毛包炎とは,毛包の感染症である。診断は臨床的に行う。細菌性毛包炎の大半の症例に対する治療はムピロシンまたはクリンダマイシンの外用による。
(皮膚細菌感染症の概要も参照のこと。)
毛包炎の病因ははっきりしない場合が多いが,発汗,外傷,摩擦,および皮膚の被覆が感染を増悪させることが知られている。
細菌性毛包炎の原因菌は,通常は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)であるが,ときに緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(温浴毛包炎)やその他の微生物も報告されている。温浴毛包炎(hot-tub folliculitis)は,水の化学的処理が不十分であることが原因で発生する。
ざ瘡は非感染性の毛包炎の一種である。
毛包炎の症状と徴候
毛包炎の症状は,軽度の疼痛,そう痒,または刺激感である。
毛包炎の徴候は,毛包周囲の表在性膿疱または炎症性結節である。感染した毛は簡単に抜け落ちたり,患者が引っぱることで簡単に抜けたりするが,新たに丘疹が発生することが多い。
皮膚内で硬い毛が成長すると,慢性の軽い刺激感や炎症を来して,感染性毛包炎に類似することがある(須毛部仮性毛包炎[pseudofolliculitis barbae])。
毛包炎の診断
臨床的評価
毛包炎における主な皮膚所見は,膿疱および毛包周囲の炎症である。
微生物学的検査はルーチンに適応とはならない。
毛包炎の治療
外用抗菌薬
ときに抗菌薬の全身投与
大半の毛包炎は黄色ブドウ球菌(S. aureus)により生じるため,ムピロシンまたはクリンダマイシンの外用による治療が一般に効果的である。あるいは,シャワー時の過酸化ベンゾイル5%洗浄液の使用を5~7日間行ってもよい。皮膚が広範に侵されている場合は,全身療法(例,セファレキシン250~500mg,経口,1日3~4回,10日間)が必要になることもある。これらの対策で治癒に至らない場合,または毛包炎が再発する場合は,グラム陰性菌またはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S. aureus)(MRSA)が原因である可能性を除外するために,膿疱内容でグラム染色および培養を行うとともに,ブドウ球菌の鼻腔内保菌者である可能性を除外するために鼻腔培養を行う。
真菌性の毛包炎を除外するために,引き抜いた毛髪をKOH法により鏡検すべきである。
温浴毛包炎(hot-tub folliculitis)は通常,無治療でも消退する。しかし,再発を予防して他者への感染を防止するため,浴槽の水に対する十分な塩素処理が必要である。
要点
毛包炎は,多様な病原体によって引き起こされ,発汗,外傷,摩擦,および皮膚の被覆によって増悪する傾向がある。
細菌性毛包炎の原因菌は通常,黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)であるが,ときに緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(温浴毛包炎)であることもある。
大半のブドウ球菌性毛包炎は,ムピロシンまたはクリンダマイシンの外用により治療する。