急性細菌性髄膜炎に対する初期抗菌薬

患者群

疑われる細菌

暫定的抗菌薬

年齢

生後3カ月未満

Streptococcus agalactiae

大腸菌(Escherichia coli )またはその他のグラム陰性細菌

Listeria monocytogenes

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)*

アンピシリン

セフトリアキソンまたはセフォタキシム

生後3カ月~18歳

髄膜炎菌(Neisseria meningitidis

肺炎球菌(S. pneumoniae

黄色ブドウ球菌(S. aureus)*

インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)†

セフォタキシムまたはセフトリアキソン

バンコマイシン

18~50歳

肺炎球菌(S. pneumoniae

髄膜炎菌(N. meningitidis

黄色ブドウ球菌(S. aureus)*

セフトリアキソンまたはセフォタキシム

バンコマイシン

50歳以上

肺炎球菌(S. pneumoniae

L. monocytogenes

黄色ブドウ球菌(S. aureus

グラム陰性細菌

髄膜炎菌(N. meningitidis)(この年齢層ではまれ)

セフトリアキソンまたはセフォタキシム

アンピシリン

バンコマイシン

投与経路

副鼻腔炎,耳炎,髄液漏

肺炎球菌(S. pneumoniae)‡

インフルエンザ菌(H. influenzae

緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を含むグラム陰性細菌

嫌気性または微好気性レンサ球菌

Bacteroides fragilis

黄色ブドウ球菌(S. aureus)*

バンコマイシン

セフタジジムまたはメロペネム

メトロニダゾール

穿通性頭部外傷,脳神経外科手技,シャント感染

黄色ブドウ球菌(S. aureus

表皮ブドウ球菌(S. epidermidis

緑膿菌(P. aeruginosa)を含むグラム陰性細菌

肺炎球菌(S. pneumoniae

バンコマイシン

セフタジジム

免疫状態

AIDS,その他の細胞性免疫不全状態

肺炎球菌(S. pneumoniae

L. monocytogenes

緑膿菌(P. aeruginosa)を含むグラム陰性細菌

黄色ブドウ球菌(S. aureus)*

アンピシリン

セフタジジム

バンコマイシン

* 黄色ブドウ球菌( S. aureus)が髄膜炎の原因となることは,穿通性頭部外傷または脳神経外科手技が感染経路である場合を除いて,まれである。しかしながら,全ての患者群で髄膜炎の原因となりうる。そのため,この細菌が原因である可能性が(たとえ低くとも)あると臨床医が判断した場合は,バンコマイシンかブドウ球菌に有効な他の抗菌薬を投与すべきである。

† 5歳未満の小児でインフルエンザ菌( H. influenzae)b型結合型ワクチンの接種歴がない場合は,インフルエンザ菌(H. influenzae)を考慮すべきである。

‡ 肺炎球菌( S. pneumoniae)は髄液漏または急性耳炎のある患者で最も頻度の高い原因菌である。そのような患者はバンコマイシンおよびセフトリアキソンまたはセフォタキシムにより治療することがある。しかしながら,髄膜炎に硬膜下膿瘍を合併する場合,または髄膜炎が脳神経外科手技後に発生した場合は,緑膿菌(P. aeruginosa)やBacteroides属などの他の細菌が存在する可能性あり,そのような症例では,初期治療にバンコマイシン + セフタジジム + メトロニダゾールを含めるべきである。硬膜下膿瘍は速やかに排膿すべきである。

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