酸塩基平衡における腎臓の役割の概要

腎臓は主に2つの方法,すなわち,尿から重炭酸イオン(HCO3-)を血液に再吸収する一方で,尿中に水素(H+)イオンを分泌することで,酸塩基平衡を維持しています。この再吸収量と分泌量を調節することにより,腎臓の細胞は血中のpHの均衡を維持しています。

腎臓に流入する血液は,ネフロンと呼ばれる何百万もの小さな機能単位に分配され,そこで絶えず血液の濾過が行われています。各ネフロンは糸球体(毛細血管の微小な塊)で構成されており,血液の濾過はここで始まります。血液が糸球体を通過する際,血漿の約5分の1が糸球体毛細血管から出て尿細管に入ります。尿細管は水や電解質のような良いものを再吸収し,老廃物や酸のような悪いものを排泄します。尿細管はいくつかの部分からなる構造で,近位曲尿細管,細い下行脚と太い上行脚をもつU字型のヘンレ係蹄,そして遠位曲尿細管から成り,遠位曲尿細管は再び上行した後,最終的な尿を集める集合管へとつながります。

それぞれの尿細管の内側は2つの表面をもつ刷子縁細胞で覆われています。1つは尿細管管腔に面する頂端面であり,微絨毛(溶質の再吸収を助けるために細胞表面積を増加させる小さな突起)に覆われています。もう1つは基底側面であり,ネフロンに沿って走る尿細管周囲毛細血管に面しています。

これより重炭酸イオンの再吸収のプロセスを説明しますが,濾液は糸球体を出ると,まず近位曲尿細管を通ります。この濾液には,最初は元の血漿と同じ濃度の電解質が含まれています。しかし,重炭酸イオン分子が刷子縁細胞の頂端面に近づくと,これは尿細管から吸収されたナトリウムイオンと交換に刷子縁細胞から分泌された水素と結合し,炭酸を形成します。ここで,尿細管の微絨毛内にサメのように潜んでいる炭酸脱水酵素4型と呼ばれる酵素が泳ぎ出し,炭酸を水と二酸化炭素に分解します。

陰性に荷電している重炭酸陰イオンが尿細管内から出られないのに対して,水と二酸化炭素は細胞膜を通過して細胞内に難なく拡散しますが,ここで炭酸脱水酵素2型が逆反応を促進し,両者を結合させて炭酸を形成し,炭酸は重炭酸と水素に解離します。基底側面にあるナトリウム重炭酸共輸送体は,重炭酸イオンとその付近のナトリウムを捕捉し,両者を血中に送り込みます。あるいは,アニオン交換輸送体が重炭酸イオン(HCO3-)と塩化物イオン(Cl-)を交換し,塩化物イオンを血流から細胞内に流入させます。このような様々な化学的作用により,尿細管内にある濾過された重炭酸塩の99.9%が効果的に血中に戻されます。

正電荷をもつ水素イオン(H+)は,自然には細胞膜を通過して尿中に出たがりません。そのため,押し出す必要があります。これには2つの機序があります。1つは,ナトリウム-水素の対向輸送です。頂端膜の輸送タンパク質は,細胞からの水素イオン(H+)と尿細管液中のナトリウムイオン(Na+)に結合します。尿細管液中のナトリウム濃度が高くなると,輸送タンパク質は小さな回転ドアのように回転し,H+を押し出してNa+を取り込みます。これは近位尿細管で起こる機序ですが,遠位曲尿細管と集合管では,α介在細胞が関与する別の機序があります。α介在細胞には別のポンプがあり,ATPのエネルギーを使って水素イオン(H+)を尿細管内に押し出します。

しかし,尿中に保持できる遊離水素イオン(H+)の量は限られています。というのも,H+が増えすぎるとpHが急速に低下しますが,尿細管が維持できる尿のpHは最低で約4.5だからです。したがって,この限界を超えてそれ以上の水素イオン(H+)を保持できるようにするために,尿には化学緩衝物質が含まれており,これが水素イオンと結合してpHの過度の低下を防いでいます。最も重要なのはアンモニア緩衝系であり,この系において腎臓はアンモニア生成と呼ばれる過程を利用しています。アンモニア生成は,近位曲尿細管細胞がグルタミンなどのアミノ酸をアンモニア(NH3)に分解することで始まります。アンモニアは脂溶性であるため,尿細管内に自由に拡散し,そこで水素イオンと結合してアンモニウムイオン(NH4+)を形成します。アンモニウムイオン(NH4+)は尿中で塩化物イオン(Cl-)と結合します。塩化アンモニウムは弱酸性に過ぎないため,水素イオン(H+)が多く含まれているにもかかわらず,尿のpHはそれほど下がりません。このアンモニウムイオン(NH4+)の大部分は尿中に排出されるため,腎臓が大量の水素イオン(H+)を除去するのに役立ちます。

2つ目の緩衝系はリン酸が関与するものです。リン酸水素イオン(HPO42-)は血漿から尿細管の中に入ります。これは尿細管細胞中へ再吸収されることはほとんどないため,管腔内で濃縮されます。それが分泌された水素イオンと結合してリン酸二水素イオン(H2PO4-)を形成することによって緩衝物質として作用し,これはその後尿中に排泄されます。

以上のように,腎臓は血中pHの均衡の維持を助けています。ネフロンにおいて,近位曲尿細管細胞には重炭酸イオン(HCO3-)を再吸収する能力があり,近位曲尿細管,遠位曲尿細管および集合管の細胞は,水素イオン(H+)を分泌し,これがアンモニアおよびリン酸緩衝系を利用して尿中に排出されます。

The role of the Kidneys in Acid-Base Balance (Renal Physiology) (https://www.youtube.com/watch?v=cUPBgOsnBas&list=PLY33uf2n4e6PT53f0Z5LmFHo7Vb0ljn5b&index=7) by Osmosis (https://open.osmosis.org/) is licensed under CC-BY-SA 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0/).

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