強膜炎

執筆者:Melvin I. Roat, MD, FACS, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 2021年 4月
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やさしくわかる病気事典

強膜炎は、強膜(眼を覆う白く丈夫な線維性の組織)の重度で破壊的な炎症で、視力を脅かすことがあります。

  • 強膜炎は、ときに、全身性の炎症性疾患がある人に起こることがあります。

  • 主要な症状は、眼の奥深くでうずくような痛みです。

  • 診断を確定するため、ときに画像検査が行われます。

  • 治療は一般に、コルチコステロイドの投与から始められます。

強膜炎は、30~50歳の女性に最も多くみられます。3分の1の患者では両眼に発生します。強膜炎は、関節リウマチ全身性エリテマトーデス、またはその他の自己免疫疾患免疫系が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気)に伴って起こることがあります。強膜炎の約半数は、原因不明です。(結膜と強膜の病気の概要も参照のこと。)

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強膜炎の症状

強膜炎の症状としては眼の痛み(典型的には深いところの痛み)があり、痛みは激しく常にみられることが多く、その結果眠れなかったり、食欲が落ちたりします。このほか眼の圧痛、涙の量の増加、羞明(しゅうめい、明るい光に過敏になる)といった症状が出ます。眼が赤く充血し、一部または全体に紫がかった色がみられることもあります。

まれに、炎症の程度がひどく、眼球に穴ができて(穿孔[せんこう])、摘出しなくてはならなくなることもあります。このように激しい炎症は、壊死(えし)性強膜炎と呼ばれます。壊死性強膜炎の患者は多くの場合、他の器官にも自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ多発血管炎性肉芽腫症結節性多発動脈炎再発性多発軟骨炎)などの病気を長年抱えています。

強膜炎の診断

  • 医師による症状と眼の外観の評価

  • ときに画像検査

強膜炎の診断は、症状と細隙灯(さいげきとう)顕微鏡による観察所見に基づいて下されます。ときに、眼の後ろ側に炎症が起こることがあり(後部強膜炎)、その場合、後部強膜炎の診断を確定するために超音波検査またはCT検査が必要になることがあります。

強膜炎の予後(経過の見通し)

強膜炎になると、約14%の患者では1年以内にかなりの視力低下がみられ、約30%の患者では3年以内にかなりの視力低下がみられます。壊死性強膜炎では、約50%の患者が10年以内に、多くの場合は心臓発作によって、死に至ります。

強膜炎の治療

  • コルチコステロイド

  • ときに免疫抑制薬

  • ときに外科的修復

強膜炎の治療では、通常、経口コルチコステロイド(プレドニゾン[日本ではプレドニゾロン]など)が処方されます。非常にまれですが、軽症であれば非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の内服の治療だけで済むこともあります。自己免疫疾患がある場合やコルチコステロイドの効き目がない場合は、メトトレキサート、シクロホスファミド、またはリツキシマブなどの免疫の働きを抑える薬(免疫抑制薬)が必要になることもあります。

穿孔のリスクがある人には外科的修復が必要な場合があります。

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