脳死判定のガイドライン(1歳以上*の患者の場合)†

脳死を宣告するには,8つの項目を全て確認しなければならない:

1.全ての脳機能の不可逆的な喪失を十分に説明できるだけの昏睡の原因が判明している。

2.中枢抑制薬,低体温(< 35℃),および低血圧(平均動脈圧 < 55mmHg)が除外されている。神経筋遮断薬の作用が神経学的所見に影響を及ぼしていない。

3.運動が観察される場合は,その全ての原因を完全に脊髄機能に帰することができる。

4.咳嗽反射,咽頭反射,またはその両方について検査を行い,その消失が示されている。

5.角膜および瞳孔対光反応が認められない。

6.頭位変換眼球反射の検査により,頭部を回転させても眼球が動かないことが示され,かつ前庭眼反射を評価するカロリックテストにより,鼓膜に向けて冷水を注入してもカロリック反応が生じないことが示される。

7.8分間以上の無呼吸テストで,呼吸運動が認められず,PaCO2に検査前値から20mmHgを超える上昇を記録する。

手順:無呼吸テストは,気管内チューブを人工呼吸器から外すことによって実施する。酸素(6L/min)は気管内チューブを介して留置したカニューレから拡散によって供給できる。PaCO2が自然上昇することによる換気刺激にもかかわらず,自発呼吸が8~12分間にわたってみられない。

注:無呼吸テストを実施する際は,低酸素症および低血圧のリスクを最小限にするよう最大限の注意を払うべきであり,これは患者が臓器提供者となる可能性がある場合は特に重要である。検査中に動脈血圧が有意に低下する場合は,検査を中止すべきであり,動脈血を採取して,PaCO2が60mmHgを超えたかどうか,または20mmHgを超える上昇を認めたどうかを判定すべきである。この所見により脳死の臨床診断が確認される。

8.以下の4つの基準のうち少なくとも1つが確定している:

  1. a.項目2~7が確認されている。

  1. b.項目2~7が確認されており,かつ(診察または無呼吸テストの一部を完了できない場合,または診察の結果が不確実な場合に行う)

    • 脳波が皮質の電気的静止を示している。

  1. c.項目2~7が確認されており,かつ(診察または無呼吸テストの一部を完了できない場合,または診察の結果が不確実な場合に行う)

    • 通常の血管造影,経頭蓋ドプラ超音波検査,または99mTc-HMPAO(テクネチウム99mヘキサメチルプロピレンアミンオキシム)脳血流シンチグラフィーにより,頭蓋内血流がないことが証明される。

  1. d. 損傷または疾患が評価の妨げとなって項目2~7のいずれかが判定できない場合(例,広範な顔面損傷では温度刺激検査が不可能である)は,以下の基準を適用する:

    • 評価可能な項目を確認する。

    • 通常の血管造影,経頭蓋ドプラ超音波検査,もしくは99mTc-HMPAO(テクネチウム99mヘキサメチルプロピレンアミンオキシム)脳血流シンチグラフィーにより,頭蓋内血流がないことが証明されるか,または脳波で皮質の活動が認められない。

* Based on Nakagawa TA, Ashwal S, Mathur M, et al: Guidelines for the determination of brain death in infants and children: An update of the 1987 Task Force Recommendations.Ann Neurol 71 (4):573–585, 2012.doi: 10.1002/ana.23552 and Wijdicks EFM, Varelas PN, Gronseth GS, Greer DM: Evidence-based guideline update: Determining brain death in adults: Report of the quality standards subcommittee of the American Academy of Neurology.Neurology 74 (23):1911–1918, 2010. doi: 10.1212/WNL.0b013e3181e242a8.

†脳死の検査を行う前に,患者の家族または介護者にプロセスに関する情報を提供すべきである。

PaCO2 = 動脈血二酸化炭素分圧。

Adapted from the American Academy of Neurology Guidelines (2010).

関連するトピック