酸塩基平衡の概要

血液のpHを調節する仕組みの1つには、肺からの二酸化炭素の放出が関与しています。二酸化炭素は弱い酸性の物質で、あらゆる細胞に必要な物質である酸素と栄養分が処理（代謝）された後の老廃物であり、細胞によって絶え間なく作られ、その後、細胞から血液中へと運ばれます。二酸化炭素は血液によって肺へ運ばれ、そこから体外へ呼気として吐き出されます。血液中に二酸化炭素がたまるに従って、血液のpHは下がります（酸性度は上昇します）。

脳は呼吸（換気）の速さと深さを調節することで、体外へ吐き出される二酸化炭素の量を調節します。吐き出される二酸化炭素の量と血液のpHは、呼吸が速く深くなると上昇します。呼吸の速さと深さを調節することで、脳と肺は分単位で血液のpHを調節することができます。

腎臓は、過剰な酸や塩基を排出することで、血液のpHを変化させることができます。腎臓は酸や塩基の排出量をある程度変えることができますが、腎臓での調節は肺よりゆるやかなペースで進むため、その調節が終わるまでには数日間かかります。

血液のpHを調節するもう1つの方法は、緩衝系という仕組みを利用するもので、これにより酸性またはアルカリ性への急激な変化から体を保護しています。pH緩衝系は、体内で自然に作られる弱い酸と弱い塩基で構成されています。pHが正常な状態では、これらの弱い酸と弱い塩基がペアになってバランスをとっています。pH緩衝系は、酸と塩基の比率を調整することで、溶液のpHの変動を最小限に抑えるよう化学的に作用します。

血液中の最も重要なpH緩衝系は、炭酸（血液中に溶けている二酸化炭素から形成された弱い酸）と重炭酸イオン（対応する弱い塩基）で構成されています。

アシドーシスとアルカローシスは、主な原因別に以下の種類に分類されます。

• 代謝性

• 呼吸性

代謝性アシドーシスと代謝性アルカローシスは、酸または塩基の生産量と腎臓からの排泄量のバランスが崩れることが原因で起こります。

呼吸性アシドーシスと呼吸性アルカローシスは、肺または呼吸器疾患によって二酸化炭素を吐き出す量が変化することが原因で起こります。

複数の酸塩基平衡障害が一度に現れることもあります。

酸塩基平衡に異常が生じると、代償機構が自動的に働き、血液のpHを正常に押し戻します。一般に、呼吸器系は代謝性の酸塩基平衡異常を代償し、代謝機構は呼吸性の酸塩基平衡異常を代償します。

始めは、代償機構によりpHが正常値近くに保たれます。そのため、血液のpH値が大幅に変化している場合、体の代償能力がなくなっていることを意味します。そのような場合、医師は直ちに酸塩基平衡異常の基礎にある原因を探し、治療します。