ビタミン点滴療法(マイヤーズカクテル)

執筆者:Laura Shane-McWhorter, PharmD, University of Utah College of Pharmacy
レビュー/改訂 2023年 1月
意見 同じトピックページ はこちら

ビタミン点滴療法(マイヤーズカクテル点滴,水分補給療法としても知られる)は,ビタミンの血中濃度の急速な上昇を促進する。

マイヤーズカクテルは,補完・代替医療の提供者の間で広く使用されているビタミン点滴療法の処方である(1)。マイヤーズカクテルの処方は,高用量のビタミンB群,ビタミンC,ミネラル(マグネシウムおよびカルシウム),ヒドロキソコバラミン,ピリドキシン,およびデクスパンテノール(dexpanthenol)を滅菌水と混合したものである。チアミン,葉酸,マグネシウム,および総合ビタミンを含有する別の総合ビタミン点滴療法は「バナナバッグ」とも呼ばれている。これは,慢性的に大量のアルコールを摂取している患者など,低栄養が疑われる患者の治療にルーチンの臨床診療で使用されている。

栄養補助食品の概要も参照のこと。)

効能

ビタミン点滴療法は,十分な食物を摂取できない,または疾患のために栄養素の吸収が妨げられているなどの理由でビタミンやミネラルを十分に摂取できない人に用いるのが最善であると考えられている(2)。

ビタミン点滴療法を支持する人たちの中には,ビタミン(またはミネラル)欠乏症のない人でも健康を増進できると主張する人もいる。マイヤーズカクテルやその他の高用量ビタミン静注の製剤を提供している診療所や企業は,それらの点滴には以下の効果があると主張している:

  • 激しい運動または過度の飲酒後の脱水を治療する

  • 免疫系を高める

  • 活力を増進し,疲労を軽減する

  • ストレス,不安,および抑うつを軽減する

  • 体内の毒性物質を除去する

  • 皮膚を健康にする

  • 喘息,アレルギー,慢性副鼻腔炎,高血圧,線維筋痛症,糖尿病,心疾患,急性の筋攣縮,およびパーキンソン病を治療する

  • 片頭痛および緊張型頭痛を治療する

エビデンス

ビタミン点滴療法が上記の有益な効果のいずれかを有することや,何らかの疾患の治療に効果的であることを示す科学的根拠は不十分である(3, 4)。

2018年,米国連邦取引委員会(Federal Trade Commission:FTC)は,マイヤーズカクテルや他のビタミンおよびミネラルの静注輸液をマーケティング,販売している企業に対し,それらの輸液でがん,多発性硬化症,糖尿病,線維筋痛症,心不全などの疾患を治療できるとの「根拠のない虚偽の効能」を主張したとして,告発した。FTCは,これらの治療および効果に関する主張は虚偽である,または十分な信頼できる科学的根拠によって裏付けられないとした(FTC Cases and Proceedingsを参照)。

有害作用

マグネシウムまたはカリウムの血中濃度に異常がある人では,マグネシウムまたは(頻度は低いが)カリウムを含有する輸液により不整脈や筋力低下が生じる可能性がある。

点滴の速度が速すぎる場合,血圧が低下し(おそらくマグネシウムのため),ふらつきや失神につながる可能性がある。しかし,血圧が徐々に上昇する人もいる。

その他の有害作用としては,抑うつ,不眠症,および胃の不調が報告されている。

妊婦および授乳婦におけるビタミン点滴療法の安全性は研究されていない。

薬物相互作用

どの薬剤がビタミン点滴療法と相互作用するかは,注入されるビタミン,ミネラル,その用量に依存する。以下に相互作用の例をいくつか示す:

  • ビタミンB6の静注は,造血を刺激するために服用する薬剤(例,エリスロポエチン,エポエチン アルファ,およびダルベポエチン アルファ)に対する反応を低下させる可能性がある。

  • マグネシウムは降圧薬と相互作用を起こし,低血圧を引き起こすことがある。

  • セフトリアキソンは血液中に注入されたカルシウムと結合する可能性があり,この組合せにより腎臓,肺,胆嚢が損傷する可能性がある。

参考文献

  1. 1.Gaby AR: Intravenous nutrient therapy: the "Myers' cocktail". Altern Med Rev 7(5):389-403, 2002.

  2. 2.Wells C, Butcher R, McCormack SIntravenous multivitamin therapy use in hospital or outpatient settings: a review of clinical effectiveness and guidelines.Ottawa (ON): Canadian Agency for Drugs and Technologies in Health; October 15, 2020.

  3. 3.Ali A, Njike VY, Northrup V, et al: Intravenous micronutrient therapy (Myers' Cocktail) for fibromyalgia: a placebo-controlled pilot study. J Altern Complement Med 15(3):247-257, 2009.doi:10.1089/acm.2008.0410

  4. 4.Flannery AH, Adkins DA, Cook AM: Unpeeling the evidence for the banana bag: evidence-based recommendations for the management of alcohol-associated vitamin and electrolyte deficiencies in the ICU. Crit Care Med 44(8):1545-1552, 2016.doi:10.1097/CCM.0000000000001659

quizzes_lightbulb_red
Test your KnowledgeTake a Quiz!
医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS