18トリソミー

(エドワーズ症候群;Eトリソミー)

執筆者:Nina N. Powell-Hamilton, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 2021年 12月
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18トリソミーは,過剰な18番染色体によって引き起こされる病態で,通常は知的障害と出生時低身長のほか,重度の小頭症,心形成異常,後頭部突出,変形を伴う耳介低位,やつれたような特徴的顔貌などの様々な先天異常で構成される。出生前診断は細胞遺伝学的検査による;出生後診断は末梢血検査による。治療は対症療法による。

染色体異常症の概要も参照のこと。)

18トリソミーは出生6000人当たり1例の頻度で発生するが,自然流産となることが多い。95%以上の患児が完全な18トリソミーである。過剰染色体はほぼ全例で母親由来であり,母体年齢が高くなるにつれてリスクが増大する。男女比は1:3である。

18トリソミーの症状と徴候

出生前の病歴として胎動微弱,羊水過多,胎盤矮小,および単一臍動脈が認められる。出生前および出生時の体格が在胎期間に対して著明に小さく,筋緊張低下と骨格筋および皮下脂肪組織の著明な低形成を伴う。啼泣が微弱で,音に対する反応も弱い。眼窩上隆起が低形成で,眼瞼裂が短く,口と顎が小さく,これらの特徴が相まって,やつれたような顔貌を呈する。小頭症,後頭部突出,変形を伴う耳介低位,狭骨盤,および胸骨短小がよくみられる。

示指の第3指および第4指への重なりを伴う手の握りがしばしば認められる。しばしば第5指遠位屈曲線の欠如がみられる。余剰な皮膚の襞がよくみられる(特に頸部背面)。爪は低形成で,第1趾が短縮して,しばしば背屈している。内反足と揺り椅子状足底がよくみられる。また重度の先天性心疾患,特に動脈管開存症心室中隔欠損症がよくみられる。肺,横隔膜,消化管,腹壁,腎臓,および尿管でも形成異常の発生率が高い。男児では停留精巣がみられることがある。頻度の高い筋の異常として,腹直筋ヘルニア,腹直筋離開,その両方などがある。

18トリソミーの身体的特徴
揺り椅子状足底(先天性垂直距骨)
揺り椅子状足底(先天性垂直距骨)

    突出した踵骨および弯曲した足底の画像。

© Springer Science+Business Media

多指症を伴う手の握り
多指症を伴う手の握り

    この写真には,18トリソミー患児の手が写っている。手の握りと軸後性多指症に注目すること。

Image courtesy of Nina Powell-Hamilton, MD, FAAP, FACMG.

18トリソミーの耳介低位および手の握り
18トリソミーの耳介低位および手の握り

Image courtesy of the Centers for Disease Control and Prevention Public Health Image Library.

18トリソミーの揺り椅子状足底
18トリソミーの揺り椅子状足底

Image courtesy of the Centers for Disease Control and Prevention Public Health Image Library.

18トリソミーの手の握り
18トリソミーの手の握り

Image courtesy of the Centers for Disease Control and Prevention Public Health Image Library.

18トリソミーの診断

  • 出生前の絨毛採取および/または羊水穿刺で採取した検体を用いた核型分析,蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH),および/または染色体マイクロアレイ解析(CMA)による細胞遺伝学的検査

次世代シークエンシング技術も参照のこと。)

18トリソミーの診断は,出生後には外観的特徴から,出生前には超音波所見(例,四肢の異常と胎児発育不全)に基づき,あるいは母体血液検体に対する複数マーカーによるスクリーニングまたはセルフリー胎児DNAの分析による非侵襲的出生前スクリーニング(NIPS)によって疑うことができる。18トリソミーに対する非侵襲的出生前スクリーニングの感度および特異度は,21トリソミーに比べて低い。

確定診断は,出生前に羊水穿刺または絨毛採取で採取した検体の細胞遺伝学的検査(核型分析,FISH解析,および/または染色体マイクロアレイ解析)によって行うか,妊娠中に追加検査を希望しなかった女性では出生後に末梢血検査によって行う。絨毛採取によって18トリソミーが検出された場合,異数性が胎盤にはあるが胎児には検出できない,胎盤限局性モザイクをトリソミーが示している可能性があるため,羊水穿刺または出生後検査のいずれかによる精査が必要になることがある。

非侵襲的出生前スクリーニング(NIPS)に基づく疑い例,特にその結果が不確定ないし不明瞭な症例,非侵襲的出生前スクリーニングの陽性適中率が低い若年女性には確定診断検査を行い,また他の胎児染色体異常を診断することを目的として確定診断検査を行う。妊娠中絶などの管理に関する決定は,非侵襲的出生前スクリーニングの結果のみに基づいて行うべきではない。American College of Obstetricians and Gynecologists Committee on Practice Bulletins–Obstetrics,Committee of Genetics,およびSociety for Maternal–Fetal Medicineのセルフリー胎児DNA検査に関する2020年版Practice Bulletinも参照のこと。

18トリソミーの治療

  • 支持療法

18トリソミーの特異的な治療法はない。患児の半数以上が生後1週間以内に死亡し,1歳まで生存できる患児の割合も5~10%に過ぎないが,現在では18トリソミー患者が成人する例も報告されるようになっている。生存する小児には著明な発達遅滞と身体障害がみられるため,様々な合併異常を是正するために複数回の侵襲的処置を行うことについては議論がある。理学療法および言語療法への早期の紹介が重要である。家族に対する支援が極めて重要である。

合併症のスクリーニング

最近では,一部の合併異常の治療により一部の18トリソミー患者において生存期間が延長しているが,その結果として,固形腫瘍(例,肝芽腫ウィルムス腫瘍)のリスクが高いことが認識されるに至っている。それらの腫瘍と他の形成異常を早期発見することが治療(希望される場合)を成功させる上で重要であることから,定期的なサーベイランスが推奨される。その具体的内容は主に単一施設の専門家の意見に基づくものであるが,腫瘍とその他の合併症に対するサーベイランスプロトコルが公表されており,多くの専門医が妥当と考えている(1)。

スクリーニングで異常が検出された場合は,適切な専門医に紹介すべきである。

表&コラム

治療に関する参考文献

  1. 1.Kepple JW, Fishler KP, Peeples ES: Surveillance guidelines for children with trisomy 18.Am J Med Genet A 185(4):1294–1303, 2021.doi: 10.1002/ajmg.a.62097

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. American College of Obstetricians and Gynecologists Committee on Practice Bulletins–Obstetrics, Committee of Genetics, and the Society for Maternal–Fetal Medicine: Screening for fetal chromosomal abnormalities: ACOG practice bulletin, number 226 (2020)

  2. SOFT (Support Organization for Trisomy 18, 13, and Related Disorders): An organization providing resources, research information, and community and support services to people caring for others who have trisomy 18, 13, or another related chromosome disorder

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