オピオイド鎮痛薬

薬剤

成人用量*

小児用量†

備考

中等度の疼痛に対する合剤に含まれるオピオイド作動薬‡

コデイン

経口:30~60mg,必要に応じて4~6時間毎に投与

モルヒネより弱い

ヒドロコドン

経口:5~10mg,必要に応じて4~6時間毎に投与

コデインより強い

中等度から重度の疼痛に対するオピオイド作動薬

フェンタニル

経皮:12または25μg/時,3日毎

経粘膜:100~200μg,2~4時間毎

経鼻:100~200μg,2~4時間毎

注射:25~100μg,30~60分毎,静注または自己調節鎮痛法(PCA)として

注射:1~2μg/kg/回を静注;必要に応じて2~4時間後に再投与してもよい

ヒスタミンの放出量が少ないため,他のオピオイドよりも低血圧を引き起こす可能性が低い

経皮:悪液質の患者に使用すると,吸収および血中濃度が不安定になることがある

最大の鎮痛効果は貼付から18~24時間後まで得られないため,開始後は鎮痛薬の追加が必要になる

パッチを外してから有害作用が消失するまでに数時間かかる可能性がある

短時間作用型の経粘膜製剤および経鼻製剤:オピオイドに耐えられる成人では突出痛に使用され,小児では意識下鎮静に使用される

静注製剤:ときに処置時の鎮静に用いられる

ヒドロモルフォン

経口,即放性:2~4mg,4~6時間毎

経口,徐放性:8~32mg,24時間毎

経口液剤:2.5~10mg,4~6時間毎

注射:0.2~1mg,4~6時間毎または自己調節鎮痛法(PCA)として

直腸:3mg,6~8時間毎

半減期が短い

坐剤:就寝時に使用する

レボルファノール(levorphanol)

経口:2mg,6~8時間毎

注射:1~2mg,筋注または皮下注,6~8時間毎;1mg,静注,3~6時間毎

半減期が長い

ペチジン

経口:50~300mg,4時間毎

注射:50~150mg,静注または筋注,必要に応じて4時間毎に投与

活性代謝物(ノルペチジン)が不快気分と中枢神経系興奮(例,ミオクローヌス,振戦,痙攣発作)を引き起こし,投薬開始後数日間にわたり蓄積するため(特に腎不全患者),望ましくない。

これらのリスクがあるため,疼痛管理にペチジンを使用することは推奨されず,一部の施設ではペチジンはもはや使用されていない。

メサドン

経口:2.5~10mg,8~12時間毎

注射:2.5~10mg,筋注または静注,8~12時間毎

ヘロイン離脱症状の治療,オピオイド使用症の長期維持療法,および慢性疼痛に対する鎮痛に使用される

半減期が長いため(通常は鎮痛効果の持続時間よりはるかに長い),安全かつ効果的な鎮痛用量の特定が難しい

用量または投与頻度を増やした後は,血漿中濃度が定常状態まで上昇するにつれて重篤な毒性が発現する可能性があるため,数日間以上にわたり綿密なモニタリングが必要である

QT延長のリスク;心電図モニタリングが推奨される

モルヒネ

経口,即放性:5~30mg,4時間毎

経口,放出制御:15mg,12時間毎

経口,徐放性:30mg,24時間毎

注射:2~5mg,静注または筋注,必要に応じて2~4時間毎に投与

生後6カ月以上かつ体重50kg未満:

  • 経口即放性錠剤または経口液剤:0.2~0.5mg/kg/回,必要に応じて3~4時間毎に投与(通常の初回最大用量は15~20mg/回)

  • 静注(推奨),皮下注,筋注(筋注は推奨されない):0.05mg/kg/回,必要に応じて2~4時間毎に投与(初回最大用量は1~2mg/回)

生後6カ月以上かつ体重50kg以上:

  • 経口即放性錠剤または経口液剤:15~20mg,必要に応じて3~4時間毎に投与

  • 注射(静注,皮下注,または筋注):2~5mg/回,必要に応じて2~4時間毎に投与

比較の基準となる

他のオピオイドよりもヒスタミン放出を誘発する頻度が高く,そう痒を引き起こす

オキシコドン‡

経口:5~10mg,6時間毎

経口,放出制御:10~20mg,12時間毎

アセトアミノフェンまたはアスピリンを含有する合剤としても使用される

オキシモルフォン(oxymorphone)

経口:5mg,4時間毎

経口,放出制御:5~10mg,12時間毎

筋注:1~1.5mg,4時間毎

静注:0.5mg,4時間毎

直腸:5mg,4~6時間毎

他のオピオイドよりヒスタミンの放出量が少ない可能性がある

オピオイド作動薬-拮抗薬§

ブプレノルフィン

静注または筋注:0.3mg,6時間毎

舌下:75μg,1日1回(または耐えられれば12時間毎),4日間以上,その後150μg,12時間毎まで増量

経皮パッチ:最初は5μg/時,週1回貼付;20μg/時,週1回まで漸増してもよい

13歳以上の患者のみに使用する(用量は成人と同じ)

精神異常作用(例,せん妄,鎮静)は他の作動薬-拮抗薬ほど顕著ではないが,それ以外の作用は類似している

ブプレノルフィンは従来の鎮痛薬(例,モルヒネ,フェンタニル)よりも呼吸抑制のリスクが低いが,ナロキソンで完全に拮抗することができない

従来の鎮痛薬よりもμ受容体に対する親和性が高い

長期のオピオイド療法に追加すると,急性離脱症状を誘発することがある

ブプレノルフィンによる長期治療に従来の鎮痛薬を追加すると,従来の鎮痛薬の鎮痛効果が制限される可能性がある

ブプレノルフィンの舌下投与および経皮投与はときに慢性疼痛に使用される

オピオイド使用症に対するアゴニスト療法として使用されることがあるが,特別な免許が必要である

ブトルファノール

静注:最初は1mg,必要に応じて3~4時間毎に再投与してもよい;通常の範囲:0.52mg,必要に応じて3~4時間毎に投与

筋注:最初は2mg,必要に応じて3~4時間毎に再投与してもよい;通常の範囲:1~4mg,必要に応じて3~4時間毎に投与

経鼻:最初は1mg(片方の鼻孔に1回噴霧);十分な緩和が得られない場合は,60~90分後に再投与してもよい;2回目の投与後,必要に応じて3~4時間毎に再投与してもよい

推奨されない

ナルブフィン(nalbuphine)

注射:10mg,筋注,静注,または皮下注,3~6時間毎

推奨されない

精神異常作用はペンタゾシンほど顕著ではないが,モルヒネよりは顕著である;2.5~5mgの静注(低用量)がオピオイド誘発性のそう痒に役立つ可能性あり(もう1度投与してもよい)

ペンタゾシン

経口:50~100mg,3~4時間毎

注射:30mg,静注または筋注,3~4時間毎(最大360mg/日)

推奨されない

以下の理由で有用性が制限される:

  • 用量を増やしても鎮痛に天井効果がある

  • オピオイド作動薬への身体依存がある患者ではオピオイド離脱症状の可能性がある

  • 精神異常作用のリスクがある;特に耐性がなく身体依存もない急性疼痛の患者にとって

ナロキソン,アスピリン,またはアセトアミノフェンを配合した錠剤が使用可能である

錯乱および不安を引き起こす可能性がある(特に高齢患者)

オピオイドμ受容体作動薬/ノルアドレナリン再取り込み阻害薬

タペンタドール

経口,即放性:50~100mg,4~6時間毎,2回目は1時間以上経過後に投与してもよい(1日目の総用量は700mg以下とする);1日目以降は50~100mg,4~6時間毎(1日総用量は600mg以下とする)

経口,徐放性:50mg,12時間毎(通常の治療量は100~250mg,12時間毎;最大500mg/日)

糖尿病による神経障害性疼痛,中等度から重度の急性疼痛,および中等度から重度の慢性疼痛の治療に使用される

頻度の高い有害作用(例,便秘)が他のオピオイドより少ないと報告されている。

トラマドール

経口,即放性:50~100mg,4~6時間毎;最大400mg/日

経口,徐放性:100mg,1日1回;5日毎に100mg/日以下ずつで増量し,1日総用量は300mg以下とする

推奨されない

他のオピオイドよりも乱用の可能性が低い

他のオピオイド鎮痛薬ほど強力ではない

* 開始量はオピオイド使用歴のない患者を対象とする。オピオイド耐性がある患者と疼痛が重度である患者では,より高用量での投与が必要になる場合がある。

† 小児の鎮痛には全ての薬剤が適切となるわけではない。

‡ これらのオピオイド作動薬には,アセトアミノフェン,アスピリン,またはイブプロフェンとの配合錠が使用できる。一方でアセトアミノフェン,アスピリン,またはイブプロフェンの用量制限によってオピオイドの用量が制限されないように,単独で使用されることも多い。併用療法が望ましい場合は,アセトアミノフェン,アスピリン,またはイブプロフェンを個別に追加することで,オピオイド作動薬の用量に最大限柔軟性をもたせることができる。

§ オピオイド作動薬-拮抗薬は,通常は慢性疼痛には使用されず,高齢患者で第1選択薬となることはまれである。

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