原発性肝臓がんとは、肝臓から発生するがんのことです。最もよくみられる原発性肝臓がんは肝細胞がんです。肝臓がんの初期には、通常は漠然とした症状(体重減少、食欲不振、疲労など)しかみられません。そのために診断が遅れることがよくあり、多くの場合、予後(経過の見通し)は不良です。
(肝腫瘍の概要も参照のこと。)
その他の原発性肝臓がん
その他の原発性肝臓がんはまれです。診断には通常、生検が必要です。この種のがんを発症した人の予後(経過の見込み)は、ほとんどの場合、よくありません。がんが広がっていなければ、切除が可能な場合があります。切除できる場合、数年以上にわって生存できる可能性があります。
胆管がん
特殊な肝細胞がん:fibrolamellar carcinoma
これは肝細胞がんの一種で、まれな病気です。通常は比較的若い成人に発生します。先行する肝硬変やB型またはC型肝炎によって発生するものではなく、その他の危険因子も知られていません。
Fibrolamellar carcinomaの患者は通常、他の種類の肝細胞がんの患者よりも経過が良好です。このがんを切除すれば、多くの人が数年にわたって生存します。
肝芽腫
このがんはまれですが、乳児では最もよくみられる原発性肝臓がんの1つです。ときに、より年長の小児にも発生することがあり、腫瘍からゴナドトロピンと呼ばれるホルモンが分泌されて、思春期が通常より早く始まること(早発思春期)があります。原因は特定されていません。
全身的な健康状態が悪化し、右上腹部にかたまりを触れることがあります。
血管肉腫
これは肝臓の血管から発生するまれながんです。血管肉腫は、ポリ塩化ビニル(PVC)の製造業務に従事する人が作業中に塩化ビニルにさらされることで起こる可能性があるほか、ヒ素への曝露が原因になることもあります。しかし多くの場合、原因を特定できません。
その他の原発性肝臓がんの診断
身体診察
血液検査と画像検査
ときに肝生検
肝芽腫は通常、乳児の右上腹部に大きなかたまりを触れ、健康状態が悪化している場合に疑われます。血液検査によるアルファ-フェトプロテイン(AFP)の測定と画像検査の結果が、診断を下すのに役に立つことがあります。肝臓がんがあると、AFP(胎児の未熟な肝細胞が正常時から作るタンパク質)の測定値が高くなります。
肝臓内の胆管がん、fibrolamellar carcinoma、肝芽腫、および血管肉腫は、肝生検(針で肝臓から小さな組織サンプルを採取して顕微鏡で観察する検査)によって診断されます。
肝臓の外にある胆管がんの診断は、特殊なX線検査(MRI検査や内視鏡的逆行性胆道膵管造影[ERCP]検査、経皮経肝胆道造影検査など)か手術によって下されるのが通常です。これらのがんになった人の3分の2では、がんが発見されたときにはすでに近くのリンパ節に広がっています。
その他の原発性肝臓がんの治療
がんの外科的切除
治療はほとんど効果がなく、大半の患者はがんが見つかってから数カ月以内に死亡します。しかし、がんが比較的早期に発見されれば、腫瘍を手術で切除することで、長期間の生存が得られる可能性があります。
さらなる情報
役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
米国がん協会(American Cancer Society):症症状、診断、病期分類、生存率を含めて肝臓がんに関する包括的な情報を提供しています。
米国肝臓財団(American Liver Foundation):肝臓の病気と健康のあらゆる側面について概要を示す地域教育プログラムを主催しています。また、サポートグループへのアクセス、医師を見つけるための情報、および臨床試験に参加する機会も提供しています。