バコパ（Bacopa monnieri）は，世界の多くの地域の湿地によく生育する多年草ハーブである。この植物はブラーミ，インドペニーワート，オトメアゼナ，ハーブオブグレイスとしても知られている。
（栄養補助食品の概要も参照のこと。）
効能
バコパは記憶力，学習保持能力，集中力，注意力，ならびに全般的な認知機能および遂行を改善または維持すると言われている。一部の人は，アルツハイマー病および注意欠如多動症（ADHD）の症状を緩和または遅らせるためにバコパを摂取する。
エビデンス
バコパが記憶力または認知機能の改善や何らかの疾患の治療に効果的であることを実証した質の高い研究はない。しかしながら，いくつかの小規模研究で注目に値する結果が得られている。
インドの医学生60人を対象としたランダム化研究では，バコパの規格化されたエキス150mgまたは対応するプラセボを1日2回，6週間投与したところ，記憶力および認知機能の検査で有意な改善が認められた(1)。
認知症の臨床徴候がみられない65歳以上（平均年齢73.5歳）の参加者54人を対象としたランダム化研究では，バコパ300mg/日またはプラセボが12週間投与された。バコパを投与された患者では，プラセボを投与された患者と比較して，記憶検査におけるベースラインからの改善が有意に大きかった(2)。
オーストラリアの55歳以上の健康成人98人を対象としたランダム化研究では，バコパ300mg/日またはプラセボが12週間投与された。バコパはプラセボと比較して言語学習，記憶獲得，および遅延想起を有意に改善した(3)。
有害作用
バコパの頻度の高い有害作用としては，消化管障害，悪心，口腔乾燥などがある。
薬物相互作用
バコパはアセチルコリンを増加させることがあるため，抗コリン薬の作用を減弱させたり，アセチルコリンを増加させるコリン作動薬（例，緑内障またはアルツハイマー病の治療薬）の有害作用を増強させたりする可能性がある。
バコパは甲状腺ホルモン値を上昇させることがあるため，甲状腺ホルモン製剤を服用している人はバコパを摂取すべきではない。
バコパは，チトクロムP450によって代謝される薬剤（例，ワルファリン，一部のカルシウム拮抗薬，抗てんかん薬）の血中濃度を変化させることがある。
（栄養補助食品と薬物の間で起こりうる相互作用の表も参照のこと。）
参考文献
1.Kumar N, Abichandani LG, Thawani V, Gharpure KJ, Naidu MU, Venkat Ramana G: Efficacy of standardized extract of Bacopa monnieri (Bacognize®) on cognitive functions of medical students: a six-week, randomized placebo-controlled trial. Evid Based Complement Alternat Med 4103423, 2016.doi:10.1155/2016/4103423
2.Calabrese C, Gregory WL, Leo M, Kraemer D, Bone K, Oken B: Effects of a standardized Bacopa monnieri extract on cognitive performance, anxiety, and depression in the elderly: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial. J Altern Complement Med 14(6):707-713, 2008.doi:10.1089/acm.2008.0018
3.Morgan A, Stevens J: Does Bacopa monnieri improve memory performance in older persons?Results of a randomized, placebo-controlled, double-blind trial. J Altern Complement Med 16(7):753-759, 2010.doi:10.1089/acm.2009.0342
