小児の栄養と肥満の概要
世界中で小児の肥満の割合が上昇していることから,親,教師,養育者を含む全ての人が,小児の体重が不健康に増えてしまわないように,何ができるかを知っておくことが重要です。ほとんどの場合,肥満は不健康な食習慣の結果で起こります。ほかに関連する重要な要因として,遺伝的な原因や,環境,行動,社会経済的地位などもあります。
小児期の肥満は,成人期まで持続する長期的な健康の問題につながります。例えば,高血圧,血中の脂肪の増加,2型糖尿病,肝疾患,関節炎,喘息,不安,抑うつなどの多くの疾患につながる可能性があります。肥満には社会的偏見も伴い,その結果,自尊心の低下,いじめ,その他の虐待につながる可能性があります。
小児がすでに過体重または肥満である場合,小児科医,栄養士,理学療法士,および行動カウンセラーの力を借りて,小児が健康体重に戻るのを助けるためにいろいろな手段を講じることができます。何を,いつ,どれだけ食べるべきかなどの健康的な摂食行動や,どれだけ運動すべきかについて話し合うことから肥満の予防を始めましょう。
ここでは,小児が生涯にわたって健全な食習慣を身に付けられるよう,家庭および学校で実践すべき3つのポイントを紹介します:すなわち,糖の摂取量を制限すること,1人分の量を制限すること,小児の食べ物の種類に注意を払うことです。
まず最初に,糖分,特に甘い飲み物の摂取を制限します。2~18歳の小児では,添加糖類として,1日当たりの摂取量を25g未満(小さじ約6杯)に抑える必要があります。これは多くの人が考えているよりも少ない量です。炭酸飲料1缶には約39g(小さじ9杯)の糖が含まれています。天然果汁であるジュースにも,糖が含まれています。リンゴジュース1パックには約28グラム(小さじ7杯分)の砂糖が含まれています。このような飲み物を飲むと,小児が1日に摂取すべき量よりも多くの糖を摂取することになるため,最も良いのは水を飲むことでしょう。
次に1人分の量を制限しますが,これは小児の年齢および身長によって変わります。適切な量がどれぐらいかを知るために,食べる人の手を分量の参考にします。例えば大人の場合は大人の手を,小児の場合は小児の手を用います。小児の場合,コップ1杯の牛乳であれば,おおよそ小児のこぶしほどの大きさの分量にし,肉や魚であれば小児の手のひらぐらいの大きさが適切です。ナッツやスナック類であれば,約2つかみの量を目安とするとよいでしょう。小児が食べ過ぎていると思われる場合は,食卓で小さめの皿を使うようにすれば,1人分の量を減らすのに役立ちます。もう1つ重要なことは,1日を通して一定の間隔で食事をとることです。ほとんどの場合,食事は1日3回,おやつは最大で2~3回とするのが良いでしょう。これは,1日の終わりに大量の食べ物を食べるよりもはるかに良いことです。1日の終わりに大量に食べると,体重増加につながる可能性が高くなります。
最後に,小児が何を食べるかも非常に重要です。どのような食事がよいのか考えてみましょう。1皿に占める食べ物の理想的な割合は,果物と野菜で半分,全粒穀物(米やパスタなど)とタンパク質がそれぞれ4分の1です。脂肪はアボカド,ナッツ,魚などの食品から,野菜や果物は少なくとも1種類,炭水化物は全粒穀物から,そしてタンパク質はレンズ豆,肉,卵などから,あらゆる栄養素を摂取できるように様々な食品を選択します。飲み物としては,水のほか,乳製品,豆乳,ナッツミルクなどの糖がほとんどもしくは全く添加されていないものを選ぶことができます。一般的なルールとして,出された量からどれだけ食べるかを小児が決めるようにします。通常,小児は必要なカロリー量を自分で上手く調節でき,必要なカロリー量も日によって異なる可能性があるため,毎回完食を強制しないようにします。また,小児が野菜が嫌いと主張しても諦めないようにします。小児に新しい食べ物を食べさせようとするとき,最大で10回はその食べ物を食卓に出す必要があることが研究で示されています。であれば,5晩連続で小児にブロッコリーを食べさせようとすれば成功するのかといえば,そういうわけではありませんが,小児が最初に食べることを拒否したからといって,すぐに諦めないことです。
簡単にまとめてみましょう。小児が肥満になる割合は増えており,肥満になれば生涯にわたって健康に影響が生じます。肥満は通常,不健康な食生活の結果として起こります。糖分を減らし,ジュースやソーダなどの甘い飲み物を避けることで,家庭でも学校でもこの状況を変えることができます。さらに,小児には年齢に応じた量を摂取させるようにし,毎回完食を強制しないようにします。なぜなら,小児は通常,必要なカロリー量を自分で上手く調節できるためです。一般的に,1皿の食べ物の割合は野菜と果物で約2分の1,全粒穀物で4分の1,タンパク質で4分の1としましょう。
Video credit: Osmosis (https://osmosis.org/)