髄膜炎における髄液所見

状態

優位な細胞型*

タンパク質*

糖*

特異的検査

正常髄液

全てリンパ球†(0~5/μL)

< 40mg/dL

血糖値の50%を超える

なし

細菌性髄膜炎

白血球(通常PMN),しばしば大幅に増加

上昇

血糖値の50%未満(極めて低値のこともある)

グラム染色(105CFU/mLあれば診断率が高い)

細菌培養

可能であればマルチプレックスPCR

ウイルス性髄膜炎

リンパ球(混合性のことがある;最初の24~48時間はPMNおよびリンパ球)

上昇

通常は正常

可能であればマルチプレックスPCRおよび/または従来のPCR(エンテロウイルス,単純ヘルペスウイルス,水痘帯状疱疹ウイルス,またはウエストナイルウイルスを確認するため)

IgM(ウエストナイルウイルスまたはその他のアルボウイルスを確認するため)

結核性髄膜炎‡

PMNおよびリンパ球(通常は複数の細胞数増加)

上昇

血糖値の50%未満(極めて低値のこともある)

抗酸菌染色

PCR

抗酸菌培養(30mL以上の髄液検体を用いるのが理想的)

血清および(可能であれば)髄液のインターフェロンγ検査

Xpert MTB/RIF§

真菌性髄膜炎

通常リンパ球

上昇

血糖値の50%未満(極めて低値のこともある)

クリプトコッカス抗原検査

可能であればマルチプレックスPCR法(補助的検査であり,他の検査の代替にはならない)

Coccidioides immitisまたはHistoplasma属真菌の抗原に対する血清学的検査,特に最近の流行地域滞在歴がある場合

真菌培養(30mL以上の髄液検体を用いるのが理想的)

墨汁染色(Cryptococcus属真菌が対象)

* 重度の易感染性患者では,細胞数,糖,およびタンパク質の変化が最小限にとどまることがある。髄液糖/血糖比を決定できるように,腰椎穿刺の施行時に血糖値を測定しておくべきである。

† 新生児または痙攣発作後では,正常でも少数の細胞がみられる可能性がある。

‡ 結核性髄膜炎では,髄液の抗酸菌染色は感度が低く,PCR法の感度もわずか約50%であり,培養には最大8週間かかる。髄液でのインターフェロンγ検査陽性は結核性髄膜炎を意味するが,血清インターフェロンγ検査の結果は過去の感染を示しているに過ぎない場合がある。このように結核性髄膜炎の診断確定は困難であるため,たとえ診断が確定していなくとも結核性髄膜炎が強く疑われる場合は,推定的に治療を行う。

§ 髄液中の結核菌(M. tuberculosis)DNAを検出するためにXpert MTB/RIF(全自動の高速核酸増幅検査)を用いてもよい。

PCR = ポリメラーゼ連鎖反応;PMN = 好中球。