分娩の過程の概要

分娩(labor)は出産とも呼ばれ,子どもを産むという大変な仕事を指す言葉です。具体的には,子宮の収縮から始まって,子宮頸管に変化が起こり,これによって胎児が腟を通って生まれ,最後に胎盤が出てきて終了する一連の過程を意味します。分娩は通常,妊娠37~42週の間で胎児が満期とみなされる時点で始まります。

分娩が始まる前の妊娠第3トリメスターといわれる時期に,頸管の開口部から粘液や血のかたまりが排出されることがありますが,これはときに「おしるし」と呼ばれます。ほかにも羊膜嚢が破れることがあり,これは「破水」と呼ばれます。これらのいずれかが,分娩と,いわゆる本陣痛が始まるきっかけとなります。こういったことは,本陣痛とは異なる,より軽度の収縮であるブラクストン・ヒックス収縮(ときに前駆陣痛とも呼ばれます)と区別する必要があります。本陣痛は一旦始まると,頻度,持続時間,強さが増して,頂点の強さに達したかと思えば次第に引いていく波のように感じられることがあります。

子宮が収縮すると子宮頸部の厚い組織が引っ張られて,展退または菲薄化し,さらに開大して,胎児が子宮を離れて外の世界に出てくることが可能になります。本陣痛が始まって胎児が出てくるまで,初めての妊娠では通常約12~18時間,以降の妊娠ではその半分ぐらいの時間がかかります。しかし,出産の経験者であれば誰でも知っているように,この時間には大きな幅があります。

分娩は連続的な過程ではありますが,3つの段階に分けることができます。そして,最初の段階はさらに2つの段階に分けることができます。分娩の最初の段階である分娩第1期は,通常は最長20時間,または頸管が6cm開大するまで続く,潜伏期と呼ばれる段階から始まります。最初は不規則な収縮が5~30分おきに起こり,それぞれ約30秒間続きます。これによって子宮頸管が0cmから約3cmまで開大し,約0~30%展退します。その後,規則的な収縮が3~5分おきに起こり,約1分以上続きます。これにより子宮頸管が3cmから約6cmまで開大し,約80%展退します。これが分娩の活動期の始まりで,このタイミングで頸管は6cmから10cm開大し,100%展退します。収縮は非常に強く,それぞれ60~90秒間続き,30秒~2分間の間隔で起こるため,前の収縮が終わる前に次の収縮が始まって,収縮が少し重なることもあります。また,羊膜嚢がまだ破れていなければ,多くの場合,この時点で破れます。

頸部が完全に開大すると,分娩第2期に入ります。これは娩出期ともいわれます。この段階では,胎児,特に胎児の頭部が母体の骨盤を通過するという非常に重要なことが起こります。これは「3つのP」,すなわちpower,passenger,passageに依存します。powerは子宮収縮の強さを,passengerは胎児を,passageは胎児が骨盤を通過する経路を示します。実際,胎児の頭部と骨盤との関係は非常に重要であり,胎児の頭蓋骨は融合しない形で進化してきました。頭部を可能な限り大きくできるようにする一方で,骨盤を通過して無事に外の世界に出てくることができるように進化したのです。

この経路を胎児がどの程度容易に通過できるかを決定するいくつかの因子があります。第一に胎児の大きさであり,重要な因子は胎児の頭の大きさです。

また,胎勢と呼ばれる胎児の姿勢も関係しています。これは胎児の体がどのように屈曲しているかを示す言葉です。陣痛が始まるとき,胎児は普通,完全に屈曲しています。これは胎児の顎が胸の上にあって,背中は丸まり,腕と脚は屈曲していることを意味しています。この姿勢では,最小径(小斜径と呼ばれる)で骨盤入口を通過します。

胎児が大きい場合や完全に屈曲していない場合には,通過がより困難となります。次に胎位(fetal lie)があり,これは胎児が子宮内でどのように位置しているかを示すものです。

理想的な胎位は縦位です。この胎位では,胎児の長軸である脊椎が母体の長軸(母体の脊椎)に沿っています。胎児の脊椎が母体の脊椎と垂直になる横位の場合もあれば,わずかに斜めになる斜位の場合もあり,この2つの胎位では分娩の進行が妨げられることがあります。

最後に,一番最初に骨盤入口に下降する部分(先進部)を指す言葉があります。一つ目は頭が先に下降するもので,頭位と呼ばれます。これは最も一般的かつ分娩に最適で,頭部も完全に屈曲しています。また,骨盤位(頭が上を向いている状態で,殿部,足,または膝が最初に出てくる)や肩甲位(肩が最初に出てくる)という言葉もあります。

胎児はこの経路を通過するために,回旋運動あるいは分娩メカニズムと呼ばれるいくつかの姿勢変化を起こします。まず,胎児が骨盤入口へ下降する動きがあります。下降の度合いは胎児のstationと呼ばれ,先進部と母体の両坐骨棘との関係で示されます。

胎児が骨盤入口(おおよそstation-5)から坐骨棘(station 0)へと下降し,この位置を嵌入と呼びます。

次に屈曲があり,胎児の頭が骨盤底からの抵抗を受け,胎児の顎が胸に押し付けられます。

次に内旋があります。胎児の肩が45度内旋して,肩の最も幅の広い部分が骨盤入口の最も幅の広い部分と一致します。

児頭が恥骨結合の下(おおよそstation+4の位置)を通過した後に伸展があり,そこで児頭が屈曲から伸展に変化し,さらにおおよそstation+5の位置に動いて腟から出てきます。

頭部が出てくると,頭部が外旋して肩関節が骨盤出口を通過し恥骨結合の下に位置することができる状態に戻ります。

そして最後の段階では前方の肩が恥骨結合の下に滑り込み,後方の肩がそれに続き,最後に体の残りの部分がそれに続きます。これで分娩第2期が終了します。

分娩第3期は,児が出てきてから胎盤が出てくるまでを指します。胎児が出てくると,子宮が強く収縮し,子宮壁から胎盤が分離し始めます。その後,胎盤が子宮内に残らないように注意深く除去されます。

分娩後数時間は「第4期」と呼ばれることがありますが,これは失血への適応や,子宮が妊娠前の状態に戻り始める子宮復古の開始など,大きな生理的変化が起こるためです。

さて,簡単にまとめてみましょう。分娩は3つの段階で構成されます。第1期は本陣痛から始まり,頸管が完全に展退および開大した時点で終了します。第2期は児が出てくる過程であり,児の誕生で終わります。そして,胎盤が出てきたら第3期が終了します。

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This video is created as a collaboration between The Manuals and Osmosis.

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