γ-ヒドロキシ酪酸は,特にアルコールと併用した際に,アルコール中毒またはケタミン中毒に似た中毒を引き起こし,呼吸抑制,痙攣発作,およびまれに死に至ることがある。
γ-ヒドロキシ酪酸(GHB)は,神経伝達物質のγ-アミノ酪酸(GABA)に類似しているが,血液脳関門を通過することができ,経口による摂取が可能である。作用面ではケタミンと類似するが,持続時間はより長く,危険性ははるかに高い。
GHBは成長ホルモンを放出するため,ボディビルダーはGHBやそのアナログを骨形成促進薬として乱用することがある。GHBとそのアナログは,その鎮静作用と健忘作用により性的暴行を容易にする目的で使用されている。
GHBはときにナルコレプシーの治療に使用される。
GHB使用の症状
GHBはリラックスした静穏な感覚をもたらす。疲労と脱抑制をもたらすこともある。
高用量では,めまい,協調運動障害,悪心,および嘔吐を引き起こすことがある。昏睡と呼吸抑制が起こることもある。GHBを他の鎮静物質,特にアルコールと併用するのは極めて危険であり,意識レベルの低下および無呼吸発作を引き起こす。死亡例の大半は,GHBをアルコールと併用した場合に発生している。
頻繁に使用すると耐性および依存が生じることがある。
頻回の大量使用後に数時間GHBを使用しないと,離脱症状が生じる。それらの症状はアルコールからの離脱やベンゾジアゼピン系薬剤からの離脱のそれと同様であり,生命を脅かす可能性がある。
GHB使用の診断
通常は臨床診断
ときに尿検査
GHB中毒は臨床的な徴候・症状によって診断を下す。GHBはルーチンの尿中薬物スクリーニングでは検出されない。GHBは使用後,ガスクロマトグラフィー/質量分析法により最長12時間まで尿中で検出できる。
GHB使用の治療
症状の管理
ときに機械的人工換気
GHB中毒の治療は症状に対して行う。呼吸が障害されている場合または気道を確保するために,機械的人工換気が必要となりうる。大半の症例は急速に回復するが,影響が6~8時間消退しないこともある。
GHBからの離脱の治療も,アルコールや鎮静薬からの離脱に対する治療と同様である。ベンゾジアゼピン系薬剤の投与と支持療法が治療の中核的要素である。