変更があれば更新できます。検査結果のコピーも、後の参考になるため診療記録とともに保管しておきましょう。重要な検査結果(例えば、X線、心電図、心エコー検査、大腸内視鏡検査)のリストを保管しておくことも非常に役に立つ可能性があります。また、診療記録と一緒に症状を記録した日記をつけるとよいかもしれません。

大半の医療情報はコンピュータのソフトウェア、インターネット上のプログラム、またはスマートフォンのアプリで記録することができますが、ファイルボックスやバインダーを使用することもできます。さらに、多くの医療機関では安全なポータルサイトが提供されていて、アクセスすることで自身の臨床検査結果、処方情報、および受診結果の概要を閲覧することができます。

個人的な医療記録に盛り込むべき項目

  • 重大または慢性的な医学的問題

  • 現状の服薬計画

  • その他の治療

  • 薬に対するアレルギー反応

  • 手術などでの入院(日付、場所、担当医の名前、診断)

  • 臨床検査やその他の検査の結果

  • 家族歴

  • 予防接種(日付も)

  • 医療機関の受診(日付、理由、検査結果、診断、指示)

  • 事前指示書のコピー

  • 請求、保険金請求、支払い情報

診療記録のコピーをとっておくと、医療への参加に役立ちます。例えば、医療専門職に問題をうまく説明するのに役立ちます。

医師とのコミュニケーションにおけるプライバシーは、秘密保持に関する法律や倫理原則によって守られます。それらの法律は、医師や病院が保管している診療記録の内容も保護しています。この法律の1つに、医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律(Health Insurance Portability and Accountability Act:HIPAA)があります。HIPAAでは、医療情報の開示には通常、患者の書面による同意が必要であると規定されています。米国の医療機関では、HIPAAとプライバシー権について承知していることを確認する書面に待合室で署名するよう求められます。その書面には、医療情報を利用したり共有したりする方法も記載されています。HIPAAでは、特定のケースにおいて医療情報を共有することが認められています。例えば、以下の目的で共有できます。

  • 治療を調整して円滑に進めるため(複数の医療専門職や複数の医療機関が関与している場合に特に重要)

  • 医師、その他の医療専門職、病院が医療費の支払いを受けられるようにするため

このように、支払いを認めるために必要な情報が健康保険業者と共有される可能性があり、健康保険業者が保険請求の条件として医療情報の提出を要求する場合もあります。この情報を共有するには患者の同意も得る必要があり、通常は医療が提供される前に確認されます。患者の書面での同意がない限り、その人の雇用主や広告業者にその人の医療情報が共有されることはありません。

現在、診療記録を電子的に記録・保管する医療従事者が増えています。これにより、同じ患者をみている複数の医療従事者が、より簡単かつ正確に、その患者に関する情報を共有できる可能性があります。

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