常在菌叢

執筆者:Larry M. Bush, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University
レビュー/改訂 2022年 8月 | 修正済み 2022年 9月
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    健康な人は、皮膚、鼻、口、のど、大腸、腟など、体の非無菌状態の部位に生息している(コロニーを作っている)微生物の大半とうまく共存しています。常に体内の決まった部位に集団で存在している微生物を「常在菌叢(じょうざいきんそう)」と呼びます。常在菌叢にいる細菌の数は、人の体を構成するすべての細胞の数の10倍に上ります。人体には数時間から数週間しかとどまらず、持続的に定着はしない微生物もいて、それらは一過性の細菌と呼ばれます。

    それぞれの部位の常在菌叢は、何種類かの微生物で構成されています。なかには常に数百種類の微生物がコロニー(集落)を作っているような部位もあります。食事、抗菌薬の使用、衛生状態、大気汚染、衛生習慣などの環境要因によって、各人がもつ常在菌の種類は変わってきます。常在菌叢は、例えば皮膚の洗浄や抗菌薬の投与などによって一時的に変化しますが、通常はすぐにもとの状態に戻ります。

    そして、常在細菌は病気を引き起こすどころか、病気の原因となる微生物から人間の体を守ってくれることも多いのです。しかし、特定の状況では、各人の常在菌の一部が病気を起こすこともあります。例として、次のような状況があります。

    • 抗菌薬の使用

    • けがまたは手術

    • 免疫系の機能低下(エイズやがんの患者、コルチコステロイドの投与や化学療法を受けている人などでみられる)

    感染症の治療に使用された抗菌薬によって、ある特定の常在菌が大部分死滅すると、それに代わって他の種類の常在細菌や真菌が旺盛に増殖することがあります。例えば、女性が膀胱(ぼうこう)感染症の治療で抗菌薬を服用している場合に、その抗菌薬が常在菌叢の一部を死滅させてしまい、その結果、腟にいる真菌が増殖して、腟の真菌感染症になることがあります。

    けがや、ときに手術によって、細菌が存在しないはずの領域に常在菌叢が侵入し、感染をもたらすことがあります。例えば、皮膚に切り傷があると、皮膚の常在菌叢が皮下に感染をもたらすことがあります。大腸の手術を受けると、腸内の常在菌叢が腹部の無菌領域にこぼれ、非常に重篤な感染症を引き起こすことがあります。

    感染症の概要も参照のこと。)

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