喘息に対する薬物治療*

薬剤

投与形態

用法・用量

備考

小児

成人

短時間作用型β作動薬

サルブタモール

HFA:90μg/パフ

成人と同様

4~6時間毎に必要に応じて2パフ,および運動の15~30分前に2パフ

サルブタモールは主にレスキュー薬として使用される。

維持療法には推奨されない。

常用は,喘息コントロールが失われつつあり,薬剤の追加が必要であることを示す。

MDI-DPIは,患者がスペーサーおよびチャンバーを用いてうまく吸入操作ができれば,ネブライザー療法と同等の効果がある。

噴霧用のサルブタモールは他のネブライザー溶液と混合できる。

DPI:90μg/パフ

4歳以上:成人と同様

4歳未満:使用されない

4~6時間毎に必要に応じて2パフ,および運動の15~30分前に2パフ

ネブライザー溶液:5mg/mLならびに0.63,1.25,および2.5mg/3mL

5歳未満:生理食塩水3mLに0.63~2.5mg,4~6時間毎に必要に応じて投与

5歳以上:生理食塩水3mLに0.05mg/kg,4~6時間毎に必要に応じて投与(最小1.25mg,最大2.5mg)

生理食塩水3mLに1.25~5mg,4~6時間毎に必要に応じて投与

レバルブテロール(levalbuterol)

HFA:45μg/パフ

5歳未満:確立されていない

5歳以上:成人と同様

4~6時間毎に必要に応じて2パフ

レバルブテロール(levalbuterol)はサルブタモールのR-異性体である。0.63mgがラセミ体サルブタモール1.25mgに相当する。

レバルブテロール(levalbuterol)は有害作用がより少ない可能性がある。

ネブライザー溶液:0.31,0.63,および1.25mg/3mLならびに1.25mg/0.5mL

5歳未満:生理食塩水3mLに0.31~1.25mg,4~6時間毎に必要に応じて投与

5~11歳:0.31~0.63mg,8時間毎に必要に応じて投与(最大で0.63mgを8時間毎)

12歳以上:成人と同様

0.63~1.25mg,6~8時間毎に必要に応じて投与

長時間作用型β作動薬(単独治療としては用いられない)

アルフォルモテロール(arformoterol)

ネブライザー溶液:15μg/2mL

確立されていない

15~25μg,12時間毎

アルフォルモテロール(arformoterol)はホルモテロールのR-異性体である。

ホルモテロール

ネブライザー溶液:20μg/2mL

確立されていない

20μg,12時間毎

DPIの剤形は現在では利用できない。

サルメテロール

HFA:21μg/パフ(米国では使用できない)

12歳以上:成人と同様

12時間毎に2パフ;運動前に服用する際は,少なくとも運動の30~60分前に服用

作用持続時間は12時間である。

毎晩1回の服用は夜間喘息に役立つ。

サルメテロールは増悪時の急性症状緩和に使用すべきではない。

DPI:50μg/パフ

4歳未満:確立されていない

4歳以上:成人と同様

12時間毎および運動の30分前に1パフ

超長時間作用型β作動薬(単独治療としては用いられない)

インダカテロール

DPI:75μg/パフ

確立されていない

1パフを1日1回

オロダテロール

SMI:2.5μg/パフ

確立されていない

2パフを1日1回

ビランテロール

DPI:25μg/パフ

確立されていない

1パフを1日1回

ビランテロールは,フルチカゾン100μgまたは200μgとの合剤としてのみ利用できる。

抗コリン薬

イプラトロピウム

HFA:17μg/パフ

12歳未満:確立されていない

12歳以上:成人と同様

6時間毎に必要に応じて2パフ(最大12パフ/日)

イプラトロピウムはサルブタモールと同じネブライザーに混合する場合がある。

第1選択薬として用いるべきではない。

常用は長期的な維持療法を行う上で明らかな便益はないが,急性症状の治療に追加すべきである。

ネブライザー溶液:500μg(0.02%,2mL)

12歳未満:確立されていない

12歳以上:成人と同様

500μg,6~8時間毎に必要に応じて投与

チオトロピウム

SMI:1.25μg/パフ

6歳未満:確立されていない

6歳以上:成人と同様

2パフを1日1回(最大2パフ/日)

チオトロピウムはイプラトロピウムより作用持続時間が長い。

SMIによる低用量での使用は,喘息に唯一推奨される用量である。

DPI:18μg/カプセル

確立されていない

18μg(1カプセル)1日1回

コルチコステロイド(吸入)

ベクロメタゾン

HFA:40~80μg/パフ

4歳未満:確立されていない

4~11歳:12時間毎に1パフ(通常最大で80μgを1日2回まで)

12歳以上:成人と同様

12時間毎に1~2パフ(通常最大で320μgを1日2回まで)

1~2パフから喘息コントロールに必要な量まで,重症度によって用量を調節する。

長期的に使用すれば,どの薬剤も全身に影響がでる可能性がある。

最大閾値は,その値を超えると,視床下部-下垂体-副腎系の抑制が生じるレベルである。

喘息コントロールに,より高用量が必要である場合は,専門医へのコンサルテーションが推奨される。

ブデソニド

DPI:90または180μg/パフ

6歳未満:推奨されない

6歳以上:初回投与量は180μgを1日2回(最大で360μgを1日2回)

初回投与量は360μgを1日2回(最大で720μgを1日2回)

ネブライザー溶液:0.25,0.5,または1.0mg(いずれも2mL溶液に対して)

1~8歳のみ:それまでに気管支拡張薬のみを使用していた場合,初回投与量は0.5mgを1日1回,または0.25mgを1日2回(最大0.5mg/日)

それまでに吸入コルチコステロイドを使用していた場合,初回投与量は0.5mgを1日1回,または0.25mgを1日2回

それまでに経口コルチコステロイドを使用していた場合,初回投与量は0.5mgを1日2回,または1mgを1日1回(最大1mg/日)

成人には適応なし

シクレソニド

HFA:80または160μg/パフ

5歳以下:160μg,毎日

6~11歳:低用量80μg,1日1回,中用量 > 80~160μg,1日1回,高用量 > 160μg,1日1回

12歳以上:成人と同様

それまでに気管支拡張薬のみを使用していた場合,初回投与量は80μgを1日2回(最大で320μgを1日2回)

それまでに吸入コルチコステロイドを使用していた場合,初回投与量は80μgを1日2回(最大で640μgを1日2回)

それまでに経口コルチコステロイドを使用していた場合,初回投与量は320μgを1日2回(最大で640μgを1日2回)

フルニソリド

HFA:80μg/パフ

5歳未満:確立されていない

5~11歳:1パフを1日2回(最大で2パフを1日2回[320μg/日])

12歳以上:成人と同様

2パフを1日2回(最大で4パフを1日2回[640μg/日])

プロピオン酸フルチカゾン

HFA:44,110,または220μg/パフ

0~4歳:50μg/日

5~11歳:通常1日総用量44~220μg

12歳以上:成人と同様

それまでに気管支拡張薬のみを使用していた場合,初回投与量は88μgを1日2回(最大で440μgを1日2回)

それまでに吸入コルチコステロイドを使用していた場合,初回投与量は88~220μgを1日2回(最大で440μgを1日2回)

それまでに経口コルチコステロイドを使用していた場合,初回投与量は440~880μgを1日2回(最大で880μgを1日2回)

DPI:50,100,または250μg/パフ

0~4歳:確立されていない

5~11歳:通常1日総用量50~200μg(通常は最大100μgを1日2回)

12歳以上:成人と同様

それまでに気管支拡張薬のみを使用していた場合,初回投与量は100μgを1日2回(最大で500μgを1日2回)

それまでに吸入コルチコステロイドを使用していた場合,初回投与量は100~250μgを1日2回(最大で500μgを1日2回)

それまでに経口コルチコステロイドを使用していた場合,初回投与量は500~1000μgを1日2回(最大で1000μgを1日2回)

フランカルボン酸フルチカゾン

DPI:50,100,または200μg/パフ

0~4歳:確立されていない

5~11歳:1パフ(50μg)を1日1回

12歳以上:成人と同様

それまでに気管支拡張薬のみを使用していた場合,初回投与量は100μgを1日1回(最大で200μg/日)

それまでに吸入コルチコステロイドを使用していた場合,初回投与量は100~200μgを1日1回(最大で200μg/日)

モメタゾン

DPI: 110または220μg/パフ

4歳未満:確立されていない

4~11歳:110μgを1日1回夕方

12歳以上:成人と同様

それまでの使用薬剤が気管支拡張薬のみ,または吸入コルチコステロイドである場合,初回投与量は220μgを1日1回夕方(最大で220μgを1日2回または440μgを1日1回夕方)

それまでに経口コルチコステロイドを使用していた場合,初回投与量は440μgを1日2回(最大で880μgを1日2回)

HFA:50,100,または200μg/パフ

12歳未満:確立されていない

12歳以上:成人と同様

それまでに気管支拡張薬のみを使用していた場合,初回投与量は220μg(吸入量は200μg)を1日1回 または2回(最大で440μg/日)

それまでに吸入コルチコステロイドを使用していた場合,初回投与量は110~220(吸入量は100または200μg)μgを1日2回(最大で800μg/日)

それまでに経口コルチコステロイドを使用していた場合,初回投与量は440μg(吸入量は400μg)を1日2回(最大で800μg/日)

コルチコステロイドの全身投与(経口)

メチルプレドニゾロン

錠剤:2,4,8,16,または32mg

0~11歳:短期間の集中投与(burst):1~2mg/kgを1日1回(最大60mg),3~10日間

12歳以上:成人と同様

7.5~60mgを1日1回朝,または2日に1回朝

短期間の集中投与(burst):40~60mgを1日1回(または20~30mgを1日2回),3~10日間

維持量は,コントロールの必要に応じて,毎朝または隔日の朝に単回で投与すべきである。

午後3時に投与すると,副腎抑制を増大させずに臨床的有効性を増大させられることを示すエビデンスがある。

短期間の集中投与(burst)は,治療開始時または徐々に悪化している時期のコントロール確立に効果的である。

集中投与はPEFが自己最良値の80%に達するまで,または症状が消失するまで続けるべきであり,おそらく3~10日以上の投与が必要である。

プレドニゾロン

錠剤:5mg

溶液:5mg/5mLまたは15mg/5mL

プレドニゾン

錠剤:1,2.5,5,10,20,または50mg

溶液:5mg/mLまたは5mg/5mL

配合薬

イプラトロピウムおよびサルブタモール

SMI:イプラトロピウムを20μg/パフおよびサルブタモールを100μg/パフ

確立されていない

1パフを1日4回(最大6パフ/日)

イプラトロピウムはサルブタモールの気管支拡張効果を延長する。

ネブライザー溶液:バイアル1本(3mL)にイプラトロピウム0.5mgおよびサルブタモール2.5mg

外来でのレスキューとして,バイアル3mL噴霧を1日4回(24時間に最大6回まで)

フルチカゾンおよびサルメテロール

DPI:フルチカゾンを100,250,または500μgおよびサルメテロールを50μg

4歳未満:確立されていない

4~11歳:1パフ(100/50)を1日2回

12歳以上:成人と同様

1パフを1日2回

低~中用量の吸入コルチコステロイドでコントロールできない喘息には250/50の用量が適応となる。

中~高用量の吸入コルチコステロイドでコントロールできない喘息には500/50の用量が適応となる。

HFA:フルチカゾンを45,115,または230μgおよびサルメテロールを21μg

12歳未満:確立されていない

12歳以上:成人と同様

2パフを1日2回

ブデソニドおよびホルモテロール

HFA:ブデソニドを80または160μgおよびホルモテロールを4.5μg

12歳未満:ブデソニド80μg/ホルモテロール4.5μgを1~2パフ,1日2回(維持量として2パフ1日2回を超えないこと)

12歳以上:2パフを1日2回および必要に応じて

1日の維持量およびレスキューの合計で最大8パフ(36μg)

2パフを1日2回および必要に応じて。1日の維持量とレスキューの合計で最大12パフ(54μg)

低~中用量の吸入コルチコステロイドでコントロールできない喘息には80/4.5の用量が適応となる。

中~高用量の吸入コルチコステロイドでコントロールできない喘息には160/4.5の用量が適応となる。

モメタゾンおよびホルモテロール

HFA:モメタゾンを100または200μgおよびホルモテロールを5μg;5歳未満の小児にはモメタゾンを50μgおよびホルモテロールを5μg

5歳未満:必要に応じて2パフを1日2回,維持療法ではこの用量を超えないこと

5歳以上:2パフを1日2回および必要に応じて

1日の維持量およびレスキューの合計で最大8パフ(36μg)

2パフを1日2回および必要に応じて

1日の維持量およびレスキューの合計で最大12パフ(54μg)

低~中用量の吸入コルチコステロイドでコントロールできない喘息には100/5の用量が適応となる。

高用量の吸入コルチコステロイドでコントロールできない喘息には200/5の用量が適応となる。

フルチカゾンおよびビランテロール

DPI:フルチカゾンを100または200μgおよびビランテロールを25μg

確立されていない

1パフを1日1回

推奨される開始量は喘息の重症度に基づく。

肥満細胞安定化薬

クロモグリク酸(cromolyn)

ネブライザー溶液:20mg/アンプル

< 2歳:未確立

2歳以上:成人と同様

1アンプルを1日3回または4回

クロモグリク酸(cromolyn)は運動前またはアレルゲンへの曝露前に使用すべきである。

1回の服用で1~2時間の予防効果がある。

ロイコトリエン修飾薬(leukotriene modifier)

モンテルカスト

錠剤,チュアブル錠,および顆粒:4,5,または10mg

12カ月~5歳:4mgを経口で1日1回夕方

6~14歳:5mgを経口で1日1回夕方

15歳以上:成人と同様

10mgを経口で1日1回夕方

運動誘発喘息:運動の2時間前に10mgを経口投与

モンテルカストはロイコトリエン受容体拮抗薬であり,ロイコトリエンD4およびE4を競合的に阻害する。

ザフィルルカスト

錠剤:10または20mg

5歳未満:確立されていない

5~11歳:10mgを経口で1日2回

12歳以上:成人と同様

20mgを経口で夕方

ザフィルルカストはロイコトリエン受容体拮抗薬であり,ロイコトリエンD4およびE4を競合的に阻害する。

食事の1時間前または2時間後に服用すべきである。

ジロートン(zileuton)

錠剤,即放性:600mg

12歳未満:確立されていない

12歳以上:成人と同様

600mgを経口で1日4回

ジロートン(zileuton)は5-リポキシゲナーゼを阻害する。

投与はアドヒアランスを制限する可能性がある。

ジロートン(zileuton)は肝酵素の上昇を引き起こし,CYP3A4による薬物の代謝(テオフィリンを含む)を阻害することがある。

徐放性:1200mg

12歳未満:確立されていない

12歳以上:成人と同様

1200mgを経口で1日2回,朝食後および夕食後1時間以内

メチルキサンチン類

テオフィリン

カプセル,徐放性:100,200,300,および400mg

エリキシル:80mg/15mL

錠剤,徐放性:100,200,400,450,または600mg

初回投与量は10mg/kg/日から600mg/日まで,その後,血清中濃度が定常状態で5~15μg/mLに達するまで用量を調節

初回投与量は10mg/kg/日から600mg/日まで,その後,血清中濃度が定常状態で5~15μg/mLに達するまで用量を調節

代謝クリアランス,薬物相互作用,有害作用の可能性は様々であるため,血中濃度モニタリングをルーチンに行う必要がある。

より安全な代替薬が利用可能となり,この薬剤の使用は減少している。

目標濃度を < 10 μg/mLとすると安全性が高まりうる。

免疫調節薬

ベンラリズマブ

皮下注射:30 mg/mL

12歳未満:確立されていない

12歳以上:成人と同様

30mgを皮下注射で4週毎に3回,その後8週毎

ベンラリズマブは好酸球性表現型の患者で追加治療として使用される。

デュピルマブ

皮下注射:300mg/2mLまたは200mg/1.14mL

6歳未満:確立されていない

6~11歳:用量調節のため専門医に紹介

12歳以上:成人と同様

400mgを皮下注射で1回とその後200mgを2週間毎,または600mgを皮下注射で1回とその後300mgを2週間毎

初回は二回の注射で投与すること。

デュピルマブは好酸球性表現型の患者で追加治療として使用される。

メポリズマブ

皮下注射:100mg

6歳未満:確立されていない

6~12歳:用量調節のため専門医に紹介

12歳以上:成人と同様

100mgを皮下注射で4週毎

オマリズマブ

皮下注射:150mg/1.2mL

12歳未満:75~375mgの皮下注射を2~4週毎,体重および治療前の血清IgE値に基づき調節

12歳以上:成人と同様

150~375mgの皮下注射を2~4週毎,体重および治療前の血清IgE値に基づき調節

注射部位毎の最大投与量は150mgである。

レスリズマブ(reslizumab)

静脈内投与:100mg/10mL

確立されていない

3mg/kgを静注で4週毎

* 特に明記しない限り全年齢を表す。

DPI = ドライパウダー吸入器;HFA = ハイドロフルオロアルカン; MDI = 定量噴霧式吸入器;SMI = ソフトミスト吸入器;PEF = 最大呼気流量。

Adapted from the National Heart, Lung, and Blood Institute: Expert Panel Report 3, Guidelines for the diagnosis and management of asthma—full report 2007.August 28, 2007. Available at www.nhlbi.nih.gov/guidelines/asthma/asthgdln.pdf.

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